第3話本音

侯爵家のサロンに侯爵夫妻と息子(旦那様)、私の両親と私で対峙している。王宮から帰ったばかりだけど、休憩無しで話し合い突入!ちょっと休憩しませんって言いたいけど言える雰囲気じゃないんだよ!

侯爵は息子を殺さんばかりに睨みつけ、息子は茫然自失状態。夫人は泣き通しで1回失神している。そんな夫人にお母様は度数の高い酒を飲ませて起こした。噎せる侯爵夫人を見るお母様の目はツンドラだったよ。


そしてこの場の主導権をお母様が握った。

「自分は不貞をしておきながら、婚約者を無実の罪で貶めておいて、貰ってやるから感謝しろですって?ふふっ、さすがは切れ者と言われる宰相閣下のご子息ですわ。素晴らしい教育ですわね。我が伯爵家ではとてもとても。」

お母様の嫌味が炸裂です。侯爵夫人はまたむせび泣きだした。

普段ならプライドの塊の宰相が、格下の伯爵家の言いたい放題を許す訳ないけど、あの映像の後じゃあね。

「本当に申し訳ない!」

陛下にさえ謝った事が無いと言われる宰相が、ガバッと膝に頭が付く位下げて謝った。

「どんな要求でも飲む。イリーニアには「呼び捨ては止めてくださいまし」·····イリーニア嬢には必ず償いをする。勿論伯爵家にも。」

お母様、私一応ここの嫁ですよ。呼び捨て位しますよ。とは今のお母様には恐ろしくて言えない。お口チャック!が最善の選択。

「勿論、そちら有責の離縁で今回の詳細を王家を通して公示して頂きます。説得は閣下に任せますわ。お得意でしょ。」

宰相閣下、顔面蒼白でもう言葉が出ないよね。夫人は座りながらまた気絶。お母様の悪魔の微笑みを見て正気でいられるのは多分公爵父娘位じゃない?娘の私でも直視したくない!!もう侯爵家の威信が地に落ちるなんてもんじゃない。二度と社交界には出れないし宰相も自職するだろうな。なんせ私を婚約者に戻す時、侯爵夫妻が家に来て、傷物の娘を引き取ってやるんだから有難いと思え!とか言って莫大な持参金をせしめたんだもん。あの時のお母様、怒りで鉄扇を折ったのよ!

お母様は私に向かって

「イリーニア、お母様達は別の部屋で慰謝料や示談金や損害賠償の話をしてきますわ。貴女も最後にその男と話しなさい。」

引導を渡せと顎クイってして出ていった。怖っ!どんだけ毟りとるつもりだろ?!



そして旦那様もといナダル様と2人に(護衛と侍女付き)なったけど、今さら何話せってーの?!

「イリーニア」

「あ、呼び捨て止めて下さい」

「す、すまない。イリーニア嬢。」

「なんですか?」

「何か言いたい事があるなら言って欲しい。君「君も止めてもらえます?」貴女には本当に非道な行いをしてしまった。どんな罵倒でも受け止める。」

って言われてもねぇ。

「別に言いたいことなんてないですよ。もう侯爵家の没落は決定だし、今回の1件が公示されれば、貴方も只ではすまないでしょう。愛する人は処刑されるでしょうしね。」

これから国は荒れるからね。加害者が被者になった。その原因の中心にいたのは王太子と高位貴族の息子。そして、筆頭公爵家とその派閥は彼らを決して許さないだろう。

「そうですねぇ。一つだけ約束して下さい。」

「何でも叶える。」

真面目なんだよねぇ。

「決して自殺しないで下さいね。どんなに辛くても生きて償って下さい。」

驚いた顔で私を見た後、最近見なかった彼の覚悟を決めた顔で頷いた。

「約束する。何があろうと死を選ばず、生きて償う。」

生きることは彼の矜恃を傷付け続けるだろうに、それでも約束をしてくれた。

「私、貴方の真面目で頑固で、だけど何事にも真摯に受け止める所が好きでした。」

子爵令嬢を好きになっても、シナリオの強制力だから嫌われても仕方ないって思ってても、貴方なら`もしかして´って思ってた。

私の言葉に彼は顔をクシャクシャにして泣き出した。

私も泣きそうになって立ち上がる。

「さようなら」

別れの挨拶をして部屋をでる。

「イリーニア、すまない。イリーニア!イリーニア!!」

後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。


さようなら、私の初恋。本当に好きだった。



~完~


☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆

お読み下さりありがとうございます。次回から番外編になります。

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