95話 酔っ払い

 私は秋祭りを楽しんでいる。

 フレッドとフルーツジュースの飲み比べをした。


「なんだか頭がぼぅっとするわねぇ」


「姉上、本当に大丈夫なんでしょうか……? 顔が真っ赤ですよ」


「だいじょうぶよぉ。ふぇへへへへへぇ」


 何だかろれつが回らないけど、私は元気いっぱいよ。

 ただちょっとだけ眠くなってきちゃったかな?

 でも、まだまだいける気もするわ。


「イザベラ様……。どうしたのでしょう。……あっ!?」」


 アリシアさんが何かに気付いたようだ。


「フ、フレッドさん! このジュース、お酒が入っているんじゃないんですかっ!?」


「え? ああっ! 本当だ! しまった! うっかりしていました!」


 なにやら二人が慌てた様子だ。


「ふぇへへぇ。どうしたのぉ? 二人共」


「姉上、すみません。実はジュースではなく、ワインだったようです」


「そうなのぉ? でも、全然そんなこと感じないわねぇ。私はまだまだいけるわよぉ」


 アルコールが入っていたのなら酔っ払ってしまうはずだけど、私にそんな気配はない。

 度数の低いお酒だったのだろう。

 うぇへへ……。


「いえ、姉上は酔っています」


「酔ってなんかいないってぇ。フレッドだって、平気な顔をしてるじゃない」


「僕は毒耐性があるので……。まぁ、ほろ酔い程度ですね」


 フレッドは毒物に精通している。

 単なる知識だけではなく、人体上の耐性もある。


「ふぇへへぇ~」


「駄目だ、完全に酔っ払っている……。このままでは危険です。早くここを離れましょう」


「確かにそうかもしれませんね。イザベラ様、失礼します」


「むぎゅ」


 突然アリシアさんに抱き抱えられた。

 彼女は、私をそのままどこかに連れて行こうとする。


「姉上、しっかりしてください。今、休憩所に連れていきますからね」


「イザベラ様は、わたしがちゃんとお運びしますよ」


「うん……。わかったぁ」


 私はアリシアさんの胸に抱かれながら、ぼんやりとした意識の中で返事をする。

 彼女は結構力持ちだよね。

 光魔法だけじゃなくて、色んな鍛錬もして頑張っている成果だ。


「柔らかくていい気持ちぃ……」


「ひゃんっ! イザベラ様、そこは……」


 なんだかアリシアさんが変な声を出している。

 どうしたのだろう?

 と、そんなことを考えているうちに、休憩所とやらに着いたようだ。


「イザベラ様、こちらに下ろしますからね」


「姉上、ご気分はいかがですか?」


 ベンチに腰掛けると、フレッドとアリシアさんが心配そうに話しかけてきた。


「ふぇへへ……。私は、だいじょーぶよぉ。ちょっと、眠たいだけだから……」


 私はアリシアさんの太股に頭を預けると、ゆっくりと目を閉じたのだった。

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