二章 祝賀パーティー①
一日の始まりは朝食から。
白を基調に美しく整えられた食堂に、
目の前の窓から中庭の緑が見え、鳥の
(
にこにこと
美術品のような優美な曲線を
「昨日申し上げた通り、安全な王都に
ちなみに
「つまり、その
「簡単に言いますね。もちろんそれについては調査を始めていますし、全力を
自分の前に盛られたサラダからつやつやと光るトマトを選んで口に入れた。
「貴方に対する周囲の評価が悪すぎます」
幸せな気分がちょっとだけ減った。
「だからそれは……」
「関係ないとは言いましたが、正式に婚約を結ぶのであれば貴方の悪評が問題なのは変わりはありません。原因がデマだったのであれ、はっきり申し上げますが今の貴方の評判は最低中の最底辺。
まごうことなくはっきり申し上げてきた。
「それは……不本意だけど、今までの行いを考えたら仕方ないわ。これから少しずつ
わたしは最近特に気に入っているジャムがちゃんと朝食の席に用意されていることに気が付いてパンを手に取った。
「バルテリンクは複数の貴族によって支えられ、身分の
本人達が
(まあ、当然ね)
「モンドリア
口の中にジャムの甘さが広がって頬が
「そういえば、もうすぐ辺境騎士団の功績を
貴族や有力者、もちろん功績者である辺境騎士団も参加する大きな
「ここは
「私としては出来れば欠席して頂きたいのですが」
リュークはどこまでもわたしを追い出したいようだが、聞こえないフリをした。
「どうせならそのパーティーで裏切り者を見つけ出せないかしら」
「……なんでそうなるんですか」
リュークが不可解そうに
「だって領主であるリュークが、存在を知っているのにまだしっぽを
「……やはり
わたしはにっこり
「注意深く、
彼の半眼は、とても期待に胸を
「裏切り者についてはこちらが引き受けます。下手に
「ふふん、
特に
「うまくいったら
一方的に宣言すると、わたしはジャムをたっぷり
……気が付くとあれだけあった朝食をきっちり食べ終えている。
(あ、あれ? いつの間に……)
確かにリュークも同じように食事をしていたが、決してがっつくわけでもなく早食いをしているようでもなかったのに。
彼はいつも通りの
というわけで、自室に戻るなり三日後の祝賀パーティーに出席する
「そういうことはもっと早く言ってくださいよ!」
アンに思い切り
「でも、当日言うよりいいでしょう?」
「あったり前です! もう、どこから手を付けましょう? とにかく
なんだかんだ言ってわたしが少しでも良く見えるように
「えへへぇ。ありがとう、アン」
一緒にブルの街に行ってから、以前よりアンと親密になった気がする。
「本当にそう思うなら次からはもっと早く言って下さいね! せっかく素材がいいのに
そんな調子で
「甘い! 甘いですユスティネ様! 今からでもドレスを新調しましょう! 今からフルオーダーは時間的に無理ですが、とにかく最新のドレスを持ってこさせます」
「ええ? ドレスならたくさんあるじゃない」
「
アンはわたしが持ってきたドレスの数々をちらりと見ただけで一刀両断した。
「確かに
「ええ!?
「はいはい。とにかく有力者の方々に認められるにはこちらの
むう。
(しかしまあ、そこまでアンが言うなら、その通りにしてもいいかなあ? 何を着たってわたしは
考えてみれば
「それじゃあ当日の
「ええ、お任せ下さい。必ずやパーティーで一番注目を集めるような装いを考えてみせますから!」
その日のうちに、
頭からつま先まで採寸されては
「見て下さい、ユスティネ様!」
翌々日の夕方に持ってこられたドレスは確かに素敵な
「へえ? いいじゃない」
「うふふ、
──そう笑いあったわたし達は、まさか次の日に事件が起こるとは思いもしなかった。
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