第13話 自分にできる事
その後、一度気晴らしに外に出たいと思い、ミレンさんに一言言って外に出た。見た感じは、高い木が周囲にあり、家の近くには、それらの木より遥かに大きい気が一本ある。他には、見たことない色の花が何本も咲いており、如何にも怪しい雰囲気が漂っていた。
家の後ろの方で、何やら声が聞こえた。
「ほらそこ!しっかりと当てろ!」
「「はい!!」」
(人の声?)
近くに行って、ひょっこりとその様子を見た。そこには、話にあったゴブリンたちの姿があった。見た目は緑色で、背の高さは、150センチくらい。自分の背が低いため、ゴブリンたちが大きく見えた。
僕の視線に気づいたのか、1体のゴブリンがこちらに向かってきた。
(やばっ。どっ、どうしよう……。)
あたふたしていると、目の前まで来ていた。
「おいお前、そんなところで何してるんだ?」
低い声で詰め寄られた。その声にビビって一歩下がった。しかし、一歩下がってもお構い無しに、僕の腕を引っ張った。向かった先はゴブリン達のいる場所だった。
「えっと…、これはどういうこと、ですか?」
「あそこにいても暇だろ?」
「そう…ですね」
「それに、少しお前さんと話したい」
そう言って、地面に座った。
「お前さんとミレンさんの話を聞いちまった。盗み聞きをするつもりはなかったんだ。その、すまなかった」
「いえ、気にしないでください。本当のことですので」
「俺はな、お前さんの気持ちがわかるんよ。特訓を見てみると、武器を使っているだろ?それが俺たちゴブリンの戦い方なんだ」
修行中のゴブリン達を見ると、確かに武器しか使っていない。しかし、動きや攻撃の瞬間は素早く、正確に当てようとしている。素人の僕でもレベルが高いことがわかる。
「だからな、魔法が使える敵に遭遇してもいいように、素早さと正確な攻撃を重視した特訓をしているんだよ」
「えっと、ゴブリンは魔力がないのですか?」
「そうだな。無くは無いが、とても使えるほどではない。だから、基本的には武器を使用して戦うスタイルなんだ」
魔法が使えないゴブリン、僕と似ている感じがした。しかし、僕と違うところは、魔法が使えなくても真正面から立ち向かっていくところ。彼らにはその勇気があった。しかし、僕にはそれがあるのだろうか?視線を下に向け、自身の手を軽く握る。
「お前さんはこの先どうしたい?」
「………。」
今までの事を思い出してみた。ストーカー事件はイオが守ってくれた。王都からは何者かが逃してくれた。今の自分は相当弱い。守られてばかりは嫌だ。
その気持ちから覚悟を決めた。
「あの、一つお願いをしてもいいですか?」
「ん?何だ?」
僕は立ち上がり、ゴブリンに向かって頭を下げた。
「僕にも修行をさせてください!」
強い視線が下を向いていても、しっかりと伝わる。相手がゴブリンだからか、時間が少しずつ過ぎるとともに緊張感が高まってきた。
「それが、お前さんのしたい事なんだな?」
「はい!!」
ゴブリンが立ち上がり、「皆、集合だ!」と呼びかけ、修行をしていた他のゴブリンが一斉に集まった。
「急な話だが、今日から新しいメンバーが増える!」
「マジすか!?」
「そいつは誰なんだ?」
指揮を取っている(今話していた)ゴブリンがそう言うと、集まったゴブリン達がザワつき始めた。
「さっ、前へ出な。」
背中を軽く押され、ゴブリン達の前へ出された。「おっとっと」と
「あっ、あの、今日から皆さんと修行をさせてもらおうと思います!よろしくお願いします!」
勢いよく頭を下げた後、数秒の静寂が続いた。短くて長い、緊張が続いた時間だった。きっと、受け入れてくれはしない、そう思っていた。しかし、僕の考えを壊すかのように、一体のゴブリンがこう言った。
「んじゃ、今日からお前も仲間だ!だろ?みんな!」
その一言で、この場の空気が変わった。他のゴブリンたちも一切反対の意見を出さず、歓迎してくれた。
ゴブリンたちは嬉しさのあまり、僕の名前を聞いてきた。
「名前は何て言うんだ?」
「えっと、カルマです」
「おぉー!良い名前じゃねーーか!よろしくな、カルマ!」
予想してた反応とは違うが、結果的に受け入れてもらうことができた。そして、彼らが軽い自己紹介をした。
まず、最初に話したゴブリンが、『ラス』という名のゴブリン。この中だと、リーダーにあたり、ゴブリン達をまとめていた。
眼帯をしているのが、『イズ』。昔の戦闘で失明したらしい。基本的には、ラスの秘書的な役割をしている。名前を聞いてきたゴブリンはイズである。
スーアクは、ゴブリンの中でもかなり特殊な見た目をしている。僕が知っているゴブリンは、人型で緑色をして、原始的な武器を持ってる。しかし、スーアクは、全身に目がついているという、ゴブリンらしくないゴブリンである。
ハラマは、両肩に何かの角が刺さっているという、これまた珍しいゴブリンである。この角には何か秘密があるらしい。
ウワフは、下半身が別の魔物でできているゴブリンである。そのため、足の動きが悪いらしく、普段はミレンさんの手伝いをしている。今日は全員修行日らしいので、今こうして自己紹介できている。
といった感じて、それぞれ個性があり、自分の思っていたゴブリンとはかなり掛け離れている。しかし、しっかりと話せるし、接し方からして悪い感じはしなかった。異世界というのは、本当に不思議な世界だと改めて感じた。
リーダーのラスは伝えたいことが済んだので、修行していた場所の方に向かっていった。
「さっ、今からやるぞー!カルマ!」
やる気に満ちたハラマの声に、僕もやる気を出し、自然とみんなの方に足が運んだ。
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