Perforate

水野匡

1.

卒業式と修了式を終え、一つの区切りである三月を迎えた。

暦の上ではすでに春となっているが、ここ北海道では厳寒が残る冬の様相を呈している。

 真冬に比べれば十分穏やかとなったが、それでも吹く風は冷たく、今日も雪が世界を塗りつぶす。

 服装に関する校則が厳しい私の学校でも冬だけは例外で、外套と靴は防寒を優先して選んでよいことになっている。

 もっとも、親元を離れ暮らしている私にとって縛りの多さはありがたいものである。親戚から援助してもらっている私には余裕がない。だから、制服で完結するこの学校はちょうどよかった。

 とはいえ、それは今私が制服を着て外を歩いていることとはあまり関係がない。

 すでに学期は終了し、今は冬休み。本来制服に袖を通すことのない期間。しかし私は制服を身にまとい学校へと向かっていた。

 理由はひとつ。ある人物に会うためだ。

 校門を通り校舎へ入る。廊下を歩きながら、休み期間も出勤している先生や部活動中の生徒に会釈する。

 目的の場所は図書室。休み期間中は閉まっていて鍵がかかっているが、内部に用事があるわけではない。

 私が硝子の扉越しに手を振ると、彼女はこちらに気づいたようだ。

 彼女はこちらに向かって走ってくる。そして扉をすり抜けると、私の前で止まった。

刹那せつなさん、今日も来てくれたのね。毎日ありがとう、来てくれて」

 私の名を呼ぶ彼女は、人間ではない。いや、もっと正確にいえば、生きる人間ではない。

「いいよ、そんなこと。私も咲良に会いたかったから」

 釈嵐咲良しゃくらんさくら

 彼女は“幽霊”だ。

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