第9話 二つ目の物語り 美福門院ナリコ存在のタエラレナイ重さ
子供の頃は、次に箱舟の所有者に選ばれるのは自分であると信じていた。他人に悪いことをしていない、迷惑をかけていない、傷つけたりしていない。逆に思いやりのある行動ができ、他人の悲しみに気が付くと寄り添うこともできた。特別な感覚を持ち、目の前の隣人を救おうとする行動ができる。
太陽の光が雲の隙間から自分を照らし選ばれている感覚がある。
子供時代は社会で許されていることが多く、社会の観点でお利口であることはあまり難しいことではない。
それが少しづつ歪んでくる。
歪んでくると、
苦悩しない タイプの人間は初速が秀でていて、追いつけないかと思うほど箱舟から遠ざかって行く。ソドムとゴモラの街を凌駕し生きていることを謳歌する。
苦悩するタイプは回り道をするが、ゆっくり自分だけの箱舟を作って晩年には自分だけを救う船が完成しつつある。
ほどほどのタイプが一番蔓延っているだけあって、強く、加速と減速を繰り返しながら環境に順応し、尚且つ多数決でがっちり社会の共通思想を担っている。幅広い個人差がありながら、固められた共通ルールに守られそこで安住している。ソドムとゴモラに属しつつも言い逃れできる生き方をしている。
私も3つ目のタイプであった。今は1つ目の世界に身を置いている。
今や、治天に愛され、家成を愛し、勝利しか目の前にない。振り向けば塩の柱になるだろう。
子供の頃の考えの浅さとは、自分だけでも助かるための他人への善行の矛盾にも気が付いていなかったこと。
ノアの箱舟の神話を知ってしまったから、真の善行でなくなってしまったこと。
リンゴがかじられてからは、かじらないで在れる人間は一人も存在しない。
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