第20話 クルナの訪問
「わあ~! ここがベリアルくんのお家なの~! おっきぃ~! しかも場所も凄くいいね!」
家に入るや否やクルナさんが声を上げる。
元仲間達との報酬のない契約が成立して――――というか、一生許すつもりがないから。
セリスさんやクルナさん達は一旦仮眠を取った。
俺も家に戻り少し仮眠を取って、お昼過ぎ頃、セリスさんとクルナさんが家にやって来たのだ。
「いらっしゃいです。中にどうぞ」
「わあ~! 中もいい感じ~!」
「クルナちゃん、騒ぎすぎだよ~」
「え~いいじゃんいいじゃん! 誰もいないんでしょう? そ・れ・と・も、彼女が眠っていたりして」
今日は誰もいなくて良かったわ……。
「誰もいないですよ~俺は一人暮らしですから」
「こんな広い家なのに? 家事も自分でやってるの?」
「ですね」
「ふ~ん」
何かを納得したようで、クルナさんは次々空き部屋の探索に出掛けた。
「クルナちゃんがあんなに元気なの、珍しいわね」
「そうなんですか?」
「ええ。実は意外と人見知りするからね。仕事なら割り切れるらしいけど」
元々活発なイメージがあるんだけどな。
まあ、人って見かけによらないと言うしな。
「セリスさん達、お昼はまだですよね?」
「そうね」
「じゃあ、簡単なモノで良いなら作りますよ~」
「男の料理楽しみ~」
「そんな大したモノは作れないですがね」
冷蔵庫という魔道具の中に入れてあった卵を数個取り出して、調理を進める。
色々教わった通りに何度か練習して、それなりに上手くなったアレを出してあげよう。
数分後。
クルナさんがニヤニヤしながら戻って来るタイミングで、丁度調理も終えた。
「お待たせしました」
「これは! 『ホーリーライス』じゃない!」
「ええ。ミレイアさんに教わりましたから」
「期待だね!」「美味しそう~!」
テーブルを囲って、「頂きます」と声を揃えて食べ始める。
「「美味しい~!」」
うむ。我ながらミレイアさん程ではないが、近い美味しさは作れているな。
談笑をしながら食事を進め、食べ終えるとセリスさんは用事があると帰っていった。
「ねえねえ、ベリアルくん。彼女はいるの?」
「いえ、いませんね。でもそろそろ出来ます」
「え~!」
「?」
「残念~私が立候補したかったのに~」
「あはは、クルナさんは俺みたいなクズより、もっと良い男を見つけられますよ」
「ふ~ん」
そのあと、クルナさんが何かを呟いたが、声が小さくて聞き取れなかった。
聞き返そうとすると、
「ねえ、ベリアルくん! 部屋の掃除とか行き届いてなかったよね?」
「まあ、使わない部屋とかはしませんね」
「ベリアルくんって、それなりにお金持ちだよね?」
「う~ん。どれくらいかは分かりませんが、家賃やらお店の売り上げやら頂いてますから、それなりには持っていると思います」
「それならさ~良い所連れてってあげるよ~!」
「良い所?」
「うん! 代わりに、そのあと、私の頼みも聞いて欲しいの!」
「そもそも代わりとか言わなくても、困った事があればいつでも言ってください。俺とクルナさんの
一瞬、顔が固まった彼女は、ぎこちない笑みを浮かべる。
どうしたんだろうか?
「それはそれ! これはこれ! ねえ、いいでしょう?」
「ええ。それでいいですよ」
「やった~! じゃあ、そろそろ時間だから早速行ってみよう~!」
クルナさんの目的は分からないが、仲間だと思っている彼女の頼みなら余程の事じゃない限り問題ないだろう。
彼女は満面の笑みを浮かべて、俺の手を引いてとある場所に向かった。
普段俺が過ごしている一般区を通り抜けて、貴族区に入って行くと、さらに道を進めて行った。
「じゃじゃん~! 今日の目的地はここだよ!」
彼女が両手を広げて、目の前に広がる建物を見ながらつぶやく。
まさか自分がこのような場所に来るとは思いもしなかった。
なるほどな…………掃除って所から、ここに辿り着くのか。
少し驚いてはいたが、ある意味クルナさんとのデート気分で、彼女に手を引かれ、建物の中に入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます