イケメンだけど女性が苦手な男子の話

@Mukimuki111

第1話 

 イケメンというのは人生の勝者、とよく言う。


 街を歩けばすれ違う人にちらりと見られ、連れの友達と「あの人かっこよくない?」と再び視線を向け、会話を弾ませる声をよく耳にする。


 また、何をしていても目につく存在だ。例えば、学校生活では窓際の席で、外に目を向けているだけで、絵になる。食事を摂るにしろ、運動、勉強、何をしていても様になる。女の子の視線が自然とそのイケメンに向くようになっているかのように。


 イケメンが平凡な男性と違う部分はやはり異性との交流の豊富さだろう。これは男女限らず、容姿が良ければ、自然と人は寄ってくる。その人に近づきたい。もっと触れたいと思うのは男女共通の本能だろう。だから、容姿が良い人は自然と友達も多く、周りの中では一目置かれる存在なのかもしれない。恋愛経験を早くし、多くの異性と恋愛をする可能性が高いのかもしれない。


 しかし、全てのイケメンがそうとは限らない。一部例外だって存在する。


神谷聡太(カミヤソウタ)は、その内の一人である。現在高校三年生。愛知県内の公立高校に通う学生。


 身長は180センチ。視力両目とも1.5。好きな教科は社会。


 容姿は非常に優れていると言っていい。ぱっちりとした目に、相手を威圧させない雰囲気。多くの男性が求める理想の容姿をしている。


 その容姿あって、これまでの学生生活で女性から告白をされることは多々あった。でも、聡太は全て断った。


「神谷くん。今日、放課後カラオケ行くんだけど、どうかな」


 昼休みの時間にクラスメートの一人の女子生徒が聡太の席に近づいて話かけてくる。確か、名前はクニエダといった。名前は憶えていない。聡太は咀嚼していたおにぎりをごくりと飲んだ後、彼女の目を見てこう言った。


「ごめん。今日はバイトがあるんだ……」


 目を細め、相手に不快感を与えない受け答え。いつもの通りのこと。女子生徒はそっか、と残念そうに言ったあと、


「じゃあ仕方ないよね! ごめんね、食事中に!」


 両手を合わせ、颯爽に4人の女子が群れるグループに帰っていった。「バイトがあるってさー」という彼女の声が、聡太の耳に僅かに聞こえた。


 聡太はふぅ、と軽く気持ちを整えるように息を吐いた。その様子を隣で見守っていた友人の渉(ワタル)は無言で聡太を見る。


 もう何回目かわからない嘘の返事。バイトなんて本当はやってない。ただ行くのは嫌だったから適当に用事を付けただけ。


 聡太は女性が苦手だ。会話はできるが、基本的に女性とは距離を置いている。


 女性を苦手になったのは今になってのことではない。小学生ぐらいの時からだ。苦手になった出来事は思い出したくない。


 聡太はかっこいいと何度も周囲から言われてきた。男からも、女からも。でも実際は外見だけで、中身は女子が苦手で、恋愛経験なんてない男子。


 いや、恋愛経験は今後もないだろう。自分が心の底から一人の女性を愛することはおそらくこの先の人生にはないだろう。


 きっとそうだろうな、と聡太はぼんやり頭の中で思いつつ、食べかけていたおにぎりを再び食べ始めた。











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