第10話 ずっとこれからも
本話が最終話となります。再び誠視点でお送りします。最後までお付き合い頂きありがとうございました。
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「な、なるほど……。やっと理解できましたわ」
「まさか誠もこっちに来てたなんてね~。全然気が付かなかった」
咲季の話を聞き終わり、頭の中で整理する。隣では長く話して喉が渇いたのか、咲季がカルピスを飲んでいた。俺に会うために、自分の進路を変えたのか……。我が妻ながら行動力がえげつないな。
「でもまあこの1年頑張ったおかげで今は毎日がすっごく楽しいよ~」
「そうだなー、俺も咲季と高校生活を送れて前より充実してる」
昔も楽しかったと言えば楽しかったが、物足りなさも感じていた。彼女がいなかったというのがその最たる理由の1つだが。デートなんてした事無かったなーと、当時をしみじみと思い出す。
彼女が出来たのは大学からで、そこでの咲季と過ごしたたくさんの思い出も随分懐かしく感じる。
「これから2年間は高校生として咲季と付き合えるんだな」
「そうだね~、今だからこそ出来る事もあるしね~。取り敢えずさ、どうよ? 私の制服姿は」
「最高に可愛かったです」
出会ったのは大学だし嫁に高校の制服来てくれなんて頼めないしな。咲季の制服姿が拝めただけでも過去に来た意味はあるかも。
それ以外にも大学時代には出来なかったことも沢山出来そうだな。
けど、何だろうな。物凄く楽しい生活になりそうなのに少しだけ寂しさを感じるのは。
少し考えて、その原因に思いついた。俺は咲季と夫婦になりたいんだ。恋人として過ごした時間も掛け替えのないものだったけれど、それ以上に結婚してからの夫婦としての2カ月間がそれまでよりも幸せに感じてた。その生活を早く取り戻したいんだ。
あの穏やかな日常に戻りたい。
「なあ咲季。俺達、結婚しないか?」
気が付けば、無意識にそう零していた。その言葉に咲季は驚きつつも照れたのか、顔を赤くして俯いた。その瞳は少しだけ潤んでいるようにも見える。そして咲季は逡巡した後、俺の胸に飛び込んできた。そのまま背中にまで腕を回してきたので、同じように抱き返す。
「私達もう夫婦でしょ~。今更だよ~」
少しだけ声が震えていた。どうやら必死に取り繕うとしているらしい。俺は咲季の背中をさすりながら宥めるように思いの丈を語る。
「そうなんだけどな、改めて咲季と一緒に居たいなって思ったんだよ。朝起きて『おはよう』って言い合ってのんびり過ごす。雑談しながらご飯を食べる。休みの日は2人でテレビを見たりゲームをする。そうやって今までやってきたまだ始まったばかりの生活をまた送りたいなって。今は高校生だから同居出来るかは分らないけど、卒業したら一緒に住んで籍もいれようぜ」
顔は見えないが、感極まったのか咲季は泣いているようだった。
「うんっ、そうしよ! 私も誠と一緒に居たい」
咲季の腕に力が入っているのが分かる。それに答えるように俺も抱きしめる力を強くする。そのままどれぐらい経っただろうか、次第に落ち着いた咲季は『それじゃあさ、』と前置きし、1つ提案をしてきた。
「私達、これから働かないとね?」
「あー、お金貯めないと卒業後に独立出来ないか」
「そーそー。だからさ、一緒にバイトしよ」
「やりたいのは山々だけど、部活あるし出来るかなー」
「そこはほら、何とか時間やりくりしようよ。それかフリーランスで仕事受けるとか」
お金が必要なのは分かるけどフリーランスなんて出来るのか? 専門知識とか要ると思うが……。
そこは考えがあるらしく、咲季はふふんと得意げに説明した。
「誠は未来でシステムエンジニア、私は経理でデータ処理が出来るんだよ? 専門知識あるじゃん」
確かに…………あるじゃん。就職してから2年は経ってるからもうそこそこの知識量があるし実務経験だってしている。パソコンさえあれば今すぐにでも始められそうだった。
「まあ一応今は高校生だからそもそも出来るのかとか調べてからな? 無理だったらバイト探すか」
「そうだね~」
これからまた忙しい日々になりそうだと想像してつい顔が緩む。
「楽しい毎日になりそうだな」
「これまで以上にねっ」
腕を少しほどいて咲季の顔を見てみると、彼女もまた柔らかな表情をしている。
そのまま2人見つめ合い、くすくすと笑い合う。
笑い終えたのか、咲季が思い出したように口を動かす。
「それじゃあ改めまして、
「こちらこそ、よろしくお願いします」
にこりと笑ったあと、咲季は目を閉じた。これは、あれか。そういえばまだこっちではしていないな。
ゆっくりと顔を寄せ、俺達は何百何千回目かの初めてのキスをした。
タイムリープした先には本来居るはずのない嫁がいました。しかも俺達は付き合っているらしい 色海灯油 @touyuS08
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