王都追放 ~そっちがその気なら俺だって~

鬼憑レイ

第1話 王都追放

俺が王都追放の命令を受けてから36時間後、俺と妹のメイは3つ離れた街に到着した。


部屋を探さなければならないが、流石の長距離移動にメイが疲労困憊なため、部屋探しは明日にして今日は宿屋に泊まることになった。


「久しぶりのベッドです〜」


メイはもう限界!と言わんばかりにベッドに倒れ込んだ。

俺も体力にはある程度自信があったが、この長距離移動は流石に堪えた。


「どうして……こうなっちまったんだろうなぁ」


俺は目を細める。

王都には長年住んできた。

長く住んでいる分、思い出もその分多い。


 メイも黙って俺の事を見ていた。

お互い、大切な場所を失ってしまったようなものだ。


 俺はメイが落ち込んでいないかを確認するためにメイの顔を覗いたら......とてつもなく冷めた目をしていた。


「……兄さんがお姫様の下着なんか盗むからですよ」


過去1番と言っても過言ではないほど、メイが俺の事を見下していた。


「だからそれは誤解だって言ってるだろ!! これは立派な冤罪だぞ!!」

「お姫様の部屋に入り込んで下着を手に持ってた人がなんてこと言うんですか! 現行犯じゃないですか!」

「それは城を歩いてた時にあいつのパンツが落ちてたからそれを拾って返しに行ってやっただけだよ! 善意の行いだ!」


そう、俺はただパンツの落し物を拾って返しに行っただけなのだ!

俺は城の衛兵として城内を見回っている最中に王都に住んでいる姫、アイギスのパンツを発見したのだ。

アイギスだって年頃の女性だし、パンツの落とし物を渡されたら良い思いはしないだろうと思ったから、部屋に行って片付けようとしたんだ。

アイギスがいないことを確認して部屋に侵入したのは良かったが、運悪くアイギスが部屋に戻ってきてしまったのだ。


 そこからは流れるようだった。

アイギスに叫ばれ、衛兵仲間に捕まり、裁判にかけられ、今に至る。


「人の善意の行いをあーもいってくれちゃってね。 あいつと俺の仲なのにさ」

「どんなに仲が良くても自分の部屋で自分の下着を持ちながらクローゼット開けてる人いたら叫びますよ」

「じゃあどうしろって言うんだよ! あんな子供パンツを姫様が履いてるなんて城中に知れ渡ったらあいつ面目丸つぶれだぞ!」

「普通の人はパンツを見ただけで誰が履いてるかなんて分からないですからね?」


メイには俺の気持ちは伝わらなかったらしい。

知り合いの履いてるパンツくらい分かるだろ、普通。


「兄さんの変態話は置いておいて、明日からの生活どうするんですか?」

「個人的には置いておきたくはないが、これも決めなきゃ行けないよなぁ……」


当たり前の話だが、生活をするにはお金が必要だ。

王都を追い出された俺たちは家はもちろん、職も失った。

ずっと宿屋で生活するわけにもいかないし、早急に家を借りる必要がある。


「家に関しては王都で稼いだ給料で暫くは何とかなると思う。贅沢な部屋は借りられないけどな」

「家は大丈夫だとして、仕事はどうするんですか」

「暫くはクエストを受注しようかなって考えてる。給料制の仕事より即納の方が色々便利だからな」


 ここには二種類の職業があり、一つは王都でやっていたような固定の職業についてある程度の期間仕事してまとまった給料をもらう仕事。

もう一つはクエストのような単発の仕事をこなして、その分の報奨金を逐一受け取る仕事だ。


「クエストだけで大丈夫なんですか? クエストみたいな不安定な収入源だけじゃ不安です」

「そこは安心していいぜ。ここみたいな郊外には王都の警備兵は中々来ないから雑務やらモンスター駆除なんか山ほどあるから、クエストが尽きることはないんだ」

「そうですか……。それでは暫くは様子見しようと思います」


 仕事はしばらくはこれでいいとして......あとは。


「あと、お前の学校も決めないとな。ここにも学校はあると思うし」

「いえ、私もクエスト手伝いますよ」

「学校はいいのか?」

「王都では専門的な授業を受けてたので、一般教育の学校ではもう習うものは無いです。それに、私の魔法は兄さんの役に立つと思いますよ」

「あ、そう……」


そういえば前にメイと『普通の学校なんて通う意味が無いわ』って話で喧嘩したなぁ。

王都でも結局魔術専攻の授業受けてたっけ。

こんな郊外じゃ、専門的な授業をしている学校はあるはずもないな......。

俺的には普通の学校に通ってもらいたいんだけどな。


「とりあえず、明日起きてから家を探しますよ。そのあとクエストです。いいですね」

「メイに仕切られるのは何とも言えんが、そうだな」

「あとあなたはちゃんと反省してください」

「だから俺は変なことはしてないって!」


そんなこんなで、俺とメイの新生活が始まっていった。

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