美女ロボットに乗って戦う俺の戦闘記録
まっくろえんぴつ
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俺の名前はアカツキ・ヒカル。
ついさっき死んで異世界転生出来る事になった男だ。
神様曰く、異世界転生出来るのはとても運が良い事らしい。
俺としても二度目の人生があってラッキーだと思ってる。
前世は不運な結果で終わってしまったので、転生先では幸福に生きたい。
異世界転生出来る世界は選べるようだ。
なので俺は慣れ親しんだゲームの世界へ転生する事にした。
ゲームのタイトルはフリーダムフロンティアオンライン。通称FFO。
広大な宇宙を人型ロボットや宇宙船で冒険するオンラインゲームだ。
俺はこのゲームをかなりやり込んでいる。
間違いなく上位に食い込むくらいの強さはあるだろう。
だから何があっても対処出来ると思ってFFOの世界を選んだのだ。
……しかし、そんな考えは杞憂だったかもしれない。
転生する際に神様からチート能力を貰える事になったからだ。
俺はFFOで使っていたアバターとロボットを引き継ぐ事にした。
チート能力としては少し控えめかもしれないが、俺にはこれで充分だ。
神様は俺にチート能力を与えるとすぐに俺を転生させた。
たぶん神様は俺1人に構っていられる時間が短いのだろう。
俺としても早くFFOの世界へ行きたかったし、神様の対応に不満は無い。
転生した俺は愛機である舞姫七式のコックピットに乗っていた。
舞姫七式は俺の持てる美的センスを全て注ぎ込んで作り上げたロボットだ。
その外見は戦闘兵器ではなくある種の芸術と言っていい。
何故なら舞姫七式の姿は絶世の美女だからだ。
美しい顔、見る物を魅了する体のスタイル、それを引き立てる魅惑の服装。
これ以上の存在は無いと俺は思っている。
それだけの会心の作品なのだ。
「……これは夢じゃないよな?」
一応、これは夢じゃないかと疑って頬をつねってみる。
間違いなく痛みはあった。
俺がFFOの世界に転生したのは事実なのだと改めて認識した。
FFOの世界に転生した事を認識した俺はまずレーダーで周辺を確認する。
俺がいるのは宇宙空間。
FFOでは宙賊や宇宙怪獣のような敵に襲われる可能性のある場所だ。
自分の危険が迫っていないか確認するのは急務と言えた。
だが、ここで少し操作に手間取る。
舞姫七式の操縦は今までゲームのコントローラーでやっていたからだ。
当然、コックピットにある操縦スティックやパネルの操作方法は知らない。
手探りで触って、どうにかレーダー機能やマップ機能の使い方を覚える。
どうやら近くに敵の反応は無いようだ。
とりあえずこの辺りは安全だ。
次に俺はステータス画面を表示させた。
ステータスを見るに舞姫七式の性能や装備は、FFO時代の物と同じみたいだ。
それと機内にはFFOで揃えた選りすぐりのアイテムが積んであった。
所持金も少ないが持っている。
ステータスを確認出来た俺は最後に冒険者ランクを確認した。
冒険者ランクはAランクだった。
これもFFOの時と同じだ。
冒険者ランクとは宙賊や宇宙怪獣の討伐、NPCやプレイヤーの護衛、惑星やコロニーでの交易、イベントやアリーナでの対戦等で変動するランクの事である。
冒険者ランクはS、A、B、C、D、Eとなっている。
ちなみに最高ランクのSランクは極一部のNPCとプレイヤーに与えられている。
Sランクとは間違いなく廃人の証だ。
確認する事を見終わった俺は舞姫七式を実際に操縦してみた。
ゲームのコントローラーで動かすのとはわけが違う。
操作に慣れるまで3時間を要した。
3時間で済んだのはロボット(FFOではコンバットフレームという)に搭載されている脳波に反応して操縦を補正する機能があったからだろう。
あとは慣れだと思うので、試運転はこれくらいにしてそろそろ移動しよう。
とりあえず最寄りのコロニーに行って今夜の宿と食事を確保したい。
所持品の中には携帯食もあるが、やはり温かい食事が食べたいからな。
それに寝心地の良いベッドで眠りたいのだ。
俺は舞姫七式をエネルギー反応のある方角へ向けて飛ばした。
舞姫七式に背中に装備された純白の翼状のフレキシブルブースターが羽ばたく。
暫くの間、何事もなく進む。
最初は警戒しながら移動していたが1時間もすれば少し気が緩む。
自動操縦で真っ直ぐ飛ばすかと考え始めているとアラームが鳴った。
「救難信号か」
俺はすぐにレーダー機能で周辺を調べた。
近くで複数の反応があったので、ズーム機能で確認してみた。
どうやら1隻の宇宙船が6機のコンバットフレームに襲われているようだ。
「そうだな……スキャン機能も試しておこう」
スキャン機能は相手の情報を読み取ることが出来る。
勿論、相手が対策を講じていた場合は情報を見る事は無理だ。
だが俺の舞姫七式には最新のハッキング装備が搭載されている。
これに対抗出来るセキュリティシステムはその辺には無いだろう。
スキャンした結果、救難信号を出していたのはエリス・ティレットという人物だった。
顔写真も見れたがなかなかの美人だ。
まあ、俺の舞姫七式には敵わないが。
コンバットフレームの方はロストナンバーだった。
ロストナンバーとは機体IDが消されているコンバットフレームを指す。
機体IDを消去すればコンバットフレームは誰にでも動かせるのだ。
それを利用して宙賊はロストナンバーを運用する事が多い。
つまり宙賊=ロストナンバーというのは成り立つのである。
「ちょうどいい。俺の戦闘チュートリアルに付き合ってもらおうか」
