プロローグ4


 正弥が、机の下に隠されていた赤いボタンを押し、意識を手放したとき、研究センター内に異変が起こったのである。


「キンキュウジタイ、ハッセイ。キンキュウジタイ、ハッセイ。」


「コレヨリ、スベテノデイリグチヲフウサシマス。」


「タダイマヨリ、スベテノケンキュウデータノショウキョヲオコナイマス。」


 輝夫は、正弥を刺した後、正弥の研究室に向かっていた、彼の研究データを奪い己がものにしようと急いでいた時、この三つの機械音声が聞こえてきたのである。


「まさか、そんな。」


 先ほど正弥が押した赤いボタンは、この研究センターに悪意を持って侵入した者を捕らえるためと研究データを守るためのトラップ発動ボタンだったのである。

 そして、このトラップ発動ボタンを押すと警視庁に危機を知らせるアラームが鳴り、発動後一時間以内に機動捜査隊とSATが派遣されるのである。



 こうして研究センターに駆け付けた機捜とSATは、センター内の廊下で身動きが取れない状態になっていた、橋谷輝夫を現行犯逮捕。その後の捜索で研究センターのガードマンをしていた七川喜一さん(70)と同センター教授の神出正弥さん(25)の遺体を発見。その後の捜査の結果、橋谷輝夫が二人を殺害し研究センターのデータを盗もうとしたと結論づけられた。

 この後、橋谷輝夫は検察に殺人と強盗未遂で送検され、裁判所に起訴され、有罪が確定し無期懲役が決まった。


 神出正弥を失った日本は、次元研究の分野で他国に後れを取っていく。再び日本がこの次元研究の分野で脚光を浴び権威を取り戻すのは、百年後の事であった。

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