238話 エドワード王子からの依頼-1

「ど、どうしよう……。とりあえず、着替えなくちゃ……」


 私はパニックになりながらも考える。

 この格好のままでは外に出て助けを求めることはできない。


(気絶しているとはいえ、殿方の前で着替えるなんて緊張するわね……)


 とは思うものの、緊急事態である。

 私は意を決して、元の服装に着替えた。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 私は息を整える。

 着替えている間は恥ずかしくて死にそうだったし、エドワード殿下がいつ目が覚めるかも分からず気が気じゃなかった。


「む……? ここは……?」


 彼はすぐに目を覚ました。

 助けを呼んでくる必要はなかったみたい。


「大丈夫ですか? エドワード殿下」


「イザベラ……。俺は一体……?」


「覚えていませんか?」


「確か、イザベラに用があって部屋を訪ねて……。…………駄目だ、思い出せん。何かとんでもないものを見た気がするのだが……」


 エドワード殿下は頭を悩ませる。

 ボタンがぶつかったショックで記憶が飛んだのだろうか。


「いえ……別に大したことではありませんよ」


 私は笑顔で答える。

 忘れているなら、忘れてもらっていた方がいい。


「それよりも、本題は何だったのですか?」


「む……? ああ、そうだった。すっかり忘れるところだった」


「もう……。早く言ってください」


「実は、来週に迫った新入生の入学式のことで相談したいことがあるのだ」


「入学式ですか?」


 それがあることは、もちろん私も認識している。

 だけど、主役はもちろん新入生だ。

 第三学年に進級するだけの私にはあまり関係がないと思っていた。

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