第12話これから·····

あかの惨劇から、10年たった。王女は元王太子と結婚し、子供を2人産んだ。

どちらも元王太子の子ではないのは一目見てわかるが、誰も何も言わない。

血が濃くなりすぎて王家の子が育たなくなっていたし、王女の祖父が王妹なので血筋も問題ない。

元王太子も子供を可愛がっていると聞く。




「お久しぶりにございます。」


10年前と同じ部屋に通された。王女は10年前より威厳が増したようだ。


「貴方の働きで謀反を事前に潰せてきたし、もう王家も揺るぐ事はない。今までご苦労だったわね。」


やはりその件で呼ばれたのか。最後にイリーニアを抱きしめたかった。


まあ、無理だろうけど。


「別に大した苦労はしてませんよ」


王家に対しては・・・・・・・

どちらかと言うとイリーニアの暴走を止める方が大変だった。

したい事は危険を考えずに行動する彼女を制御しなければならなかった。

初めて会った時に大人しかったのは猫を10匹は背負ってたんだろう。彼女の暴走の被害を最小限にする為、ここ数年は調査とか影の育成とかに力をいれた。

まだ未熟だが、何とかなるだろう。

どうせ私は死ぬし。


「貴方、ここ数年で草臥れたというか、やさぐれたというか、投げやりになったような·····」


言いたいことはわかる。

イリーニアと行動すればもれなく全部に当てはまるようになる。

あれは淑女の仮面を被った野生児だ。

だから未だ結婚出来ないんだ!


「えーと、お疲れ様ね。」


「それも今日で終わりですよ。」


「あら、わかってて来たのね。」


「そうですね。」


「·····本当に変わったわね」


「殿下もイリーニア様と1年でも一緒に入ればこう・・なります。」


「·····コホン。では本題に入りましょう。」


あ、逃げた。まあ、私でも逃げる。


「死ぬ気で来た所悪いけど、残念なお知らせがあるの。」


ん?なんか嫌な予感がしてきた。


「貴方、影の育成してて、なかなか優秀なんですって?王家の影の育成もお願いね。」


「·····」


「辛いだろうけど、生きなさい。でないとイリーニアが貴方の罪を背負ってしまうわ。」


何も言えなかった。イリーニアと過ごす事に幸せと罪悪感を持っていた。

もっと一緒にいたいと思ってしまう。反面、家族や弟達の元に逝きたいという気持ちも大きかった。


だから王女から死を賜るのを待っていた。


「今まで言えなかったんだけど、謀反に加わった成人してない子は生きてるわよ」


「えっ」


「いくら貴族でも大人の都合に付き合わされて死ぬなんて哀れすぎるでしょ。合わせる事は出来ないけど、平民として逃がしたわ。

貴方の弟は成人してる子もいたけど、特別にね。」


「それでは、謀反の種を残す事に·····」


「まあね。だからこそ影を育てないとならないのよ。」


「後悔しているのですか?」


「冤罪を証明しないとわたくしと公爵家が謀反を企てることになった。示しもつけなければならなかった。だから後悔はしていないわ。

ただ子供を、親の咎に巻き込むなんて出来ない。」


「·····甘いですね。

でもありがとうございます。

我が主君に忠誠を。」


女王(王妃だが)になる方にしては甘すぎる判断に、跪きローブに口付けて深く感謝した。


罪は変わらずあるけれど弟達が生きている。それだけで一条の光がさした。。



「貴方もいろーんな・・・・・意味で辛いでしょうけど、少しは前向きに生きなさい。」


殿下。いろーんなを強調しないで下さい!

私のイリーニアへの気持ち知ってて、言うの止めてもらえませんか!!

良い話が台無しです!!


はぁ·····執事長に遺書渡してきたんだよな。あれ回収して、明日の<川で滝壺飛び込み>を、どうやって止めるか私が考えないとダメなのか。

本人は水流調査だって言ってたけど·····滝壺に飛び込んでわかるか!



明日を考える事に罪悪感を抱かなくなったのに気付かず殿下の前を辞した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る