第10話 出発……。
更新します。よろしくです。
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あの……ぽっちのヴァンパイアに転生して、しかし僕(しもべ)が4人に増えた、雅 煌太(みやび こうた)ことリュードです。
いやぁ、ずっと寂しくぽっちで過ごすのかと思っていたら頼もしい味方が出来まして。未だにピンと来ないんです、だって身分も無ければ爵位なんて当然ありません。有名人でもないし……そんな私に何故彼等は尽くしてくれるのか?ついて来てくれるのか?……いや、滅茶苦茶嬉しいんですよ!こんな私を慕ってくれるなど。
有り難いですよ、頼もしい限りです。
で、私の提案でとてつもない構想を実現する為に一丸で動き出した訳です。
その訳をお話しすると、ヴァンパイアでラーウッド男爵なる者が、ここ西の街”ラザルド”で滞在していた私達をおびき出すためだけに街を襲いました!元々はアリシアを狙っての事でしたが……。それが被害がもう半端なく無差別に、更に便乗して若い女性をも襲いまくり……私は男爵を何とか倒しましたが、満身創痍で辛うじての状態。助けたルージェにサリーナ達の所に送ってもらう途中で私が見た光景は何とも言えない凄惨な街の状況…………こんなつもりではなかったのですが、相手はそうは思ってくれません。とにかく街の人々には申し訳なさが一杯で……。私は街を出ようと考えて居たのですが、街の有り様を目の当たりにし考えを改めました。
そして私はある決断をしていました。それは、私が持つ血晶石(けっしょうせき)を売って資金を作り、更には別の場所を見付けて新しく街を造り直そうと……ある意味、無茶ぶりとも言える提案……ですが宝石商をしていた“バルジオ”さん(今は私の僕になってくれましたけど。)が、宝石を何とかしてくれると言う事になり、それならばと準備の為に2手に分かれて動く事にしました。その事で後々街の人々を説得して人を雇い、街を再興していければと。
ですが、説得が一番大変です!バルジオも、領主は逃げ出して居ないので私がいっそのこと領主になってしまえば話がまとまりやすいのでは? なんておっかない事をさらっと言ってくれるものですから私の方が心臓止まりそうなほどで……。
ま、まずは準備が出来てからと言う事になった訳なんです。
そこで、バルジオとサリーナに宝石の処理、資金調達を頼み、私とルージェとアリシアで新天地を探しに行く事にしたんです。
出発前に準備が必要だったので、サリーナにルージェとアリシアに武具を作って欲しいと頼み、サリーナも早速取り掛かってくれました。動きやすさも鑑み、軽装ながらも防御力がありダメージを軽減できる防具を作ってくれました。アリシアの場合は白狼時でも可変して胴体や脚に装備される様に。
ルージェに至っては、いざというときには掛け声とともにフルアーマーに可変すると言うなんとスペシャルな装備!いいのか…そんなチートで……?
武器に至ってはミスリル鉱石が使われた、アリシアには両手に“クロー(鉤爪)”を。
ルージェにも当然ミスリルが使われ、魔術が施された丸型で腕に装着可能の盾と、片手・両手とどちらにも対応しているドラゴンの装飾が施された“バスタードソード”となりました。
………あの……強くて格好いいのは良いんですけど……私の方が真っ先に討伐されそうで怖い…………。
私に関しては、ジャケットが直って来ました。銃を納められる様、裏側にポケットが付き、魔術によって防御力が上がっていました。何せ私の戦い方が特殊なのでそれ以上は……との事でした。これでも十分ではないか?とも……ぐすっ……。ま、まあ頑張ります。
いやぁ……ホントにサリーナの地下工房……いろんな意味で快適です!秘密基地みたいで、私にはワクワクです……サリーナ凄い!
で、ベッドも並んでいた訳ですが何故か女性3人は私にくっつく様に添い寝してきました。それには私も緊張を通り越して、苦笑いして照れてましたけどね。だって思い返せば転生前の私にはあり得なかった事象です!もう、女性のじょの字も無かったんですよ!こんなの奇跡ですから!
