第24話 クズの修羅場?①

 その日は、何とか奴隷達を落ち着かせ、それぞれの部屋を与えて、眠りに付いた。


 部屋を与える時も、地ベタで寝ようとしていた所を、何とかベッドで眠るように説得するのも一苦労だった。


 朝日が起き上がる頃に起き上がり、1階に戻ると、そこには5人の奴隷達がせっせと掃除に励んでいた。


「みんな。おはよう」


「「「「おはようございます! ご主人様!」」」」


 うむ。やはり女の子は笑顔が一番だ。


 どうやら一番年長者のハンナが仕切っているようで、慣れていないリアとステラに重点的に仕事をレクチャーしている。


 少女達だけだと、出来ない仕事も多いだろうから、こういう年長者も買って大正解という事だな。


「ハンナ」


「はいっ!」


「これからもみんなを纏めてくれ」


「は、はい!」


「それと、食事は基本的にみんなで取る。俺が出かけていなくても全員でこのテーブルで食事を取れ」


「!? ご、ご主人様」


「食材は自由に使ってくれて構わない。俺がいなくても料理の腕を鍛えると思ってちゃんと作って食べなさい。もし食事不足で働けなくなるのはやめてくれ」


「……はいっ!」


「それと定期的にデザートも作ってくれ。作り方はレシピを買ってあるから、普段から自分達で作って試食するように」


「っ…………はいっ!」


 これはクルナさんから貰ったアドバイス。


 言わないと、彼女達は勝手に食事もしなければ、デザートなんてとんでもないらしい。


 まあ、奴隷なのだから当たり前と言えば、当たり前だな。


 チャイムが鳴り、近くにいたベラがインターホンを覗いて、クルナさんだと確認すると、すぐに迎え入れる。


「ただいま~」


「「「「「お帰りなさいませ!」」」」」


「お帰りなさい」


「う~今日も疲れたよ~先に眠って貰うね~」


「おやすみなさい」


 風呂はお店で入ったようで、真っすぐ寝室に向かう。


 するとまたチャイムが鳴る。


「ご主人様~! ユーリ様という方がいらっしゃったのですが~」


「ユーリならいつでも通していい」


「はいっ!」


 今度はユーリが恐る恐る入ってくる。


「ユーリ。久しぶりだな」


「久しぶりって……二日ぶりですよ?」


「あれからたった二日か…………それはそうと、入ってくれ」


 ユーリにそれぞれ挨拶をすると、それに納得するユーリ。


「あ、上に一緒に住む事になったクルナさんがいるから、あとで紹介するよ」


「!? く、クルナさん? それはどこの女性なんですか!?」


「俺が携わってるお店の仲間なんだ」


「な、仲間…………それ以上ではないんですね?」


「ん? ん~、ん…………」


 ジト目で見つめるユーリ。


 その時、またチャイムが鳴る。


「ご主人様~! ミーシャ様という方なのですが~」


「ミーシャさんか。通してあげて」


「は~い!」


 ジト目で見つめられる中、ミーシャさんが入ってくると、ジト目で見始める。


 いやいや、二人ともどうしたんだ?


 ミーシャさんにもみんなの紹介をすると、奴隷の事は納得してくれたみたい。


「初めまして、私はユーリと申します」


「初めまして、ミーシャといいます」


 2人の間に火花が散る。


「それにしてもミーシャさんが訪れてくるとは思いもしませんでした」


「だ、だって! ベリアルさんたったら、店にも全然来てくださらないですし……」


「店!? ベリアルさん? どこに店なのですの!」


「うちは広場にある『ホーリーナイト』という飲食店です!」


「そ、そうしたの…………って! そこって最近凄くオムライスが非常に美味しいと有名なお店じゃないですか!」


「うふふ。うちのお母さんのオムライスは最高に美味しいですから!」


「ミレイアさんは元気にしてますか?」


「う~ん。最近、ベリアルさんが全く遊びに来てくれないと泣いてますよ?」


「うっ」


 色々忙しくてあまり遊び・・に行けなかったな……。


 行くって約束していたし、近々顔を出さなきゃな。


「ご主人様……皆様の分も……朝食の準備をして……よろしいでしょうか?」


「クレア。君は料理が得意と言っていたね。ああ。皆さんの分もよろしく頼む」


「はい……」


 ちょっと喋るテンポが遅いが、可愛らしいクレアには似合いだな。


 ユーリとミーシャさんが変な戦いを始めていて、それを眺めながらクスッと笑って数十分。


 食事の準備が終わったとの事で、クレアがうちに来て初めての料理を堪能する。


 リーダーであるハンナも手伝ったらしいが、それにしてもクレアが作る料理はどれも一級品で美味しい。


 冷蔵庫やらで食材も買い置き出来るし、食費も自由に使わせているので、クレアは腕を巻いていた。


「ん? ベリアルさん?」


「どうしたんだ? ユーリ」


「えっと……その……大変言いにくいのですが…………奴隷と一緒に食事を取るのですか?」


 ユーリの言葉に一緒に食卓に座っていた奴隷組の表情が強張る。


「ああ。彼女達は俺の家族・・だからな。奴隷ではあるが、これから一緒に生活を過ごすのだから、一緒にご飯も食べるし、好きなように食べて貰うのさ」


「ベリアルさんらしいというか、普通の考え方と随分とずれてますね」


「そうだな。ユーリはどう思うんだ? もしユーリが嫌いなら止めるが……」


「えっ!? こ、こほん。いえ! 私は素晴らしいと思います! このまま続けてください!」


 ユーリの言葉に奴隷組は安堵の息を吐く。


 その傍らミーシャさんはずっとジト目で見て来るんだが…………。


 そんなドタバタしながら朝食を食べ終えた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る