【完結済】ふたりの愛らぶyou【下】

三愛紫月

突然の来客

「大丈夫ですか?」


俺に、フラッともたれかかった。


「おせち作ってないだろ?」


お酒飲みすぎだよ。体が冷たい。



「どうぞ」


俺は、家にあげた。


「美咲さん、大丈夫?」



「おせち持ってきたよ」


そう言って、美咲さんは重箱をあけてる。


「嬉しい」


星は、目をキラキラさせてる。


「月君、会いたかったよ」


美咲さんは、泣いて俺に抱きついた。


「栞の所に行ったんじゃ?ってか、椎名さんと会ってたんじゃないんですか?」


「栞ちゃんの所にも家にも帰りたくなかった。しーちゃん所には、ちゃんと行ってきたよ。おせちを店まで取りに行ってから、ここにきたんだから」


「僕達の為に、こんな豪華なおせちを用意してくれたんですね。」


星は、取り皿を取りに行った。


俺は、美咲さんに抱きつかれたままだった。


星が、ビールと取り皿を持って帰ってきた。


「男好きってバレてるからいいかなって思って。朝からずっーと彼女の話聞かされてたから、飲み続けてたから言ってしまったんだよ。好きって」


美咲さんは、そういうと俺から離れた。


星から、ビールを受け取った。


「そしたら、しーちゃんなんて言ったかわかるか?」


俺と星は、首を横にふった。


「それじゃー。キスぐらいしてやってもいいよ。昔から、ずっと好きだったんだろ?って…。そのかわりしたら、もう俺の事忘れて。困るからだって」


俺は、少々苛々していた。


「渉みたいな台詞だな」


口に出してしまった。


「渉って誰?」 


美咲さんが、首を傾げてる。


「これです。」


星が、DVDを見せた。


「最後のシーンだけ見ます?」


「待って、それで俺は、その映画の話わからないよね。全部見ていい?」


「はい、どうぞ。かなり時間かかりますけど…よければ見てください」


そう言って、DVDを再生した。


終わった頃には、夜中になってた。


「月君、見た?俺に似てた。」


俺と星は、美咲さんがくれたおせちを食べながら飲んでいた。


「言ったでしょ?渉の台詞だって」


三部作の最後、明日結婚する渉に瑞希が頑張って気持ちを言うのだ。


星が、台詞を真似る。


「キスする?それとも抱かれたいの?どっちでもいいよ。好きにして!そのかわり、それ終わったら俺の事忘れて。瑞希が、そうだってバレたら困るから。これからも、友達でいなくちゃね?」


「腹立つな、渉」


俺は、その台詞を聞いてまた渉への怒りが沸き上がってきた。


「本当にムカつく。何、渉。俺が言われた言葉と似てるんだけど。」


「いいましたよね?」


「聞いてたよ。」


美咲さんは、泣き出してしまった。


美咲さんが来た頃に、一度やんでいた雨はまたいつの間にか降りだしていた。


「そろそろ雪かな?」


星がカーテンを開けてる。


「これ、俺達に作ったんじゃないですよね?」


「うん、しーちゃんと食べようと思ったのに忘れちゃったんだ。」


そう言って、美咲さんはテーブルの上に並べてあるビールを取って飲む。


「駄目だよね。告白なんかして。」


「5年前に冗談だって言ったのが、バレてたんですか?」


「うん。だけど、最近は月君だと思ってたって。友人であり仲間として、美咲を好きだし心配してるけど…。そんな風には、見れないからって。とにかくサクッと終わらそうよって、揚げ物かな?俺は?サクッって、ハハハ」


美咲さんが、笑って泣いてる。


「これだ。美咲さん似てる」


星が、スマホからさっきの音楽を再生した。


♪友達なんて都合よく使って。


どうして、引き留めるの?


好きじゃないくせに、抱き締めてきて


一緒にいていいよって笑うの?♪


始まりから、美咲さんを歌ってる。


美咲さんは、星からスマホをもらって見ながら聞いてる。


聞きながら、泣いてる。


沢山、泣いたらいいんだよって思った。


10年分、俺と星の前で泣いていいんだよ。


美咲さんは、体育座りしながらスマホを持って泣いてる。



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