第11話 クズと大家

「よう。大家さんよ。久しぶりだな」


 俺は隠れていたカーテンを外し、部屋の中に入っていく。


「な、なっ!? お前はベリアル!?」


「おうよ。ベリアルさんだぞ?」


「こ、これはどういう事だ!」


「そう熱くなるな。あれ・・に困っているのだろう?」


「っ!」


 苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる大家に、心の底から嬉しさが込みあがってくる。


「そんな態度でいいのか? お前の不能・・は俺の力なんだぞ?」


「なに!?」


「体験しただろう? さあ、見せてやろ」


 一気に大家の性欲を300%に上げる。


 何も隠していないので、元気なイチモツが俺の前に聳え立つ。


「お、おぉぉ、おおおお!」


「はい。また5%」


「うわああああ! やめてくれ! 頼む!」


 一気に萎んだイチモツに絶望する大家。


「くっくっくっ。そう。その顔が見たかったんだよ」


「お願いだ! もうベリアルさんには関わらないから! 頼む!」


「それでは俺が我慢ならないわけだからよ。お前には一生それに付き合ってもらう」


「これを…………一生!?」


「ただ、俺の言う事をちゃんと聞くなら、治してやらんでもない」


「っ!?」


「あの日。お前がうちに来たのは勇者の所為なんだよな?」


「そ、それは…………」


「おいおい、一生不能のままでいいのか?」


「そ、そうだ! 勇者がいきなりやってきて、すぐに貸家に行ってベリアルさんをどん底に落とせと命令されたんだ!」


 やはり予想通りか…………クレイめ。勇者ともあろう者がせこいな。


「では続きだ。俺が渡した金貨3枚を覚えているな?」


「も、もちろんだ! 今すぐ返そう!」


「いや、それでは足りないな」


「へ?」


「利子だ。利子付きで返せ」


「それではあんまりだ!」


「いいのか? 一生不能のままだぞ?」


「それだけは! い、いくらを返せばいい!?」


「そうだな~あの日から大体30日経っているし、30倍で慰謝料付きで、丁度金貨1000枚でいいわ」


「せ、1000枚!?」


「なんだよ。一生不能のままでもいいのか?」


「む、無理だ! そんな大金あるわけがない!」


「ふ~ん。じゃあ、土地だ」


「へ?」


「お前、土地転がしが得意だっただろう? 貯め込んだ土地があんなにあるじゃないか」


「あ、あれは…………」


「金貨1000枚か土地。持って来たら不能は治してやるし、こちらのセリス嬢との本番も体験出来るぞ?」


「うふふ。大家さん~頑張ってね~」


「っ!」


 合図を送ると、扉が開いてギアンさんが入ってくる。


「お客様。料金は必要ありませんので、このままお帰り下さい」


「なっ!?」


 大家は拒むことが出来ず、ギアンさんに裏口から叩き出された。


「セリスさん。今日はありがとう」


「いえいえ~でもまだまだいるんでしょう?」


「ああ。まだ6人残っている」


「全部協力するわ~」


「ありがとう」


「それはそうと…………」


「ん?」


「ベリアルくんはどうして私の裸の前で興奮しないわけ!」


「ええええ!? そっち!?」


 そこから数分間、セリスさんに説教される羽目になった。




 ◇




 数日後。


 仕事を終えた帰り道。


 大家が絶望した顔で俺を待ち伏せていた。


 ミーシャさんには先に帰って貰い、俺はそのまま大家の事務所にやってきた。


「こ、これが…………土地の契約証です…………」


 震える手で俺の前に出された14枚の紙を眺める。


 全て王都の土地契約証で、中には一等地の契約証もある。


 土地契約証は、魔法ギルドと商人ギルドが提携して作った最上級品であり、そこそこの火や水では傷一つ付かず、さらに実際の土地と契約証は魔力で繋がりを持ち、その証明証に名前が書かかれているだけでいつでも土地の持ち主である事が証明出来る仕組みになっている。


 仮に盗まれたとしても、証明証を書き換える事も出来ないので、証明証が盗まれたりするケースも殆どない。なぜなら、証明証は王国側で現在の場所を特定出来るためでもある。


 それほどまでに土地の契約証は信頼度が高いモノとなっているのだ。


「う~ん。これで1000枚か……?」


「勘弁してくれ! 時価ではまだ700枚だが、これから絶対にあがっていく! 数年もすれば2000枚にもくだらないんだ!」


 必死さから嘘ではなさそうだ。


 まぁ、正直言って俺に土地の価値は分からないからな。


「分かった。ただし、もしこれが嘘ならまだ不能になるのは覚悟しておけよ」


「ひい! 大丈夫だ! 王都の土地転がしのこのギレが保証するよ!」


「分かった。ではさっそく貰うぞ」


「ああ!」


 契約証を持って大家と一緒に王都にある魔法ギルドを訪れる。


 土地契約証の持ち主変更は自分達では行えず、魔法ギルドでしか行えない。


 なので、それなりの手数料は掛かるのだが、そこは俺が持つ事にした。


 契約証変更時、魔導士と呼ばれている人から怪しげな感じで見られていたけど、そこは大家が一所懸命に説得してくれて、無事土地を貰う事が出来た。


 帰り道。


「大家さんよ。ここでさらばだな。一つ言っておくことがある」


「な、なんだ!?」


「もし俺が死んだりすれば、お前はまた不能に戻るように条件付きであれを掛けておいた」


「ひい!?」


「だが、俺が死なない限り、発動することはない。それとここまでしてくれたんだ。感謝の意を表して以前よりも性欲を増やしてあげよう。色々練ると思うから楽しんでくれ」


「あ、ありがとう! 本当にありがとう!」


 元々大家の性欲95%から105%に変えてあげる。


 10%だけだが、100%の前後では少し効果が変わるので、きっと今日から楽しい人生を送れるだろう。


 男に取って性欲0%は、絶対に起たない。


 5%の場合は20秒くらい起つが、20秒後には折れて、再度起つまで1時間を要するが、どうせまた20秒しか持たない。


 性欲5%はある意味0%より男に取っては致命的なデバフだったりするのだ。



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