第5話 伸びない身長

バレエは小さな頃からの積み重ね。

 実際身体は堅いしやっぱり柔軟体操は大切。

 そんな思いから放課後部活でストレッチしていた矢先だった。


「ねえすみれ、演劇部辞めるってほんと?」

 向日葵ひまわりが一目散に走りよりロッカーを片付けているすみれに声をかけた。

 

「うん、今バレエのレッスン週に2を3にして貰ったの、雨情先生のレッスンは宝塚音楽学校受験用だから、枠が全然空かないので有名じゃない、今回三人分空いたんだよ。声楽のレッスンも2回に増やすことにした。日舞も週1入れてるし……一応普通に勉強もしとかないとだし、実際時間なくて、この前部長とも相談したんだ」



「決まってた配役は?」

 向日葵ひまわりは今回の脚本を書いている。

「ごめんね。今日でやめる」

 下北すみれはお姉さんもタカラジェンヌだ、私や向日葵とは小学生の時から一緒。

 小学生の時にすみれのお姉さんが初舞台を踏んで3年で異例の大抜擢。


 花組の娘役トップスターになって、私達は東京宝塚劇場まで初舞台の初日を見に行った。


 お母さんもタカラジェンヌ、おばあちゃんもタカラジェンヌとサラブレッドの家系で高校生まで音楽学校に行けなかったのは、すみれただ一人。


 私にはわからない凄い世界は、想像を越えるプレッシャーだと思う。

「ねぇ、向日葵……応援してあげよう」


 私達は携帯で部室で写真をとった!

 勿論私達だって音楽学校は受験する。

 夢は諦めない!でも163センチのスタイル抜群のすみれとやっと140センチに手が届いた私とじゃ、見られる世界がまだ違う……。


 届くんだろうか……。

 全てを辞めて音楽学校に全てを使う、そんな前向きな戦いが出来る……すみれが……私は羨ましいよ。


「神様は意地悪だ……」


 

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