最強は最高にわがままな証~滅国の吸血姫~

早乙女

プロローグ

 かつて栄華を極めた大国【聖王国エルヴァーニ】純白に聳える王の居城、白を基調とした広大な街並み、そんな神の都と呼ぶにふさわしい街に住まうは人々は活気に満ち溢れていた。


 普段から賑やかな街だったが、今日だけは一際騒がしかった。

 国王の子供が元気に生まれ、それを祝うべくエルヴァーニの住民たちは生誕祭を開催した。


 その日は新たな生命の誕生を種族関係なく喜んだ。

 この時代では魔族などの概念そのものが存在しなかった。

 善悪はあったが、種族の隔たりは限りなくゼロに等しかった。あるところでは獣人とリザードマンが肩を組み、またある所では人間と大鬼が酒を酌み交わす、種族の違いなど些細な事でしかった。

 共に笑い、共に泣く、似たような感性を持つのだから共に生活するのは雑作もなかった。


 生誕祭は数日間に及んだ。

 住民たち主導の元、行われた生誕祭も7日目に国王によって閉会の儀が行われる事となった。


 大きな鐘の音と共に城の壇上に一組の男女が並び女の腕に抱かれるは一人の赤子、その背後にはエルフ族の衛兵が真剣な面持ちで待機していた。

 豪華な衣装でその身を包み威風堂々とした佇まいの男女こそ、この国の初代国王【エルヴァーニ・デクト】と【王妃アルバレズ・フィア】だった。


 拡声魔法を用いて国民に声が聞こえる様大々的に宣言をする。


「皆の者!大儀であった!この国の繁栄、そなた達なしでは決して成し得なかった偉業である。私は今、とても感動している」


 国王の言葉を受け、国民たちは歓喜に打ち震える。

 そして国王が赤子を王妃から受け取り天へと掲げると歓喜に震えていた民達から大歓声で迎えられる。


「マナ様ーーー!!!」「元気に育てよーー!!」


 だが、赤子は急な大歓声に驚き泣き出してしまった。


「静かにせよ!!マナが泣いてしまったではないか!!」


 国王は民たちに強く言い、王妃は呆れながら赤子を国王の手から奪い取る。


「あなたが一番うるさいです。ね?マナ」

「あうぅ」


 王妃からの言葉に意気消沈する国王。

 既に威厳もへったくれも無い、そんな様子を受け赤子は泣き止み母の笑顔を見て楽しそうに笑う。

 国王と共に意気消沈していた国民たちもその笑顔を受け笑いに包まれる。


 楽しいまま生誕祭は終了した。はずだったが終わらなかった。結局生誕祭は1カ月程執り行われた。


 優しい母と父、それを支える優しき国民。そんな仲間たちに囲まれた赤子こそ、この物語の主人公【エルヴァーニ・マナ・アルバレズ】である。

 彼女の人生は10年の月日を経た後大きく変わる事となった。

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