第6話 逢い引き?
「夏井どうした?」
中庭でクリーム入りロングスティックを食べながら、小さいながらもけなげに咲くビオラを見ていた。
春風はそよそよと吹き、音でいえばぴーひゃららだ。
「おい夏井、夏井向日葵」
肩を突然叩かれ、私はクロネコのごとく飛び跳ねてサランラップに包まれたおにぎりはコロコロと坂を落ちていった。
「私のおにぎり――――――――――――――」
マジ最悪。下まで行くの面倒くさいんですけど。
当然怒りの矛先は犯人に向くわけで。
「ちょっと誰よ!」
勢い良く振り向いた私は、まさに振り向いたことを後悔した。
「げっっ
「ゲじゃねーしょ」
先生は坂の下まで転がったおにぎりを5個全部拾ってくれて、そのまま私の横にドスンと腰を下ろした。
「すいませんでしたぁー。で?なんですかぁ」
私は憮然とした態度のままおにぎりを奪い返し、1つをむしゃむしゃと食べ始めた。
「おいしそうじゃん」
「ただのおにぎりですぅ―!」
オシャレタトゥー何だかホンモノなんだか?ちょっと怖くて聞けない腕を伸ばし私のおにぎりをパクッて食ってる。
「ふざけんな、なに勝手に食ってんの?」
ゲラゲラ笑い出した神代(先生)の弁当箱から卵焼きをパクリ返してやった。
「ほんと、口わりーやつ」
「使い分けてますぅー」
「ま、食えよ。唐揚げ新作、うめーから」
へそ出しティーシャツにサスペンダー付きワークパンツがトレードマークのダンス教師。
暇人か?
「暇なの?」
私のおにぎりをもう1つ横取りし、次はおかかにしようぜ?と言った。
「次とかねーって」
そのまま空を仰ぐように草むらに寝っ転がった神代(先生)は、私のスカートをめくり言った。
「下にエアロビパンツとか色気ねーなー」
「マジセクハラかよ」
「俺のへそ見てセクハラ?」
殴ってやろうか……。
「神代ー」
「いやいや噓でも先生は入れろよ」
大きくごろんと向きを変え、何故か私の脚に頭をのせてる……。
「で?」
「ん?」
私は間の抜けた返事をしてしまった。
「いやいや、でなんでお前は落ち込んでんの?って聞いてんだよ」
膝枕なんつー有り得ない状態にもかかわらず、質問の意図を測り兼ね、素で間抜け面になってしまった。
「気にしてわざわざ来たわけ?」
神代は空を指さし『あそこ』っという。
「あそこ?」
空に目をやると、そっちじゃねーとばかりに顔の位置を校舎の方に向けられた。
「高井サツキ?」
私と目が合うとバツが悪いのかそそくさと窓の中に隠れてしまった。
「アイツな、一匹狼みたいに見えて実は優しいんだよねー」
「知ってる」
「さくらが助けられてるの何回も見たことあんからー」
ガサガサっとした木々を分けた音で私は我に返った。
「神代先生と夏井さん?逢引き?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます