転落の人生

リーティア

劣等感

 俺には大好きな人がいた。好きで好きで堪らない人が。


 俺には大切な親友がいた。頼り頼られ背中を預けれるような人が。


 俺には同い歳の幼馴染がいた。怒り、時には怒られるような人が。


 俺は記憶力が良く、足が早くて、人望もあり、性格も良い。そんな人になりたかった。周りには初めてなのにすぐにコツを掴んですぐ上達する。勉強だって少し頑張ればテストは平均以上を取れる。そんな人になりたかった。だが、なれない。俺は俺だから。なら、変わったらいい。


「記憶力だって、足の速さだって、人望や性格なんて頑張ったら良くなるよ!」


 そんなのはできる人が言うこと、できない人のことなんてわかるはずがない。だって、元々できるんだから。


 恋人だってすぐできて、好きな人と付き合える。


「いいよなぁ」


 普通はそんな程度だった。だっていつもの事だから。


 だが、今回だけは違う。容姿端麗で文武両道で学校で有名な人に恋人ができたと聞いた。それはただの噂じゃないのか?と言われるだろうが火のないところに煙は立たないとはまさにこの事で自分の親から聞かされたのだ。


「あの子に恋人ができたらしいよ。」っと。


 聞きたくなかった。そんなこと。


 その彼氏さんはイケメンで文武両道、サッカーで県代表のエースストライカーだ。勉学も学内No.1と、小説に出てくるような人だ。


 学校でもその噂が流れお似合いのカップルだと言われていて、普通はおめでたいと言っていただろう。そう言いたかった。本人にはおめでとうと言ってあるが感情を顔に出さないように笑顔を顔に貼り付けることに必死だった。


 

 散らかった暗い部屋、積み重ねられたの缶。ボサボサに伸びた髪。


 あ、そうだ、エナジードリンクがきれてたんだ。久しぶりに外に出ようかな。


 最寄りのスーパーで必要なものを買い、帰宅。思ってた以上に疲れた。弁当を買ってすぐ寝よう。


 今日は待ちに待った日だ。朝早くに起きてイベントへの準備をする。昨日買ってきた飲み物も忘れない。脱水は危険だ。


 イベントが終わって疲れきった身体を休めるためにベッドへ倒れ込む。


 今日は気分転換も兼ねて散歩でもしようかな。


 最悪だ。人と出会ってしまった。しかも美男美女でベビーカーに赤ちゃんを乗せて仲良く会話しながら歩いている。見たところによると若夫婦だ。


「ん?たかちゃん?」



 翌日、テレビでは殺人事件で騒がれた。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転落の人生 リーティア @LEEtear

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