それが美女3人とも私に密着して寝てくれるものですから、心臓が不整脈で鼻血を堪えるのに必死!私の方が爆死しそう! いやしかし……可愛い寝顔が見られて、目の保養なので良しとします。やばいな…これ以上は襲ってしまいそうな気がする……止めとこ。
ははは参ったな……私は寝不足のまま、夜が更けていきました。眠りにつけたのはやっとで朝方でした………。
気持ちの良い日差しが、窓を通り抜けて部屋の中を照らします。
………ん!?ちょっと待て!ここって……地下ですよね?日差しなんて入りましたっけ?……何で?……。
「フワァ…んぅ…おはようございます…リュード様…。」
サリーナが目を覚ましました。げっ!何て大胆なお姿っ!あ、あられもない……これ以上は恥ずかし過ぎて説明出来ません!
いやちょっと待て!ま、まさか……………。私は、残りの彼女達の姿を覗いて見ると………あ、あの……恥ずかしくて何も言えない………彼女達の全てを見てしまった気がする………。って、私も何故かパンツ一丁だし……。
い、いや!何もありませんからね!ほんとです!何がどうしてこうなった!?
私は、動揺を隠すようにサリーナに問い掛けてました。
「お、おはよう。サリーナ?ここ地下だよね?……。」
と、聞きながら周りを見回すとあれ?何か違う……地下の部屋じゃない……はて?
「あぁ、すみません。大きいベッドがここしか無かったものですから、ここは地上の私の住宅の寝室ですわ♪」
あぁ、それで窓から光が差して………って、何ぃっ!
マジかっ!確かに人が6人から7人は寝られそうな巨大ベッドがありますが、壁際には鏡台や衣装タンスでしょうか?寝室の様ですが……貴女、このベッドに1人で寝てたんですか?何て羨ましい、私は元の世界じゃ床にシングルのせんべい布団を二枚重ねて寝てたんですよ、こんなフカフカな心地良いベッドなんて……羨まし過ぎるっ!
「ん?今、自宅って言ったよね?店とは離れてるの?」
「はい、と言っても目と鼻の先ですが…こちらは私の自宅なので、騒がしくなる事はありません。」
「で、でも、よく無事だったね?」
「はい、ですが応接室等は使える状態ではありませんけど……。」
「そうなんだ……済まない……。」
やはり被害を受けてましたか…まぁ無傷な訳はないよなぁと思いましたけどね。男爵も私達を見付ける為だけにここまでやることは……。
「い、いえ!リュード様の所為ではありません!あのヴァンパイアの男爵が行き過ぎた行動を取ったにすぎません。もっと自重した行動をしていれば、街はまだ無事だった訳ですから。」
「……ありがとう、サリーナ。」
「い、いえ、そんな……。」
照れてうつむいてしまいました。可愛い……ご、ごほっ。
「う……うぅん……あ、リュード様おはよ……ええっ!?」
あ、アリシアが目を覚ましました。自分の姿に驚いてます……。
「何でアタシまでこの格好なんだ……!」
はい、続けてルージェも起きました……デスヨネ~~……私も知りたいです~~!
あられもないお姿……アリシアとルージェは毛布で慌てて身体に巻き付けてます。そりゃそうでしょうね、私も恥ずかしいし……ってサリーナは何で平気なの!?
「あらあら、リュード様と添い寝するんですからその位の覚悟じゃないとこの先ご一緒出来ないですわよ?」
うっ!サリーナさん?さらっと爆弾発言してませんか?私はノックアウトです……。
「あ!?リュ、リュード様?リュード様ぁっ!!」
アリシアが慌てて私が気絶したのを介抱してくれます。
「サリーナ……お前な……。」
「ほほほほ、スキンシップは必要よルージェ。」
サリーナは大胆です。戦闘には不向きであるにも関わらず、思い切りの所がある。でも、その勇気が私に銃と出会わせてくれた……良い傾向だと思います。
みんな服を着替えて、地下の部屋の方へ。バルジオも一緒に食事をとります。
(リュード様……昨晩は良く眠れましたかな?)
