第440話 駆け出し冒険者は呪う
そう。
ぼくとアキルが考えた、相手がいちばん嫌がるであろう対処法は、まず第一に、それぞれの親に告げ口することだった。
片方は武力で。もう片方は魔力で。
キレさせたら、対処が不可能な連中である。もっとも闇森のザザリと斧神の化身アウデリアは、伝説、民話の類ではあまり友好的な関係には、描かれていなかった。
「それで、あの二人が、その」
魔女ザザリよりも純朴なメア王妃のパーソナリティが、前面に出ているため、口にするのも恥ずかしそうに、メア王太后は言う。
「リウとフィオリナさんが、と、特別な関係にあるのは間違いないのかしら。」
「ルトくんの前で、ディープキスかましてましたっ!」
「そ、それはかなり特別だけれども」
メア王太后は真っ赤になった。
「キスくらいはその、単に親愛の情を示すくらいのこともあるし。」
「うちのフィオリナは、おまえんとこのリウとデートした後、下着を忘れて帰ってきたそうだ。」
「まあ、間抜けなお嬢さん‥」
「おたくの息子さんはそれをわざわざ届けにきてくれたそうだ。親切な息子さんだな!」
「あら。受け取ったのは。」
「ルトだ!」
あらまあ。と言ってメア王太后は 、ぼくに頭を下げた。
「リウはなんと言ってましたでしょう?」
「フィオリナの魂は高潔な騎士のもので、男性にが似合うのだと。」
「アレが!?」
と吐き捨てたのはアウデリアさんだった。
「なので、フィオリナを男性にして、自分が女性になったら、とても相性がよかったそうです。」
アキルが勢い込んで言った。
「アイツらは!
ルトくんを下僕にするって言ったんです。朝から晩まで傍に仕えさせて、閨の様子まで見せつけるって!」
「どうだろう、ザザリ。」
アウデリアさんが、若干疲れたように言った。
「我が子たちの性癖を暴露されるのも辛いものがあるが。
もともと三人で結婚式がどうしてこじれたのだ?」
「ルトくんが、リウくんとやりあった時に、手加減したのがわからなかってみたいで、『おまえの力はこの程度か』みたいな展開になって。」
アキルは、よく見てるなあ。
正直、リウも半分は好意でやってるのがわかったんで、本気にはなりにくかったんだ。
ウィルニアが、「見てる」のにも気がついたし。
結果は最悪。
リウみたいなタイプは、まず相手の能力から、相手を判断するんだろう。
隠していた実力がその程度か、と思われてがっかりされたのかもしれない。すまないね、陛下。
「わたしとしては、我が子の幸せを第一に考えたい。」
メア王太后は、目をふせた。
「ルトには、幾重にも詫びよう。だが、もし、我が子が真摯にフィオリナ姫、いやフィオリナ公子を愛しているのであるであれば、そして、フィオリナ公子もリウを愛し、家庭をもち、子を育むことを望むならば。なにとぞ、ふたりを祝福してもらえないだろうか。」
「そうだなあ。」
アウデリアも首をかしげた。
「確かに、わたしもこれでフィオリナが落ち着けば、それに勝るものはない。
まして、もし子でも成せば、それはそれで喜ぶべきこと。もしそうなれば、あの二人を祝福してやってもらえないだろうか。」
「最終的には。」
「そう・・・最終的にな、なあ。」
ゆらあ。
二人の奇女は立ち上がった。
「まずは、足腰たたなくなるまで、叩きのめして反省させてからだな。」
「やはり、母親をという巨大な壁を、乗り越えるという経験を与えてやらねば・・・ワガママグセは直りませんね。」
「る、ルトくん! これでいいのっ!?」
アキルが叫んだ。
「いい。」
と、ぼくは答えた。
「フィオリナさん、とられちゃうけど!」
「まあ、ぼくの体の用意が出来てない以上、一時的には、仕方がない。」
「でも、耐えられるの! フィオリナさんとリウのこどもができるんだよ!?」
「ああ」
ぼくは、またあの笑い方をしているらしい。なんどもフィオリナから止められたとてもいやあな笑い方だ。自分でもそう思ってるんだけど、こんなときにはいいだろう。
邪神少女が怯えている。
「それは、手を打ってある。」
「だって、もうフィオリナさんたちの居場所もわからないんでしょ?」
「まあ、フィオリナとリウのほうからコンタクトをとってくると思うよ。」
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閉ざされた世界。
隔離された異界。
ウィルニアが、そもそもリウからフィオリナを守るために作った世界だ。だが、ウィルニアがリウの側についた今、そこは、リウとフィオリナの愛の巣だ。
黒曜石の宮殿の奥に、ふたりのための寝室が備えられていた。
とちらから、誘うまでもなく、ふたりはごく自然にそこにたどり着いく。
着衣を脱がすまもなく、もつれあう白い肉体。
どこかに少年の危うさを残しながらも引き締まったフィオリナの肢体。幼さを残しながらも女性らしいまろやかな曲線をもつリウの肢体。
ふたりの体は絡み合う。
指先。唇。ふれるところすべてが、痺れるような快感にかわり、美しいふたりの体はなんどものけぞった。
はい。これ以上、細かな描写は勘弁してほしい。
R15指定しかしてません。
だが、ふたりともにあまりに美しかった。そのふたりの営みは神話の一章をみるような神聖な美しさがあった。
だが。
「な、ぜ・・・・」
フィオリナの顔が、焦りと苦渋に、歪んでいる。脂汗が、裸のリウの胸におちた。
リウも、明らかな異常に気がついている。その顔はいぶかしげに。しかし不快げに眉間にしわがよっていた。
ふたりの視線は、ともにフィオリナの股間にむかっていた。
リウの顔がそこに寄った。
しめっぽい音が寝室にひびく。それは十分以上は続いただろうか。
口を離して、リウは、フィオリナを見上げた。
フィオリナは、呆然とつぶやいた。
「だめ・・・だ。」
リウも呆然としている。いったい何が。
何が。
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「まあ、攻撃はそこそこに抑えていたし、リウに刺された傷の、治癒を遅らせてまで、紡いだ呪詛だからねえ。」
ぼくは笑う。とつぜん、そこが役にたたなくなった男は、なにかと笑い話にされがちだ。本人と、パートナーにとっては深刻な問題なのだろうが。
たとえば、密かに不倫して、快楽を貪ったあげくに、婚約者をぐさぐさ刺して、逃避行を決め込んだカップルなら、ちょっとくらいは笑ってもいいのではないだろうか。
しかも、あのフィオリナが。
あの戦女神と呼ばれた美しく気高い戦士が。
ED。
に悩むところとか。
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