ある誕生日の出来事

梛狐

ある誕生日の出来事

私は太宰治だ。

今日は休みをもらっているのだが、私の部下の敦君から探偵社に来て下さいとの連絡があった。

せっかくの休みなのに一体何事だと思い、私は探偵社に向かった。

少し興奮気味だったので、一刻も早く行かなければいけないのかもしれない。

ただ1つ気になることがある。

数日前から皆がそわそわしているように見えた。

特に国木田君は変だった。

それも関係しているのだろうかと考えている内に探偵社に着いた。


扉を開くと……


「太宰さん、お誕生日おめでとうございます!」

「太宰、お誕生日おめでとう!」


社長・探偵社員の皆からそう言われ、突然の事で私は驚いた。

「えっと……此れは何なんだい?」

「実は……太宰さんのお誕生日をお祝いしたくて、皆さんと準備していました。……駄目だったでしょうか?」敦君が少し申し訳ないように聞いてきた。

そうだ……今日は私の誕生日だ。

「敦君、先刻の態度は申し訳なかったね……。駄目じゃないよ。ありがとう」

「それなら良かったです! 太宰さん、実は……贈り物以外に特別なお客様も呼びました!」と敦君が興奮気味なって言った。

「其れは、一体誰なんだい?」と私は不思議に思った。

すると……


「太宰君、お誕生日おめでとう!」

「太宰、誕生日おめでとう!」

「太宰さん、お誕生日おめでとうございます!」


「えっ!? これは、驚いたよ。森さん、中也、姐さん、芥川君、銀ちゃん、樋口ちゃんも来てくれてありがとう」

私は思いも寄らないお客に驚いた。

「太宰君、私達ポートマフィアから君への贈り物だよ」

そう言われて森さんから受け取った贈り物が、カサブランカを主に使っている花束だった。

「……一体これは、何か意味があるのでしょうか?」

私は不思議に思い聞いた。

「カサブランカの花言葉は純粋や高貴とかがあるが、祝福という言葉もある。今日は手前の誕生日だから、祝福という意味を込めてその花束にしたんだ」

中也が説明してくれた。

「説明ありがとう。中也ってそんなに花言葉に詳しかったっけ?」

私はからかうようにして言った。

「うるせぇな!」

「まぁ……皆でどの花にするか花言葉にも注目して決めたんだけどな。特に芥川が張り切ってやがった。それに、此の花を見つけたのも芥川だ」

そう言い、中也は芥川君の方を見た。

「太宰さんの誕生日ですから」

そう誇らしげに芥川君が言う。

「見つけた時、とても嬉しそうにしてたの。可愛らしいかったぞ」

姐さんが嬉しそうに言った。

「そうですよ! 先輩可愛かったです!」

「兄さん、嬉しそうにしていて可愛かったです」

樋口ちゃんと銀ちゃんが口々に言った。

芥川君、顔を赤くして恥ずかしそうにしている。

私はそんな様子を微笑ましく見ていた。

すると、敦君が遠慮気味に言ってきた。

「あの……太宰さん。僕達からも贈り物があります。受け取って貰えますか?」

「ありがとう。一体何かな? 楽しみだね」

「太宰さん、お誕生日おめでとうございます。鏡花ちゃんと僕からの贈り物です。いつも掴み所がなく、不思議に思うこともあります。ですが僕達は太宰さんに沢山助けて頂きました。ありがとうございます。僕達は太宰さんのことを尊敬しています。これからもよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

そう言い、貰ったものはムラサキツユクサの鉢植えだ。

「俺達からも贈り物がある」

国木田君達から貰ったものはブロワリアの花束だ。

「此奴等の言うとおり、お前はいつも掴み所はなく不思議な奴だ。それに、仕事はちゃんとしないことが多く、おまけに自殺癖だ。だが、社に貢献してくれている。それは、相棒の俺だけではない。ここにいる、社長や社員全員が思っている。これからの活躍を祈っている。そして、お前の人生がこの先も良いものになるよう皆祈ってる」


「皆……ありがとう……」


「ふふっ。太宰、幸せそうな顔だね。よしっ! この辺りにして、皆でご飯を食べよう! 彼処に作ったものが置いてあるんだよ。そうそう、お菓子もあるよ!」

そう言って乱歩さんは先に行った。

他の皆も乱歩さんの後に続いて行った。

皆が行くのを見て、私も行こうとした。

すると、敦君が此方に来た。

「太宰さん、行きますよ。今日の主役がいないと駄目じゃないですか。今日は楽しんでくださいね」

「ありがとう。そうだね、敦君。主役の私がいないと駄目だもんね」

私は待ってくれている皆のところへ向かった。




ーーーー「なんて事があったんだよ、織田作」

「皆からこう思ってもらえてるとは思ってもいなかったよ」

(そうか。良かったじゃないか)

「それに、こんなにも贈り物をもらっちゃった。有り難いね」

(そうだな)

「私は君に出会ってマフィアを抜け探偵社に入って人を救い、私は光のある世界にいる。そして、色んな人に出会った。ありがとう、織田作」

(構わんさ。話してくれてありがとうな)

「ねぇ……織田作、また此処に来ても良いかな。いや……来るよ、約束だ」

(あぁ、分かった約束だ。そうだ、まだ太宰に贈り物を渡してなかったな。俺からの贈り物だ、受け取って貰えると嬉しいな)

「んっ? 此れは何だい? もしかして、織田作から私への贈り物かな? まぁ、そうでなくとも貰っていくね」

私は織田作のお墓に咲いているルリハコベを1つ摘み取った。

まるで貰ってくれと言っているように風になびいていた。


「太宰、誕生日おめでとう」


織田作……?

ありがとう。

今日は良い一日だよ。

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