隣に座っていたバルジオが耳打ちに話しかけてきました。
(ああ、確かに朝方だけど眠れたよ。でも朝起きてから速攻で気絶した。)
声には出しませんがやはりか、と言った笑い顔。
(なんとWW……寝覚めが悪う御座いましたか……罪なお人だWW)
いや……それって私の所為ですか? バルジオも薄々気づいている様子です、微笑みながら陰でそんな話をしていました。
私たちは朝食を済ませて、防具や武器を装備して持ち物の確認をします。私とルージェとアリシア、サリーナとバルジオの二手でいよいよ行動に移ります。
「それじゃ、宝石の件はよろしく頼むよ。」
「お任せください。必ずや揃えて見せましょう。」
「サリーナ、サポートを頼むよ。」
「お任せください、バルジオとは今までも協力しあって来た旧知の仲。問題ありませんわ。リュード様達が無事に戻られる事を祈っておりますわ。」
「ありがとう、帰る場所があるのは良いもんだね。」
「そ、そんな……リュード様ったら……ポッ。」
「………罪なお人ですなww」
い、いや、何もしてませんてっ!!もう、バルジオが含みのある笑みを向けるものですからこちらまで赤面するっ!
「よし、じゃあ出発だ!」
「はいっ!」
「行こうっ!」
「いってらっしゃいませ。」
こうして、街を後にした訳です。必ず土地を見つけて新しく作り直す!そう心に誓って……。
……………………さてと、街を出たは良いけど何処へ向かおうか……ああ、サリーナから貰った地図があったな。
早速その場で広げて見ました。2人も地図を覗き込みます。
現在位置は、西の街”ラザルド”の外にいます。門の側だけど……ここか。ええと、東南の方向にはヴァンパイアの城か……あ、これって先にお話ししたあのヴァンパイア子爵が居るという……なるほど。
東の方はヴァンパイア達の領域ですか……公爵や侯爵、君主等の城が在るようでよく見れば子爵や男爵の城は離れているな……。
北側にはハラル領主の屋敷があってその更に奥に人間の国があると。ニール国って言うんだ?ほう……あんまり関わりたくは無いんですけど……駄目かなやっぱり。
そうすると、南側?何故か山や何だこれ?森か?にしては大きい様な……。
「ね、ここは森なのかい?」
私は気になって2人に聞いてみました。
「ここは樹海です。“エンルージュの樹海”」
「ここは樹海なだけあって、モンスターだらけの巨大な森だ。ここは辞めといた方が……。」
教えてくれた2人が心配そうに私に話して来ます。
しかし私はかえって都合が良いように思いました。
「行ってみようか?」
「ちょちょっと待って下さい!本気ですか?」
「そうだ!今言ったように、モンスターだらけなんだぞ、強い奴等が沢山居るなかを飛び込もうなんて自殺行為だ!」
2人も慌てて私を引き留めようとします。
「いや、むしろその逆だよ。その中に街が造れれば、水源の確保が出来るし、木材も手に入る。畑も作れれば作物もね。但し、この樹海の10分の1程度を開拓させて貰うんだ。周りを樹海で覆ってもらい、往き来は魔方陣か何かで通れる様にする。但しこれも、登録された者しか入れない。って、何かエルフの森みたいだな?」
2人が目を丸くしていました。信じられない事ばかり言うものですから、半分呆れてもいる様で。
「リュード様、簡単に言いますけど楽な物ではないですよ。」
「そうです、リュード様この樹海は危険なモンスターが沢山居ます。もしもリュード様に何かあったら……。」
ルージェの渋い表情に、アリシアの切ない顔を私に向けて来ます。しかし、私もそれを覚悟で行こうと思ってます。その位の気概でないと、この先は無いと。
「ごめんよ、それでも私は行こうと思う。そこに街が造れれば、簡単には襲われなくなるしね。危険は承知だよ、2人は私が守るから。」
2人はタメ息をつきました。
「分かりました、リュード様についていきます。」
「ルージェ……。」
「私もリュード様についていきます、お一人でなんて行かせません!」
「アリシア……ありがとう2人とも。」
3人で顔を見合わせて微笑んでました、向かう方角が決まりました。
「よし、行こう!」
「「はいっ!」」
頷きあって、歩き出しました。何があっても2人は守ると誓いながら……………。
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読了ありがとうございます。二手に動き出したリュード達は無事に土地を見つけることが出来るのか、お楽しみに。
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