頭痛天気予報と恋模様

知美

頭痛天気予報と恋模様


今日は晴れの予報だった。

でも、窓の外は雨が降っている。

降っているという次元ではない。

ゴーゴーと大きな音をたてているとてつもなく大きな嵐だった。


私は目をギュっとつぶる。

『まただ。』

私は雨が降ると必ずと言ってもいいほど、頭痛に襲われる。

頭を鈍器で叩かれているようなガンガンとした頭痛だ。

『もう少しで、もう少しで治る。』

そう言い聞かせて、私はベッドに横になる。


しかし、頭痛はもっと酷くなる。

『ダメか…。』

寝てしまえば頭痛なんて気にならなくなる。

でも、それまでが大変である。

とりあえず、いつも薬局で買っている薬を飲んだ。

そして、ただただ私は頭痛に耐えていた。


そのうち、ふと睡魔がやっとやってきて私は寝ることができた。

起きる頃には嵐のような天気から日差しの強い晴れ間が窓の外に見えていた。


『もう雨が降りませんように。』

そう願うしかなかった。



次の日、雲ひとつない晴れだった。

しかし、頭痛がまたある。

『困ったな。

これから仕事なのに…。』

今日は11時から遠方で会議が入っていた。

『この頭痛で会議なんて出席できるのだろうか…。』

そう思いつつ、私は会議に行く支度をしていた。


玄関を締めようとしたとき、傘を持っていないことに気づいた。

急いで傘を取りに行く。

頭痛がある日は必ず雨が降る。

私には頭痛天気予報が備わっている。

『だからと言って、頭痛がいいものだとは思えないが…。』

傘を持ち、私は玄関を締めて駅まで急いだ。


電車に乗り、新幹線が通っている駅まで行き、そこから1時間かけて会議のある街に行く。


早めの電車に乗れたので、新幹線の時間まで余裕があった。

余っていた時間を使って薬局まで行った。


『あ…。

いつもの薬がない…。』

その薬局にはいつも買っている薬が置いてなかった。


『どうしよう。

昨日で薬全部終わってしまったのに…。』

それでも、頭を叩く鈍器は休むことなくガンガンと頭に響いていた。


仕方ないので、会議のある街まで行った先で薬を買うことにした。


新幹線に乗り込み、席に座る。

すると、隣に男性がやってきた。


「お隣失礼しますね。」

礼儀正しく男性は私に一声かけた。

「はい。」

そう答えるのがやっとだった。


新幹線は走り始めた。

すると、天気は一転し雨が降っていた。


『頭痛天気予報は間違えないのね。』

私は苦笑いをしてしまう。


雨が強くなり始めたと同じくして頭痛が酷くなってきた。

『薬ないからキツイな…。』

私は頭を押さえた。


すると、隣の男性が私の顔を覗くように

「大丈夫ですか?」

と、声をかけてきた。


私は慌てて笑顔を作り

「いつものことなので、大丈夫ですよ。」

と言うと


「いつもって…。

顔真っ青ですよ。

頭痛ですか?

常備薬とかありますか?」

不安そうに私に声をかける男性。


「心配をおかけしてすみません。

薬を切らしてしまいまして…。

少し経てばよくなりますので、大丈夫ですよ。」

もう笑顔も作れないほど痛みが私の頭に響く。


「ちょっと待っててくださいね。」

と言い男性の鞄をゴソゴソ探し出しました。

「あ…。

あった。

この薬でよければ使ってください。」

と、私に箱ごと薬を渡してくれた。


「え…。でも…。」

と、困りつつ私は薬を見た。

その薬はいつも私が使っていた薬と一緒であった。


頭痛がまた増す。

もう遠慮などできなかった。

渡してくれた薬は新品で、封も空いていなかった。

薬の箱を開封し、薬を1錠口に入れた。

水を持っていていなかったので、持っていたお茶で流し込む。


「ふ…。」

と、私は一息ついた。


「大丈夫ですか?」

と、また男性は私の顔を覗き込む。

「まだ少し痛いですが、少し安心しました。」

薬のない不安でいっぱいだった私は、薬をもらったことにより、安心できた。

薬を飲んだことで頭痛が和らいだ気がした。


「ありがとうございました。」

私はお礼を男性に言いながら、薬の箱を返した。

「いえいえ。

安心できたならよかったです。」

と薬の箱を受け取りつつ言ってくれた。

続けて

「実は僕も頭痛持ちでして…。

これ、僕の常備薬なんです。

あなたも薬は常備しておいたほうがいいですよ。」

と、またにこっと笑いながら私に話しかけてくれた。


「そうですね。

今度から気をつけるようにしますね。

ありがとうございます。

それより、お薬のお礼させていただけませんか?」

と、私が言うと、びっくりしたように男性は私を見る。

「いえいえ。そんなお礼だなんて…。」

と、男性は手をブンブン振りながら言う。


「こんなに親切にしてくださったのに、お礼もしないなんてバチが当たります。」

私は真面目に言ったのだが、男性はクスッと笑い

「バチが当たるって言った人初めて見ましたよ。」

と、笑いつつ、意地悪そうに言った。


「え?

そうですか?」

と、私は普通に言っているつもりだったのでびっくりした。


男性はまた鞄をゴソゴソ探し出し、スマホを見つけると、

「じゃあ、連絡先教えてもらえませんか?」

と、スマホの先を私に向ける。

「わかりました。」

と、私もスマホを取り出そうとすると

「あの…。

本当にいいんですか?

自分から言い出してなんですが、ナンパのようなものとは思わないですか?」

私はスマホを見つけると

「こんなに親切にしてくださった方を疑ったりしません。」

と、笑顔でいう。


「それに、お礼をしたいと言ったのはこっちなのですから、私からナンパしてるんですよ。」

これも私にとっては真面目に言っているつもりだった。

それなのに男性はまたクスクスと笑いだし

「面白い人ですね。

真顔でそんなこと言う人あまりいませんよ。」

よく笑う人だ。

そして、なぜかその笑顔から目が離せなくなっていた。

「LINEでいいですか?」

「はい。」

と、スマホを振る。


「『並木由美』さんですね。

よろしくお願いします。」

と、男性は軽く頭を下げた。


「はい!

よろしくお願いします。

え…と。」

男性の名前には「go」と書いてあった。


「え…と。

外国の方?」

それを聞くと、男性はまたクスクス笑い

「そのリアクションも初めてです。」

『また笑った…。』

「じゃあ名前は…。」

「名前は…。」

と、男性は言いかけ

「やっぱり、教えません。」

と、今度はその人は意地悪そうに笑う。

「え…。」

「次会う時、教えますから、それまで意味を考えておいてください。

とても簡単なので。」

と言うと、男性は立ち上がる。


もう駅に着いたようだった。


「頭痛。

お大事に!

LINE待ってますから。」

と男性は言って、去ってしまった。


『不思議な人だな。

頭痛…。

治ってる。』


私も立ち上がり、新幹線を降りる。

外は先程と打って変わって晴れていた。

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頭痛天気予報と恋模様 知美 @mi369

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