第8話

 運命を感じた。

 彼女を見た時から、俺の心は彼女のものになっていた。

白い壁に、海の写真が飾られ、薄茶色のカーテンがかかっている。窓から太陽の暖かい日差しが入ってきて、薄茶色のソファには水色のクッションが置いてあって、その前に小さなテーブル、壁際にテレビと観葉植物があった。服がごちゃっと大量に山になっていた。

 女は狼の後ろ足に包帯を巻いてまじないを唱える。

「そもそもとう、てんじんごんが川の木をもってしみとるぞ」

彼女の手は冷たくて、触れられていると心地よかった。

「ごめんね、私、癒やしの魔法が得意じゃないから治るのに時間かかると思うけど」

「いや、ありがたい」

 女は目をむいた。

「しゃべれるの?!」

 すっと狼は人間の男の姿になった。

「まあな」

「キャアアアアアアア!!!!!!」

 男は裸だった。


男は頬に赤い手形をつけていた。

 女物だが大きめのTシャツとズボンを借りて着ている。

「あー、びっくりしたあ」

「すまない」

 玄関の扉が開いた。

「ただいまー」

 入ってきたくせ毛の女が男を見る。

「キャアアアアアアア!」


 男の頬の手形は両方に増えていた。

「なぜこうなる……」

「ごめんね、しょうがないじゃない、許して」

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