第10話 これから


 お互いの能力を確認したところでシズクは俺に聞いてきた。


「ねえ、体調はどう?」


 そういえば、早退してまでダンジョンに来た理由はそれだったな。


「悪くないな……むしろ、普段より調子がいいくらいだ。シズクは?」


「私も。魔力とかが関係してるのかしらね」

 

 気にはなるが、調べるにしてもツテがないしな。ダンジョン関連の情報は、完全にシズクの父親頼みな状況だ。


「それについては後々だな。とりあえずダンジョンの中に、あと一時間くらいいれば良いのか? そしたら、二日は問題なく過ごせるんだっけか。その間、ゆっくり探索と行こうじゃないか」

「そうね。エスコートは任せるわ」

「オーケー、先導はするから道案内はよろしくな」



 そんな感じで、緩くダンジョンを進んで行ったのだが……


「ねえ、ここ何層だったかしら?」

「確か五層だな。で目の前には下に続く通路があるわけだ」

「ここから先は私も知らないわよ?」


 低階層には敵になるような相手はいなかった。

 基本的に俺の身体能力任せの一撃で終わる敵ばかり。稀に二、三体まとまって現れるモンスターもいたが、それはシズクのブレス一息で行動不能にすれば、あとはモグラ叩きの如く順番に潰していくだけだ。


「今日はここまでかしら?」


 スマホを見れば、すでに十六時を過ぎている。


「そうだな。時間的にもここまでにしておくか。この先はまだ行ったことはないんだよな?」

「私がパパに連れて行ってもらったのは五層までね。先に進むには、実力は問題ないけれど、時間が足りないわね」


 マッピングしなが先に進むとなると、日が暮れてしまう。

 きりもいいし、ここがやめどきだろう。


「じゃ、帰るか」

「そうね、そろそろ晩ご飯の時間だし」


 帰る道すがら、明日からの予定について話し合う。


「これからは正式に、俺たち二人でパーティーを組むってことでいいのか?」

「もちろんよ、こちらから頼んだことだもの。イツキが嫌じゃないのなら、そうなるわよ」


 今日、二人で探索してみて何も問題はなかった。むしろ、これまで組んだ誰よりも快適に探索できた気がする。


「んじゃ、明日からよろしくな」

「こちらこそ。それで明日は探索、どうするの?」


 この体調のこともある。前回は少なくとも一日半は体調に変化はなかった。それからドンドン不調になったわけだから……


「なるべく毎日、ダンジョンに入れるようにしたいな。シズクが無理な日は俺の家の裏にできたダンジョンに入ればいいわけだけど。できるならなるべく深いところに進みたい。強くなれば不調になるまでのインターバルも伸びるんだよな?」


 昨日、シズクの話を聞いたあと俺なりに色々調べてみた。その結果、とにかく体内に止めておける魔力の量が増えるほど、ダンジョン外での活動時間も増えるということがわかった。


 ま、難しいことじゃない。探索者としてどんどん強くなればいいだけだ。


「強くなることには賛成。このままじゃ落ち着いて旅行もできないし。嫌よ、旅行先でも毎日ダンジョンに入らなきゃいけないなんて」

「ごもっとも。そりゃ最悪だな、考えるだけで嫌になる」


 こうして、先のことをだらだらと話していたら、気づけば出口のすぐそばまで来ていた。


 ダンジョンを出れば、すでに日は傾いていて辺りは薄暗い。

 神社には人っ子一人おらず、境内は静けさに包まれていた。


「じゃあ、また明日」

「おーう、また明日な」


 さて、明日も探索だ。

 今日は学校を早退したので、ダンジョンに時間を割けたが、明日も早退するわけにはいかない。


 ボスの部屋まで行ければ階層転移でショートカットできるかもしれないし、何か早く先に進む手段を考えておかないとな。



 

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