三題噺置き場

光樹ひろ

廃墟のレストラン、絆創膏、書く

鬱蒼とした山奥に佇む洋館風の建物。

ぼろぼろの木で出来た看板がかろうじて、そこが洋食屋であることを知らせてくれる。


ふと、森の静寂を破る、陶器の割れる音が響く。


「おい、大丈夫か?」

聞きつけた、店主の男が、若いアルバイトの男に声を掛ける。

「すみません、店長…皿、割っちゃいまして…」

「まぁ、いい。それより、手。切ってるぞ?」


若い男の指先に一筋の切り傷が走り、血が落ちて行く。


「あー、空いた時間にレポート書きたかったのに…」


「ほら、いいから、指出せ。絆創膏貼ってやる。」

「いや、自分で貼れますよ、それくらい。」

「そうか…あと、ゴム手袋は外すなよ。」

「了解っす。」


手袋を外すのも面倒だなと、自分に言い訳しながら、今日のレポートは諦めよう。

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三題噺置き場 光樹ひろ @kaeruyagi39

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