第4話

 息が切れるまで。

 男は走り疲れて、どっと倒れた。

 後ろを振り向くと、斧を持った黒い影が立っていた。




男は道の脇にとめてある原付バイクの横に体育座りをしていた。

 顔は死んだように蒼白だった。




「あの人懲りたかな」

「さあ、またやったら、また怖い目にあわせてあげるだけよ」

「私たち、悪者みたいだね」

 一人が楽しそうに笑顔になる。

「必要悪なの」

「なんで悪いことするんだろうね」

「心が弱いからするんだよ」

「強いからじゃなくて?」

箒に乗った二人の魔法使いの影が月の中でゆっくり動いていた。




 ソファで横になって漫画を読んでいるとおねえちゃんが寝室からでてきた。

「夢を見たわ」

「いつもでしょ」

「うるさい、聞きなさいよ」

「はいはい」

「かずさの隣に大きな犬がいたの」

「それで?」

「それだけ」

「なにそれ。お腹空いた、ご飯食べたい」

 私はまた漫画を読み始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る