第22話 【再起動】

少女「すごい、この建物、やっぱりロボットの研究所っぽい」


ロボ「それもかなりの規模デスね」


少女「ポンコがいたところよりずっと先進的じゃない?」


ロボ「ええ、あそこはホコリまみれでしたしね」


少女「ここなら、ポンコに必要なパーツとか、記憶チップとか、ゲットできそう!」


ロボ「それに、宇宙人と戦うためのロボット軍団も集められそうデスね」


少女「そんな目的はない!!」




ロボ「ここの電気設備なら、充電も早く済みそうデス」


少女「そういうもんなの?」


ロボ「おお、これも、これも、ワタシが必要としていたパーツデス!!」


ロボ「ここは宝の山デスね!!」


少女「うふふ、ポンコが久しぶりにテンションあがってる」


ロボ「ご主人、いくつもらっていいデスか!?」


少女「好きなだけもらいなよ」


ロボ「本当デスか!? これだけ高スペックのパーツがあれば、情報のバグを直すのも朝飯前デスよ!!」


少女「え、そうなの? それはいいじゃん!!」




ロボ「えー、まず、このパーツをここにはめマス」


ロボ「それでここをつないで、ここを開けて、このスイッチを解除して……」


ロボ「これとこれを入れ替えて、ここのランプが緑になるまで充電して、それから……」


少女「ちょっとちょっと、ゆっくり教えてよ」


少女「覚えきれないし!」


少女「ていうか、本当にそれ合ってるよね? バグった情報じゃないよね?」


ロボ「ワタシの中にインプットされているワタシ自身の設計書に沿っているので、そこは大丈夫デス」


少女「あ、そう」




ロボ「で、そこまでできたら、ワタシを再起動しマス」


少女「再起動?」


ロボ「ここのカバーを外して、この赤いボタンを5秒以上押しマス」


少女「ドクロマークになってるけど!? これ押したら爆発しない!? 大丈夫!?」


ロボ「ご安心クダサイ」


少女「安心できないデザインですけど!?」


ロボ「再起動から目覚めたとき、ワタシはニュータイプに生まれ変わっているのデス!!」


少女「記憶とか消えないよね!? 変なポンコにバージョンアップしてたらヤだよ!?」


ロボ「大丈夫デス、心を無にして一息にグッと押してクダサイね!!」


少女「怖い怖い怖い!!」


ロボ「では心を鬼にして……」


少女「余計気が重いわ!!」




カチャカチャ


少女「えっと、これでいいんだよね……」


ロボ「ふふふ、パワーアップが楽しみデスねえ」


少女「さ、再起動するよ?」


ロボ「はい、どんとこいデス」


少女「うう……」


ロボ「心を無にして、グッと! 一息に!」


少女「うりゃあああ!!」グッ


……


ロボ「!」ガクン


少女「……」


ロボ「……」




ロボ「メ゛―――!!!」


少女「ぎゃあ!!」


ロボ「オハヨウゴザイマス!! オハヨウゴザイマス!!」


少女「え、今の妙な叫び声は起動音なの?」


ロボ「ワタシの型番はR3L3-2097デス」


ロボ「ご主人の登録をしマスので、網膜スキャンをお願いしマス」


少女「ああ、そういえばポンコを最初に起動したときにも、そんなんあったなあ」


キューン……


ロボ「網膜スキャン完了」




ロボ「続いて鼓膜のスキャンをお願いしマス」


少女「鼓膜!? 耳の中見せろってか!?」


ロボ「さらに横隔膜のスキャンをお願いしマス」


少女「横隔膜って肺のところでしょ!? 見せれるかあ!!」


ロボ「それから手術を待っている子どものために、角膜をクダサイ」


少女「あげられるか!!」


ロボ「べりっと」


少女「あーげーらーれーるーかー!!」


ロボ「冗談デス」


少女「チュートリアルからふざけるな!!」


ロボ「あと処女膜のチェックだけは、どうしてもお願いしマス」


少女「ここまで下ネタなしでやってきたのになんてこと言うんだ!!」




ロボ「ではお名前、生年月日、その他ご主人の情報を入力してクダサイ」


少女「そうそう、ここに打ち込んだんだった」


ピッピッ


ロボ「スリーサイズもお願いしマス」


少女「入れるか!!」


少女「再起動してからあんたちょっとオヤジ臭いわよ!!」


ロボ「クレジットカードの暗証番号もお願いしマス」


少女「持ってるか!!」


ロボ「親指の指紋の登録もお願いしマス」


少女「いっ……!!」


少女「いるか、それはいるか……」




ロボ「さて、ではご主人は、ワタシになにを望みマスか?」


少女「……」


少女「なにを……望むか……」


ロボ「ええ」


少女「……わたしの話し相手になってよ!」


ロボ「了解デス」


ピコン


ロボ「ご主人の登録を終わりマス」


少女「……最初も、たしか、そう言ったんだったなあ」





ロボ「思えばご主人がワタシを最初に起動したとき、とても心細そうな顔をしていました」


少女「……うん」


ロボ「ワタシを相棒に選んでもらって、本当に感謝していマス」


少女「わたしの方こそ、感謝しかないよ」


ロボ「人は、一人で話し相手もいない状況だと、とても脳にストレスを感じるという話デスから」


少女「うん、一人は辛かったな」


ロボ「楽しく話したり、笑ったり、ツッコミをしたり、そういう会話がとても必要なのデスよ」




少女「ねえ、あんたがボケたりポンコツだったりするのって、もしかしてわざとなの?」


ロボ「ももももも、もちろんプログラム通りデスよ?」


少女「あ、これ違うな」


ロボ「ご主人が退屈でボケたりしないように綿密に計画されたボケをかましているんデスよ?」


少女「綿密に計画されたボケって面白いのかな……」


ロボ「デスからご主人は安心してツッコんでくれればいいんデスよ?」


少女「う、うん」


ロボ「ワタシは、よい話し相手になれていましたか?」


少女「まあ、それはね、たしかに」




ロボ「さて、それでは情報のバグを取り除く作業に入りマス」


少女「あ、そういえばそんな目的もあったね」


ロボ「頑張りマスので、その間手を握っていてクダサイ」


少女「幼児か!!」


ロボ「上手くできたら褒めてクダサイ」


少女「幼児か!!」


ロボ「終わったら充電してクダサイ、26時間ほど」


少女「スペック落ちとるやんけ!!」


ロボ「……という感じで、これからもよろしくお願いしマス、ご主人」


少女「はいはい、うふふ」


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