一章 傲慢王女は帰りたくない③
アン達を意識的に名前で呼ぶようにしてから一週間が
あれ以来かなり彼女達との関係が改善されたような気がする。今日はアンが中心になり、三時のお茶の用意をしてくれている。アンと交代でつくシエナはまだまだ態度が硬いので、アンが当番の日は私も
しかし、
「やっぱりリュークはわたしが
「…………。当主様は
「だってもう一週間よ。仮にも婚約者が
「えー……それは、その。……おそらくですが、ユスティネ様に最後にお会いした時がそのう……」
「最後? ああ、あれは我ながら誠心誠意立派に謝罪できたわよね!」
最近は話を合わせて
あれから色々考えたのだが、やはりリューク本人となんとか話は出来ないだろうか。
だって嫌われている原因のほとんどが誤解なのだから、ちゃんと話せばそんなことするような子じゃないって分かるはず。そう思って食事や移動の時間を見計らって会いに行こうとしたのだが、いずれも
(これは
それに気がついたわたしが
確かに並の
記念すべき二十三回目のお断りを
「そう気を落とさないで下さい、ユスティネ様。実際このところ当主様は
わたしが肩を震わせていたのは気落ちしていたからではなく
「ふーん……。じゃあ昼間に部屋に行っても会える可能性は低いって事ね」
アンはこくこくと
「ということは、こちらから
今度は
「アン、出発の準備をしてちょうだい!」
心を入れ
気候は厳しく天候は悪い日が多く。
しかし
「うっわあああ! 広い! 大きい! 素晴らしいわ!」
思わず
(やっぱり世界は広いなぁ。これほどの平原がどこまでも続いていくこんな風景は王都では絶対にお目に掛かれないもの)
「ユスティネ様、あまり乗り出されますと馬車から転がり落ちてしまいますよ」
大興奮のわたしとは裏腹にアンは落ち着いた様子だ。
外から来た人間にとっては
「そろそろ目的地のブルの街が見えてきましたよ。この近辺に
王都から連れてきた王宮
名付けて『城で会えないなら城の外まで押しかけてやろう作戦』である。
うん、そのまんまだわね!
「ふっ……あははははは! 今日があなたの
「ユ、ユスティネ様、馬車で
「絶対に
「ああほら、だからちゃんと座らないと危ないですって」
さて、着いたはいいがまだリューク達が来ていないということで、わたしとアンは街はずれの丘の上にある果樹園をプラプラと散歩していた。
「ブルの街はベイル
「へえ、バルテリンクの気候は植物の生育に向かないって聞いたことがあるけど、そういう人もいるのね」
丁度そこら辺で作業していた農民らしきボロ着の男性に
「ふうん。サイズは小さいけど、色つやはいいわね」
「ええ、もちろんです! 雨量が足りないと大きくは育たないのですが、むしろ降水量が少ない時の果実の方が甘みが増して
彼は心から嬉しそうに語った。
そういえばバルテリンクに来たばかりの頃
早速一口
「美味しい……!」
わたしが思わず感嘆の声を
その時遠くの方から呼びかける声が聞こえ、農民は
「まいったな! ああ、こんなものを店で出せやしない」
「申し訳ありません、今年はどうしても天候の関係で育ちが悪く……」
「いや、仕方ないのは分かっているよ? 俺だってなんとかしてやりたいんだ。だけど見てくれよ、王都のプルーネと比べたらとても同じ果物だとは思えないだろう?」
どうやら商人が果樹園に商品の引き取りに来たらしい。やたら大きな声で納品される果物の不作を
「なんだか
「
アンはそう言いながらチラチラと丘の下に見える市場のあたりを気にしている。
だけどわたしは、二人の間でなされている会話が気に入らなかった。
「さあそろそろご当主様も到着するでしょうし、市場に
商人と農民の間にはそろそろ落としどころを見つけようかという空気が流れていた。
「本当なら農園で穫れないのならよそで買ってでも用意して欲しいぐらいなんだよ。だがまぁ、困っているならお
「ほ、本当ですか!? それで十分で……」
「なに
わたしが今にも
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