最強の家庭菜園ダンジョン~最強のダンジョンとは準備期間のダンジョンだ。入口がなければ攻略出来ない。俺のダンジョンは永遠に準備が終わらない。畑に終りなんてないからな~
第13話 ダンジョンと、戦闘と、焼きナス
第13話 ダンジョンと、戦闘と、焼きナス
ナスを供えてみたところ、変な所に出た。
室内だけど室内じゃない。
壁と天井と扉があるから、室内なんだけど。
太陽も空も緑もある。
なんと言ったらいいのか。
水槽の中の生き物が、周りを見たらこんな感じかも知れない。
周りには、動物も人も居ない。
ここはハズレか。
まあいいや。
絵だと思えば良い。
家庭菜園の草取りでもすっか。
1時間ほど草取りをしていた時。
「あー、人間みたいなボスモンスターが居る! おまけにダンジョンの中に畑を作ってる!」
「気をつけろ。見た事のないモンスターは初見殺しが多い」
「こっちに襲い掛かって来ませんね」
「毒とか警戒した方が良いかもよ」
4人の男女が勝手な事を言っている。
敵対から始まるってのは慣れたよ。
3回目だもんな。
ええと、短剣を装備した女と、盾を装備した男と、剣を装備した男と、杖を持った女か。
「ええと、美味しい野菜でも
「ひぃ、喋ったぁ!」
「知性を持った奴は手強い」
「ダンジョンで畑をやっている人間なのでは」
「食べ物に手を付けたら駄目よ。悪魔が化けているのかも知れない」
「納得が出来ないよな。気持ちはちょっと分かるよ。じゃあ、好きに攻撃していいから」
「言われなくて。何時ものパターンでいくわよ」
「おう」
「そうですね」
「イレギュラーな時は、臨機応変よ」
盾を持った男が先頭に出た。
中衛は短剣の女と、剣士の男。
後衛は杖を持った女だ。
「うおおお」
盾を持った男が盾を前面に突き出して突進してきた。
そして、畑の境界で弾き飛ばされた。
「【火魔法、矢】」
杖を持った女が魔法を唱えると、炎の矢が飛び、境界に当たって消えた。
「たぶん結界。壊れるまで全員攻撃するわよ」
「了解です」
「ええ」
「おう」
4人は色々な手で攻撃を始めた。
だが、攻撃は一向に通らない。
見ているのも退屈だな。
俺は草取りに戻った。
30分ほど経ち、気づいたら、4人は攻撃を止めていた。
「もう、馬鹿にして。腹が立つ」
「はぁはぁ、俺はしばらく動けない。限界だ」
「僕も降参です」
「私も魔力がありません」
「話をする気になったかな?」
「これってもしかしてトラップの一種。体力とかを消耗させる為の罠?」
そう短剣使いの女が言った。
「違うよ。俺の畑は準備中のダンジョン」
「えー、ここって準備中なの。ボスを殺さないと出られない。どうすればいいのよ」
「状況から察するに、俺のダンジョンがどこかのダンジョンに、重なったみたいだな。俺のダンジョンは何時でも退去できる」
「ちょっと、それは不味いです。今、ボスと対峙したら全滅します」
そう剣士の男が言う。
「俺の野菜はポーション効果があるらしいけど、食べてみる?」
「仕方ないわね。罠を警戒して打てる限りの手を打ちましょう」
俺は家に戻るとフライパンに油を引き、厚く切ったナスを焼き始めた。
程よく焼けた所で皿に盛り、擦ったショウガを載せる。
そして醤油を垂らした。
焼けたナスと油と醤油の匂いが入り混じって、食欲をそそる匂いが立ち込めた。
家庭菜園に戻り料理の載った皿を突き出した。
「はい、お待ち!」
「美味しそう」
「【鑑定魔法、毒】。毒は入ってないわ」
「俺は食うぞ。匂いだけでよだれが垂れて来た」
「敵の攻撃を受け止めるのはタンクの仕事。止めませんので食って下さい」
「おう」
盾持ちがナスにフォークを突き刺し一気に食った。
「ううううううう」
「うだけじゃ、分からない」
短剣の女が盾持ちの頭を叩く。
「美味い!」
「次は私ね。斥候だから罠を見破らないと」
短剣使いがナスを食べた。
「美味しい。野菜が美味しいなんて感じたのは産まれて初めて。なんでこんなに美味しいの。みなぎってきたわ」
それは品種改良のせいだな。
異世界は品種改良が進んでいないのだろう。
「【鑑定魔法、人物】。体力と魔力が回復しているわ。へたなポーションより、効き目があるみたい」
杖を持った女が魔法を使ってそう言った。
剣士が何も言わずにナスを食う。
「ずるい。私も」
最後に杖を持った女が食った。
みんな良い笑顔だ。
じゃ、俺も。
箸でナスを摘まんで豪快に頬張った。
ナスのほのかな甘さと、醤油と油がいい。
噛むと油と醤油とナスが一体になって攻めて来る。
そして擦られたショウガがアクセントを加えている。
ビールが欲しくなる1品だ。
ああ、夏だなと思う味だ。
折しも今日は梅雨明け宣言が出た。
夏野菜を思う存分食って、ビールを飲むぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます