父洋介への疑問

 須藤は俳優だった頃の洋介を知っているようでしみじみと昔を懐かしんだ。

「パパはどんな人だったんですか?」

 先程まで気落ちしていた大志だったが、洋介が俳優だった事を知り、一気に気持ちを持っていかれてしまった。大志の知る洋介はいつも家で家事をして、家族を暖かく見守り、自分勝手に大志達に干渉しない守り神のような存在だった。その洋介が華々しい芸能界に身を置いていた事が驚きだった。

「おっと、喋り過ぎちまったな」

大志の視線から目を外し、首を掻いた須藤は、スッと立ち上がりその場を離れようとした。

「何で逃げようとするんですか?知ってるなら教えてください」

 懇願する大志に、下唇を突き出し少し思案した後、自分で言い出した手前そのまま逃げ出すわけにもいかず答えた。

「俺のは又聞きだから詳しくは言えねぇ。だが、四谷さんは洋介といつも一緒だったから、聞きたかったら舞台が終わった後聞いてみるが良い。すまねぇなぁ。20年以上前の話だ。どこまで本当かもわからねぇし、逆にそれ以上かも知れねぇ」

 座っている大志の肩をボンっと叩き意味深な発言だけ残して席に戻った。

 須藤にはそんなつもりは無かったのだが、この須藤の発言は煽っているようにも取れ、大志は是が非にでも洋介の俳優時代を聞きたくなってしまった。



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