きてしまった。

ずっとこの日が来て欲しくなかった。

トイレで泣いていたひかるを見たら、またあの日の星に戻るのではないかと怖くて堪らなかった。


まやたく君の結婚式が、始まった。


螺旋階段をあがって、二人が現れた。


ステンドグラスの前で、人前式が行われた。


氷雨君と俺達の席を、まやたく君は離してくれていた。


披露宴も、無事に終わり、そのまま、二次会が始まった。


みんな、好きな席に移動しながら話してる。


「月、大丈夫?」


栞が、声をかけてきた。


「何時までだっけ?」


「18時まで、19時から店営業だから」


「まだまだだな。」


「星さん、疲れてるな。」


「何かなってる?」


「化け物が、また動き出したけど。大丈夫だよ。」


「氷雨君と話させてあげたいんだ。気持ちを伝えさせてあげたい。」


「大丈夫だよ。話をさせてあげな。その方がいい。」


栞は、俺の肩を叩いた。


「真矢君のとこに行こう?」


麻ちゃんがやってきた。


「うん、じゃあね。」


そう言って、栞が行ってしまった。


星は、時雨君と氷河君と話してる。


「心配しすぎだよ。」


華君が、俺に声をかけてきた。


「星君は、いなくならないよ。」


「わかってる。」


「怖いんだな」


晴海君が、俺の隣に座る。


「うん、怖いんだよ。信じてるのに、怖いんだよ。」


「あの日を思い出すから?」


「うん」


「あの日は、怖かったよね。本当に、怖かった。僕も、怖かったからわかる。でも、星君はいつだって自分を保っていたよ。錯乱しそうな中でも頑張っていた。だから、僕と晴海が月君の首から手を離せたのも星君が頑張ってくれたからだよ。」


「華君。俺…。」


「明日、会いに行くの?」


「ああ、行くよ。ちゃんと、俺も気持ちを伝えに行くよ。」


「伝えるべきだよ。ちゃんと」


華君は、俺の背中を叩いた。


怖くても、星を信じて待とう。


「真矢が、幸せそうでよかった。」


星は、ニコニコ顔で帰ってきた。


「何、飲んでるの?」


「ワイン。ねー、るい。僕達も結婚式したいね」


「うん、そうだな。」


「すごく、綺麗だよね。二人とも…。」


「ドレスが着たいの?」


「なんで、僕は男だよ。」


星は、楽しくて笑ってる。


ドレスは、似合うだろうな。


星も華君も。


「ドレス似合うって思った?」


「バレてた。」


「僕と星君とくぬりんは、似合うよね。女の子っぽいから」


華君は、笑ってる。


「月君、兄貴と椚さんの事ありがとね。」


「いえ、何もしてないですよ」


「指輪見た?すごいデカイダイヤモンドつけてる。」


「婚約指輪作りに行ったんだね」


「うん、一粒ダイヤつけてる。今は、つけてないけどね。プライベートでは、つけてる。」


「あれは、結構高いよ。100万は越えてるな」


「だよね。くぬりん頑張ったよね。」


「詩音の話しは、聞いてる?」


「うん、聞いてるよ。でも、詩音が決めた事だから」


「兄貴は、幸せそうだから。俺も華も反対はしなかったよ。」


二人は、笑ってる。


「そっか」


美咲さんが、最後に結婚式をするのがまやたく君と一宮さんの披露宴。


それが、終わればここを椎名さんに渡す。


こんなに素晴らしいお店に美咲さんがいなくなるのは、残念だけれど…。


それよりも素敵な人を見つけたんだ。


「真矢ともう一回写真撮ってくるね。」


星は、立ち上がってまやたく君の席に行った。


「心配しないの、星君は大丈夫だから」


華君は、ずっと俺の肩を叩いてくれた。


「詩音と椚さんとカフェに行った日に約束したんだ。一生一緒にいる努力をするって。でも怖くて、今日の星見ると怖くて」


「大丈夫だよ。約束したなら守るよ。月君との約束を守らないわけないよ。」


華君と晴海君は、俺の背中を擦ってくれた。


まやたく君の、二次会は終った。


氷河君をみんなでおろした。


「じゃあ、仕事行くね」


華君と晴海君は、帰った。


「じゃあ、三次会なんで。バイバイ」


栞と麻ちゃんとまやたく君と美子さんは、華君と晴海君のお店に行くと行ってしまった。


「じゃあ、俺達も帰るね」


「うん、退院パーティーしようね。後さ、氷雨君、ちょっと話せないかな?」


「いいよ。兄さん、先帰ってて」


「おう、じゃあな」


氷河君と時雨君が帰って行った。


「じゃあ、また後でね。月」


「ああ」


星と氷雨君は、出て行ってしまった。


「おいで、待たせてあげるから」


美咲さんが、俺を二階に連れていく。


「ここで、待ってたらいいよ」


スタッフルームに案内してくれた。


「星君が来たら連れてくるから。お酒でも飲む?」


「いえ」


「じゃあ、コーヒーとお水持ってくるよ」


美咲さんが、降りていく。


不安だけが、降り積もっていくのを感じていた。



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