第36話 クズの裁判のやり方

「では裁判を始める」


 現在、裁判所に俺とユーリお嬢様とジクレール子爵様、衛兵長のゲラルド、見届け責任者にエリノーラ王女とそのメイドのミーナ。


 裁判官はいつぞやの中年男性裁判官と、裁判を受けるクリミール子爵とその執事が部屋に集められた。


「俺は無実は! ユーリ令嬢の飲み物に『エデン』を入れろなどと命令した覚えはない! 『裁判』ですぐに分かる!」


「こほん。被告は静かに。ここには王女殿下がいらっしゃいますぞ」


 クリミール子爵が王女をチラっと見る。


 普段あまり姿を見せない王女に、一瞬目が女を欲するモノとなる。


 こいつ…………どこまでも腐ってるな。まあ性欲180%は伊達じゃない。


「ではこれから『裁判』を執り行う。被告は全て誠実に答えると誓えるか?」


「はい! 誠実に答えます!」


「では、汝の言葉を『裁判』する! スキル『裁判院』」


 以前俺に使った裁判スキルは淡い黄色い光の玉が現れ、俺の言葉を『裁判』していた。


 だが、今回のスキルでクリミール子爵の周囲に光の環が出てきて、囲い始める。


「なっ!? 何故俺が『裁判院』に掛るのだ!?」


「被告。口を慎むように」


「っ!」


 『裁判』で使われるスキルは、一つの言葉に対するスキル『裁判』だ。


 だが、中には難事件や複数の罪状が必要な場合がある。その時に使われるのがスキル『裁判院』である。主に大罪人を裁く時に用いられる。


「では被告、其方に質問・・をする」


「っ…………」




「其方ば『エデン』を生産しているのだな?」




「なっ!? ま、待て! 質問の内容が!」


「被告。質問に答えなさい」


「ふ、ふざけるな! 俺は子爵位の者だぞ! こんな尋問に答える義理はない! そもそも今日の『裁判』は俺がユーリ令嬢の飲み物に『エデン』を入れろと指示したかどうかだろう!」


「そうか……残念だ、被告。答えを避けるというのは、隠したいという事なのだろう。わしは多くの大罪人を見て来た。そのどれも答えようとしないモノは全てだった」


「ち、違う! 俺は子爵としてこんな尋問裁判に反対する! そ、そうだ! アッスホール伯爵様に取り次いでくれ! 俺はアッスホール伯爵様と繋がりがあるんだぞ!」


 デブが必死になって訴えているが、『裁判』は大き過ぎる力があるため、それに対する逃げ方というのが存在する。


 それが『黙秘』と『裁判拒否』である。


 今のデブは『裁判拒否』を続けている。


 自分に向いているスキル『裁判院』からの質問に対して、答えること自体を拒否するのだ。


 まあ、こうなるとは予想済み・・だけどな。



 俺がミーナに合図を送ると、ミーナが部屋を出て行く。


 デブは必死に訴えていて、その事実に全く気付かない。


 そのまま『裁判拒否』を続けている中、1分程でミーナがとある装置・・を持って来た。


 その装置を見たユーリお嬢様と王女が顔をしかめる。


「ん? な、なんなんだね! その装置は!」


「おかしいですね? 子爵様。子爵様が一番詳しい・・・はずですのに」


「なんだと!」


 デブが俺に怒りをぶつけてくる。


 だが、次の瞬間、ゲラルドが装置に子爵を取り付ける。


 ゲラルド程の戦士に抗えるはずもなく、子爵は全力で拒否するが装置に付けられてしまった。


 現在子爵は装置に四股を締められ、全力で万歳をしている格好だ。


 女性陣には退出させて貰いたかったのだが、王女には証人として残って貰わないといけないので、ミーナも残る事に。


 ユーリお嬢様は、少し興味があるそうで居残った。…………興味あるんだ……。




「では、裁判を拒否する輩には、神を代行して罰を与える!」


「は、はあ!? 貴様のような執事風情が何のつもりだ!」


「我がお嬢様を陥れようとした貴様に、情状酌量の余地はない!」


 汚い言葉を繰り返すクリミール子爵。


 執事は静かに場の流れを見つめていて、一言も話さないが、既に諦めムードだ。




 この三日間。


 俺が出来る事は出来る限りやりつくした。


 その中で最も力を入れたのは、スキル『性欲』のレベルを6から7に上げる事。


 7で何のスキルが手に入るかは分からないが、とにかく面白いスキルが手に入ったらいいなと思い、作戦を実行しながら、レベルを上げるため、通り過ぎる人々の性欲値を1~3%程変え続けた。


 意外にも集中力を使うので、スキルを使えるようになってから初めて頭痛を感じる程だった。


 ただ頑張った甲斐があり、『性域』の効果も相まって、何とかレベルを7に上げる事が出来た。


 そして、手に入ったのは――――――




「スキル『性欲属性・・変更』」




 部屋に俺の声が響く。


 俺の視界に映るクリミール子爵とその執事の数字を変える・・・


 まず、執事のを赤色に変える。


 さらに赤色のスペードを追加する。


 クリミール子爵には元々あった赤色のスペードを消して、青色のスペードを追加してあげる。


 今度は二人に『指定』を追加する。



 執事。


 『男の裸を見ると『性欲超上昇』を施す』


 『『賢者タイム』を迎えると『精力回復』を施す』


 クリミール子爵。


 『青色のスペードが発動した際、『性欲超上昇』を施す』


 『『賢者タイム』を迎えると『精力回復』を施す』


 『属性がピンク色に変わる場合、属性を黒色に変更する』



 今回手に入ったスキルは属性・・変更。


 赤色スペードはS気に、青色スペードはM気になり、どちらでもない者はスペードを持っていない。


 そして、性欲値のも変えられるので、執事は赤に変えてあげた。


 さあ、これからパーティーの始まりだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る