第52話
あさぎがかずさに近づいて話しかける。
「待って、一度だけ、チャンスが欲しい」
かずさは動けなくなった彼の胸に抱きついた。
月の魔法を発動させる。青白い燐光がかずさから立ちのぼる。
やはり、魔法を解除させることはできなかった。
「ごめんなさい」
顔を胸に押しつけていたため、声がくぐもる。
「ごめん……なさい」
「う……があ……」
かずさは顔を上げる。
「聞こえるの? 三日月」
「死なせ……て、くれ苦しいん、だ、生き、て……い、る、のが、苦し……いん、だ、」
かずさの顔は哀で溢れかえった。
腕を解いて、一歩、二歩と後退して、後ろを振り返る。
「おねえちゃん、お願い」
やりきれない氣持ちが嗚咽となって、一緒に絞り出た言葉だった。
あさぎは歩み寄り、彼の頭に手をのせた。さよならとつぶやいた。
「永久(とこしえ)の安らぎを与える」
ぐぐぐ、彼の戒めに繋がれていた腕の力みがだんだんと無くなって、膝がくずれる。
あたたかい水の粒。
顔が心地よい何かに包まれて、好きな女の子の香りを感じながら……
ありが……とう。
「もう一度聞くけど、本当に継承した魔法を封印してもいいのかい?」
「はい、お願いします」
真ん中にダイヤ、そのダイヤを取り囲むように八つの丸があって、その丸の中に呪文、ダイヤの回りを取り囲むように呪文が綴られた魔法陣の中央にあぐらをかいて座っている女の体には魔法陣に綴られた文字と同じような文字がビッシリとあった。信也は女の左肩甲骨のあたりに手をかざしながら呪文を唱えると、青白い光が輝いて体の文字と魔法陣の文字が手をかざしていた場所一点に吸い込まれるように集まった。
肩甲骨のあたりに三日月形の入れ墨が出来上がっていた。
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