233話 オスカーの氷魔法-2

(それはそうなるか……)


 今日の体感温度が高い理由の一つは、貴族としてそれなりの厚着をしているからだ。

 貴族たる者、みだりに肌を晒すわけにはいかない。

 だが、それはあくまで女性の場合である。

 男性の場合はそこまで厳しくはない。


「あ、イザベラ様!」


「イザベラ様が来られましたよ!」


「こ、これでもう安心ですわ!!」


 そんなことを考えていると、皆が一斉に話しかけてくる。

 ……え?

 一体、どういう状況??

 私は困惑するが、それぞれの顔を見て事態を把握する。


「まさか……魔道具が故障していたの?」


「ええ……。その通りです。涼むためにここへ来たのに……辛いです」


 ここは王立学園。

 設備の管理体制はしっかりしているが、それでも故障することだってあるだろう。

 本来、空調系の魔道具が活躍を始めるのは夏頃。

 その利用時期の前には、点検だってされているはずだ。

 しかし、今は三月後半。

 昨夏から点検はされていないだろうし、突然の暑い日に故障していたとしても仕方のない面もある。


「これは……困ったことになりましたわね」


 私は思案する。

 どうしたものか。

 このままでは、みんな熱中症になってしまうのではないだろうか。


「でも、どうしようもないわよね……」


 修理業者を呼ぶにしても時間がかかるだろうし、その間は我慢してもらうしかないか――。

 私がそう思った時だった。

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