このFFOの世界で初めての戦闘。
宙賊のコンバットフレームは6機でどれもFFOだと雑魚機体だ。
万が一にも舞姫七式が負ける要素は無い。
俺は何の心配もせずに宇宙船の救難信号に応えるべく舞姫七式を加速する。
宙賊は俺を無視して目標の宇宙船を狙い続けている。
相手のレーダーでもこちらを捉えているだろうに。
恐らく、俺と宙賊の距離が離れているから攻撃は無いと思っているんだろう。
その考えはある意味で正しい。
というのもこの距離はFFOだと遠距離に分類されるからだ。
コンバットフレームは基本的に近、中距離の戦闘が得意な兵器だからな。
宇宙船がこちらに向かわないように注意さえしていればいいわけだ。
だが、FFOで上位プレイヤーだった俺と舞姫七式の性能があれば話は別。
「武装転送。TYPE-BRα」
俺がそう言うと舞姫七式の右手に銃が現れた。
物質転送技術を使っている舞姫七式は、武装を常に持つ必要は無い。
必要な時に異空間から呼び出せばいいのだ。
今回呼び出したのはビームライフル。
俺が最もよく使う武装の1つだ。
ちなみにゲームでの名前はメガバスターライフル。
ビーム系の武器はチャージする事で威力と射程距離を上げる事が出来る。
これで遠距離でも攻撃が届く。
TYPE-BRαのチャージをしている間にロックオン機能をOFFにした。
そして手動で宙賊のコンバットフレームを狙う。
普通なら長距離射撃なんて怖がる心配は無いだろう。
しかし、今回に限ってはそれは間違いだ。
それを相手に教えてやろう。
「よし、命中したぞ」
舞姫七式の放ったビームは宙賊のコンバットフレームを撃ち抜いた。
TYPE-BRαはFFOでも最高クラスの性能を誇る中距離武器だ。
俺のはそれを更にカスタムして強化してある。
遠距離では流石に威力が落ちるが、雑魚相手なら撃墜するのは余裕だな。
さて、こちらの攻撃で宙賊が混乱している間に距離を縮めるか。
俺は舞姫七式を更に加速させた。
翼状のフレキシブルブースターを羽ばたかせて一気に接近する。
宙賊と俺の間にあった距離はすぐに無くなった。
これなら普通にロックオンすれば攻撃は当たる。
残った宙賊のコンバットフレームを次々に撃ち落としていく。
宙賊も反撃してきたが無意味だ。
舞姫七式の運動性能に反応出来ていない。
それに攻撃が当たっても舞姫七式には湾曲フィールドというバリアーがある。
このバリアーは一定のダメージを全て無効化するのだ。
宙賊が乗る雑魚機体の武器では湾曲フィールドを撃ち抜く事は出来ない。
途中から不利を悟った宙賊が逃げようとする。
だが、俺はそれらを全て撃破した。
宙賊に情けは無用だ。
ここが現実の世界だとしても俺は躊躇わない。
「……ふう、これで戦闘は終わりだな」
宙賊を撃破後、俺は液晶パネルを確認した。
そこに表示された今回の獲得賞金は少ない。
FFOでは金は電子マネーであり、ロストナンバーを撃墜するとその搭乗者の所持金が自分の口座に自動送金される仕様になっている。
ゲームの仕様はどうやらこの世界でも同じようだ。
『救援に感謝する。私はティレット子爵家当主エリス・ティレットだ』
通信が入ったので回線を繋ぐとさっき見た顔写真の女が画面に映る。
まさか貴族だとは思っていなかったので少し驚いた。
とりあえず丁寧な言葉使いを心がけて話そう。
「ご無事で何よりです。自分はアカツキ・ヒカルです」
『アカツキか。随分と若い。それに個性的なコンバットフレームに乗っているな』
「気になりますか?」
『……いや、失礼。助けてもらったのに少し不躾だったな』
「いえ、お気になさらないでください」
『先程の謝礼もしたい。私の統治するコロニーへ一緒に行かないか?』
「……それは俺に護衛を依頼するという事でしょうか?」
『そうでもある。勿論、報酬は出す。どうかな?』
マップを確認すると確かにコロニーが近くにある。
元々最寄りのコロニーに向かう予定だったので、断る理由も無いだろう。
「分かりました。その依頼、お受けします」
『ありがとう。よろしく頼む』
こうして俺はエリス子爵と共にコロニーへ向かった。
コロニーへは2時間程度で辿り着いた。
道中は特にトラブルも無かったので少し拍子抜けだ。
「さて、ゲームでのIDはここでも有効かどうか……」
コロニーに入る際に俺は少し緊張した。
FFOでの個人IDと機体IDが有効なのか不明だったからだ。
幸いな事にどちらのIDもしっかり認識されたようで、無事にコロニーに入れた。
コロニーの宇宙港に舞姫七式を駐機させて降りる。
宇宙船の方へ向かうとエリス子爵がちょうど降りてくるところだった。
「今回は君に命を救われたよ。これは謝礼を含めた報酬だ。受け取ってくれ」
エリス子爵は携帯端末を使って金を送金した。
この携帯端末はスマホのような物だ。
俺の所持品の中にもある。
「こんなにたくさん……よろしいのですか?」
「ああ、遠慮なく貰ってくれ。私の命を守ってくれたのだからな」
「ありがとうございます」
俺とエリス子爵は握手をして別れた。
これで護衛は無事に終了したな。
さて、これからどうしようか。
とりあえずコロニーの中を散策しながら考えるとしよう。
捕捉
舞姫七式の見た目
大きな翼の生えた○ノサーガのK○S-MOS Ver.4をイメージしてください
TYPE-BRαの見た目
ユニコーン○ンダムのビーム○グナムをイメージしてください
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