結婚式あげない

栞さんが喜んでる。


椚さんが、一旦下がって美咲さんに何かを渡した。


「おめでとう、これ俺からだよ。栞ちゃん、麻美ちゃん」


そう言って、花束とワインを差し出した。


「ありがとう、詩音」


栞さんは、泣いてる。


「結婚できるのか?すごい、嬉しい」


るいが泣いてる。


「出来ないよ。だから、月とひかるさんと詩音とくぬぎちゃんが証人。」


「それで、呼んだのか」


「そうそう。後、僕。暫くこの町離れるから」


「えっ?俺の仕事はどうなるの?」


月が、驚いた顔をしてる。


「だって、麻美の親に三日前に話したら麻美を連れて帰るって話しされててね。ちょっと、いなくなるから家の風通しとかよろしく。」


「暫く給料なしだな。」


「まやたく君の結婚式終わったら、いったんいなくなるから。それまでに、絵はたくさん書いておくよ。月のお給料は、振り込むから」


「どれくらいいないつもり?」


「とりあえず、年内は帰ってこないと思ってて欲しい。」


「そうか」


月は、寂しそうな顔をした。


「許されないの何て最初からわかってた事だから、仕方ないよね」


「いないのは、寂しいです。」


「星君まで、そんな事言って。じゃあ、12月25日にあのツリーの前で再会しよう。僕と麻美が、許されたらの話だけどね。月が、家の掃除してる時に麻美の両親きたらよろしくね」


「マジで言ってます?」


「マジですよ」


「わかったよ」


月は、苦笑いを浮かべた。


「ケーキ食べよう。」


「カットしてきます。」


椚さんが、ケーキを持っていった。


「栞ちゃんは、真剣なんだね」


「当たり前だよ。反対ばっかりされるから」


「ごめんね。私の両親が信じてくれないから」


麻美さんは、あまり話さないけれど今日は少しだけ話してくれてる。


「男が好きになれないって言ってもわかってくれないから仕方ないよ。」


「逃げたら、許してもらえるの?」


「わかんないけど、お母さんぐらいは許してくれるでしょ?」


ケーキを持ってきてくれた。


「いただきます。」


椚さんのケーキは、美味しい。


前に作ってくれたのより美味しい。


「美味しいね」


「うん」


麻美さんは、幸せそうに笑ってる。


左手の薬指に大きなダイヤモンドの指輪が光ってる。


「栞、結婚式あげない?」


「えっ?」


突然、月が言った言葉に驚いた。


「ここにいる6人であげないかな?」


「いつ?」


「全部が解決した時」


「俺も?」


美咲さんも驚いてる。


「全部が解決って、どういう意味?」


「それぞれの全部が解決したらだよ。いつになるかわからないけど、いつか結婚式しようよ。もっと人が増えるならそれでもいいから。」


「どうして、結婚式したいの?」


「それは、やっぱり気持ちが違うと思うんだよ。」


「うーん。悪くないかもね」


栞さんが笑った。


「でも、詩音はいいの?」


「俺は…。椚とまだ付き合ったばっかりだから」


「でも、恋愛って長さじゃないよね?」


「結婚式ってなるなら、いろんな人呼ぶんだろ?俺は、よくても椚が…。」


「俺は、いいですよ。」


椚さんは、笑ってる。


「詩音の気持ちだよ。月は星さんに、プロポーズしてる。僕は、麻美に今日話した。詩音は、これが最後にしようとはまだ思ってない?」


美咲さんは、少し考えてる。


「俺は、しーちゃんが最後だと思っていたから。この先、誰とも付き合わずに歳をとって死んでいくものだと信じて疑わなかった。だけど、優君の気持ちにれて優君と付き合ってまだ少しだけど…。俺は、優君が最後の相手でいいって思ってる。駄目かな?」


椚さんは、泣いてる。


「店の人達に、色々言われてるよね。それでもいいの?」


「俺は、詩音さんと居たいんです。詩音さんがいない未来は、いらないです。詩音さんの傍にいれないなら、働いていても生きていても、俺にとっては意味のない人生なんです。」


美咲さんは、柔らかい笑顔を浮かべた。


「まだ、付き合ったばかりだから結婚なんて言えないけれど。俺の人生の隣に居て欲しいのは優君です。」


そう言った、美咲さんの手を握りしめて「はい」って頷いて泣いていた。


僕と月も泣いていた。




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