♯4 一緒にお風呂

[SE] ガチャ(部屋のカギを開く音)




「ただいまー」

「って自分のうちじゃないか!」


「だよね! とりあえず戻ってきたら、旅先の部屋でもただいましなきゃ落ち着かないよね!」


「お散歩気持ちよかったぁ、あんな風に落ち着いてお散歩することってないから楽しかった!」


「えー、さっきは周りのことあんなに気にしてたくせにー」

「ご近所なんて一緒にお散歩して大丈夫? 誰かに見られちゃうかもしれないよ?」


「ふふっ、本当に調子がいいんだからっ。いいよ、戻っても一緒にお散歩しようね!」



「これからどうしよっか?」

「まだ寝るにはちょっと早いよね?」


「あっ、そうだね! もう一回温泉行こうか! 一回きりじゃもったいない気がするもん!」


「えっ? そういうことじゃないってどういうこと?」



「へへへへへへ部屋にあるお風呂で一緒に入りたいってっ!?」

「た、確かに部屋のお風呂にも入りたいと言ったけど……!」

「け、けけけけどそれはちょっと恥ずかしすぎるというかっ!」


「な、なんでそういう顔するの! もうっ! わ、わたしあなたのその顔に弱いんだからやめてよぉ……」


「じゃ、じゃあせめて電気は消してよ……」


「やだやだ! そこは絶対に譲れない! お願いだから電気だけは消させて!」



「……う、うん。じゃ、じゃああとから私が行くからあなたが先に入っててよ……」




[SE] ジャーーー(水の流れる音)

   ちゃぽんっ……(お風呂に入る音)




「わ、私の声聞こえる……? お、お風呂加減どう? 」


「ちょうどいいんだ……、そうなんだ……」


「げ、元気なくなってはないよ!」

「違うの! 今心臓がバクバクしててテンパっちゃってて……」

「あなたのこと嫌いになったわけじゃないからねっ! ぜ、絶対に勘違いしないでね!」


「う、うん分かった……」

「じゃあ脱衣所に入るね……」




[SE] ガララララ(扉を開く音)




「うぅううう、ガラス越しにあなたの姿が見えるぅ……」


「さ、さっきいっぱいご飯食べちゃったからお腹ぽっこりしてても幻滅しないでね……」




[SE] しゅる…しゅる…(衣擦れの音)




「み、見えないガラスになってるけど絶対にこっち見ないでねっ!」


「こ、こら! 今こっち見た気がした!」


「お、お願いだから! お願いだからこっち見ないで!」




[SE] しゅる…しゅる…(衣擦れの音)

   さわっ(衣擦れの音)




「うぅ……本当に脱いじゃった……」

「じゃ、じゃあそっちに行くね……」




[SE] ガララララ(扉を開く音)




「だ、ダメだって! まだこっち振り向かないで! 今はちょっと目をつむってて!」

「……このままあなたの隣に入りにいくから」




[SE] ぺたっぺたっ(お風呂場を歩く音)




「お、お邪魔します……」

   



[SE] ちゃぽんっ(お風呂に入る音)

   ジャーー(浴槽から水が流れていく音)




「め、目開けていいよ……」



「わっわっ、思ったよりも月明りで見えちゃってる気がする……」


「な、なんかちょっとだけがっかりしてない?」


「だ、だってタオル取っちゃうと本当に全部なくなっちゃうんだもん!」

「お、お願いだからタオルだけは許してっ!」



「いいからっ! ほらっ! 折角、ここから見える眺めも綺麗なんだから私ばっかり見てないでそっちも見てっ!」


「う、うん。夜の風景も綺麗だよね」


「……」


「……」


「……ちょ、ちょっと! なにかお話してよ!」


「は、話しするとそっち見ちゃうって……」


「わ、私だってあなたのほう恥ずかしくて見れないんだからおあいこでしょ!」


「も、もうっ! お風呂でかいた汗だか恥ずかしくてかいた汗だか何が何だか分からなくなっちゃってるよぉ……」



「えっ、そうなの? そんなに私とお風呂に入りたかったの?」


「じゃ、じゃあしょうがないなぁ……! 今日だけ特別なんだから」


「ダメだって、今日は特別なんだから……」

「あんまりこういうことにあなたが慣れちゃって、私に飽きられちゃうのも嫌だし……」


「……う、うん。そうだよね、そんなことないってちゃんと分かってるよ」


「……」


「……」



「……ねぇ、もうちょっとそっちに近づいてもいい?」




[SE] ジャーー(浴槽から水が流れていく音)

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