35話 第二学年代表
私は新入生代表としての挨拶を終え、自分の席に戻った。
「イザベラ殿はさすがですね。素晴らしい挨拶でした」
隣の席に座っている男子生徒が声を掛けてきた。
「あ、ありがとう……」
私は戸惑いながらもそう返した。
彼の名前はオスカー・シルフォード。
氷魔法で有名なシルフォード伯爵家の跡取り息子だ。
昨年、私は彼にいろいろとアドバイスをしてあげる機会があった。
彼は奮起し、カキ氷機の開発に成功したり、氷を利用した作物の運搬方法を考案したりと、様々な功績を残した。
おかげで、今年のシルフォード伯爵家の経営は若干の改善の兆しが見えているらしい。
彼が危惧していた『次代あたりで伯爵位を取り上げられてしまう』などという事態には陥らないだろう。
「これから一年、同じクラスで学ぶ仲間です。ぜひ、仲良くしていただけると幸いです。もし困ったことがあったら何でも相談して下さい。微力ながら、協力させていただきますよ」
「えぇ、その時はお願いするわ」
『ドララ』には、四人の攻略対象のイケメンがいた。
その中でも、オスカーとはこれから最も付き合う時間が長くなるかもしれない。
何と言っても、クラスメイトだしね。
逆に、今まで一番長く接してきた義弟のフレッドとは接点が少なくなるだろう。
彼は私の一つ下なので、まだこの王立学園には入学できないからだ。
騎士見習いのカインや、エドワード殿下はどうだろう?
彼らは私の一つ上の学年だ。
オスカーほどではないが、これからは接する機会がたまにあるかもしれないな。
特にカインの現況は気になる。
今まで手紙で主に近況を報告し合ってきたけど、彼が王立学園に入学してからの一年間は一度も会っていないから。
「続きまして、在校生の挨拶を行います。第二学年のエドワード・ラ・イース。前へ」
「はい!」
私の思考は、先生に名前を呼ばれたエドワード殿下の声に遮られた。
(第二学年の代表は、やっぱりエドワード殿下なんだ……)
この入学式では、新入生に始まり、第二学年と最高学年の成績優秀者が挨拶を行う。
新入生代表は私だ。
畑仕事の傍らで魔法や座学を頑張ってきた甲斐があった。
そして、第二学年の代表はエドワード殿下。
確か、剣術では指南役の教師を倒し、魔法では競技用の的を粉砕したとかフレッドが言っていたかな。
その上、座学においても、全教科満点らしい。
凄まじい成績だと言えるだろう。
私は彼の姿をちらっと見た。
彼は金色のサラサラの髪をなびかせ、颯爽と歩いていく。
その姿はまさに、王子様といった感じであった。
壇上に上がった彼は、ふとこちらに視線を向ける。
そして、爽やかな笑みを浮かべた。
私は思わずドキッとする。
(……っ 目が合った!?)
「…………」
一瞬、彼と目線があった気がしたが、すぐに逸らされてしまった。
まぁ、これだけ大勢の人がいるのだ。
たまたまだろう。
私は自分にそう言い聞かせる。
だが、私の近くに座っていた女生徒達は我慢できなかったようだ。
「「「きゃーっ!!!」」」
「こっち向いてくれたわ!」
「はあぁ……。格好いい……」
「エドワード殿下、素敵~」
女生徒達の黄色い声が上がる。
私は、そんな様子を横目に見ながら小さくため息をつく。
(あちゃあ……。エドワード殿下ってば、相変わらずモテモテだなあ。あの女ったらしの笑顔で一体何人の女性を泣かせたんだか……)
エドワード殿下は、その甘いマスクと洗練された立ち振る舞いで、学園内の女子達から絶大な人気を博している。
そして、女生徒達ほどではないが、男子生徒や教師陣からの評判もすこぶる良いらしい。
彼は自信に満ち溢れた態度で、挨拶を始める。
女生徒達はそれをうっとりとした表情で聞いている。
(でも……。『ドララ』と同じなら、あなた達に勝機はないわよ。ヒロインはアリシアさんだからね~)
私はそんなことを考えながら、少しだけ冷めた目でエドワード殿下を見ていた。
「……以上で、私の挨拶を終える。だが、この場を借りて一つだけ重大な発表がある! 聞いてくれ!」
突然、エドワード殿下がそんなことを言い出した。
事前に話が通っていなかったようで、教師陣が慌てている。
だが、エドワード殿下は生徒の一人であると同時に、この国の王子でもある。
強制的に壇上から引きずり下ろす度胸のある教師はいないようだ。
そうした中、彼が口を開こうとしている。
いったい、何を発表するつもりなのだろうか?
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