第45話 支配

「姫様……お気を確かに……」


「ううっ…………え、ええ…………」


「あくま…………まおう…………ばけもの…………ひとでなし…………」


 目の前で繰り広げられるクレイの戦いに全員が項垂れ始めた。


 女騎士は途中からわけわからん言葉を繰り返しながら自身の身体を襲う性欲値300%に悶え続けていた。


 さすがの体力というか…………3時間も性欲値300%に耐え抜いたというか、おかげで地面が洪水状態なのだが……。


 エリノーラ王女は途中からミーナに寄りかかって、目の前の惨事に身体を振るわせている。


 ゲラルドは目が死んでいるな。彼にはこれからも仲良くして欲しいものだ。


 そんな中、一人だけ目がキラキラしているのが――――。




「ベリアル! 面白い事が出来るわね!」




 そう声をあげるのが、オリビア様である。


「ねえねえ、あれってああなるように洗脳出来るの!?」


「あれは洗脳ではなくて、ああなるように仕向けているんです」


「仕向ける? どうやって?」


「オリビア様も『条件変更』や『指定』が使えますよね?」


「うん!」


「例えば、今回クレイに与えたのは、同じ部屋に女性がいるとき、性欲値を最大にあげるんです」


「ふむふむ」


「今度はクレイの相手の方々には『クレイが拒否したら超性欲上昇させる』を入れておくんです」


「あ! だから勇者が拒否するたびに、周りはどんどん元気になるのね!?」


「そうです」


「面白い! 力をこんな風に使えるなんて、思いもつかなかった! ねえねえ、私にも色んな使い方を教えてよ!」


「この件が片付いたら――――」


「やだ! いますぐ!」


「今はクレイが――――」


「いますぐ!」


 くっ…………この王女め。人の話を一切聞かない。


「ねえ、あまり私を怒らせないで? 後悔しちゃうわよ?」


「ふむ。俺としてはオリビア様と敵対するつもりはないんですが…………敵対する相手には容赦しませんよ?」


「ふふっ。面白いわ。ねえ、一つ勝負しましょう」


「勝負?」


「私に勝ったら私が貴方のモノ・・になるわ。でも私が勝ったら私のモノ・・になりなさい。これは命令よ」


「っ!?」


 隣にいたゲラルドが小さい声で「第二王女様は幼い頃からわがままなので、一度言いだしたことは曲げません」と耳打ちをする。


「…………いいでしょう。勝負の内容は俺が考えても?」


「平等ならいいわ」


「ふっ。オリビア様はどうやら剣の腕が立つようですね?」


「ええ! そこに蹲っている騎士団長以外には、まず負けないわ」


「ふっ。でもこの女には負けるんですね」


 オリビア様の顔から笑顔が一瞬で消える。


 なるほど……この第二王女の性格は大体わかった。


「こんな決壊するような意思しか持たない女に負ける人に、俺が負ける気はしませんね~剣の勝負としましょう~」


「…………いいわ。ええ。今すぐにやろう」


 怒りに支配された彼女がすぐに承諾して、うなだれている第一王女と勇者と置いておいて、訓練場に移動した。




 ◇




「ゲラルド。あの距離ならここまで何秒かかる?」


「以前なら3秒ほどでしたが、今なら2秒くらいかと」


「分かった。ありがとう」


「はっ。ご武運を」


 お互いに木剣を握り締め、俺とオリビア様が対峙する。


 いつの間にか決壊騎士団長も見に来ている。さすがは王国最強騎士なだけあるな。


「おい。私が勝ったら可愛がってやるよ~」


 オリビア様の口調が中々のモノに変わってる。


 怒った時はこういう感じなんだな。


「ふん。まだ経験もない・・小娘にやられるかよ」


 訓練場に凄まじい殺気が広がる。


 俺がまともな戦士なら今すぐ土下座して謝っていただろうが、残念ながら俺はもう好き勝手に生きると誓ったんでね!


「では、これから第二王女オリビア様対救世主ベリアル様の試合を始めます! 双方、構え!」


 ゲラルドの声が訓練場に響く。


 そして――――「始め!」という事と共に手を下げた。


 直後にオリビア様の爆発的な殺気が押し寄せてきて、怒りに支配された本人が飛んでくる。


 このままものの数秒で俺が斬り捨てられるだろう。


 だが、俺にも勝ち手があるからこその挑発だ。


 さあ、喰らえ!















 新スキル『性欲支配』!


 レベルで新しく覚えたスキルである。


 彼女の性欲値15%の黒色が色に変わる。


 そして数値を300%に変更させる。



 彼女がたった2秒で俺の前に飛んできて剣を叩きつけようとする。


 だが、既に行動を読んでいた俺は自分が持っていた剣で防ごうと見せかけ――――彼女の長くなびいているに触れる。


 次の瞬間。




「んあっ」




 俺を叩こうとした彼女の木剣が俺の後方に大きく吹き飛んだ。いや、彼女が投げつけたのだ。


 一瞬距離を取る彼女に、俺は全力で前進して彼女のに触れる。


「ん!?」


 その場で座り込む彼女の頭に手を載せる。


「良い子だ。さあ、一回だけ吠えてごらん。褒美をやろう」


「ん……あ…………ん……………………わん」


 既に目がとろける彼女は既に俺のスキルの虜になった。



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