第7話 食べ過ぎにはご注意を
こうして晴れて恋人になれたけど、まだ終わりじゃない。むしろこれからだよね~。
誠と付き合えたらやりたいことなんて山ほどある。大学でもやったことだけじゃなくて、高校生だからこそ出来ることもしないとね~。
まずは、制服デート。何回か制服で遊んでいる気はするけどまだ付き合っていなかったからノーカンで。それに文化祭や体育祭もあるし、お弁当を作って食べてもらいたい。
久しぶりの愛妻弁当ですっ!!
大学から6年以上料理をしている私をなめないでよね。
もっともしばらくは夏休みで部活以外で学校に行かないんだけどね~。
それに家族への挨拶もいるよね。いずれ結婚するんだし面識を持つのは早いほうがいいかも。機会があったら誠の家に遊びに行こっと。
夏休みも半ばになったけれど、まだ誠とデートに行けていません。主な理由は部活かな。休み明けに大会があるから最近は今までより練習量も多くなって部活終わりには皆ヘトヘトになっている。
そんな中誘うのは忍びない。というか私も疲れている。
相変わらず下校だけは一緒にしているからそれだけが救いかな~。
今日は練習試合で他校に来ています。その場所はなんと本来私が行く予定だった学校の北校です。今私たちが通う西校よりも偏差値の高い学校で、市内では上位に入る進学校。
そこに通っていた私は実は結構優秀です!
校舎を見るだけで懐かしの高校時代が脳裏に蘇ってくる。
……こっちの高校も楽しいことはたくさんあったなぁ~。
今では違う高校だから昔友達だった子も赤の他人になってしまったけれど、それ以上に今誠と居られて充実しているから後悔はないかな~。
さて、本題の練習試合ですが、とってもと~っても盛り上がっています。2校の実力が同じぐらいだからか、取ったり取り返したり攻防が激しい。1つ1つのラリーが長くて見応えがある。
その中でも誠はよくやっていると思う。3年生が引退してからはAチームに選ばれていて今も試合に出ているけど、相手の早い攻撃にぎりぎりついていっている。
何セットかゲームをして今日は解散となった。現地集合現地解散だからこのまま誠と自転車で家まで帰るだけ。けどせっかくいつもと違うところに来たんだから今日ぐらい寄り道しても良いよね。今は2時過ぎだから時間的にも余裕はあるしね~。
「誠、どこかでご飯食べに行こ~」
「いいよ。どこ行こっか」
遅くなったけど、昼ご飯を食べに行きます。行く候補はいくつかあって、その中で誠はたくさん動いてお腹空いているだろうから、
「ラーメンとか定食屋さんなら近くにあるよ」
「いいね、どっちにしようか」
「今ならラーメンは麺大盛り無料。定食屋さんならご飯おかわり無料。値段は同じぐらいかな~」
「滅茶苦茶詳しいじゃん」
「さっきたくさん調べたからね~」
ほんとは3年間通い詰めていたからだけどね~。
「ますます悩むな。咲季はどっちが良いとかある?」
「ん~私は誠と行けるならどっちでも良いかな」
「そ、そっか。…………じゃあ定食にしよう」
「おっけ~」
自転車を漕いでから5分ぐらいで目的地に到着。昔は部活帰りによく行った、民家を改築して建てられたお店。外観は完全に古民家だね~。とても落ち着く雰囲気のお店で、確かご夫婦で経営していた気がする。
扉を開けるとチリンチリンと鈴の鳴る音と「いらっしゃいませー」という店員さんの声が聞こえた。
和を基調とした店内の奥に佇む2人掛けのテーブルに腰掛けてメニューを見る。
「悩むな……唐揚げか生姜焼きか……」
「じゃあ私生姜焼き定食頼むから誠唐揚げ定食頼みなよ。そしたら少しずつ分ければ2つとも食べれるよ~」
「いいね、そうしよ」
しばらくしてテーブルに料理が運ばれてきた。白米に味噌汁、メインのおかずが揃った定食。メニューからしても家庭料理に通じる物だけど、味付けが絶妙で私じゃここまで美味しく作れないんだよね~。
私が密かに悔しがっているのはつゆ知らず、誠は黙々と箸を進めていた。相当お腹が減っていたようで、もうお茶碗は空になっている。
「おかわり貰ってくる」
「いってら~」
そこでまだおかず交換していない事に気が付いて、小皿に生姜焼きを取り分けておく。と、誠が戻ってきた。
だけど誠が抱えているそれを見て、私は思わず目を丸くした。
「え、日本昔話?」
「『山盛り』だってさ。こんなに食べれるかな……。あ、生姜焼きありがと」
誠が持ち帰ったお茶碗には、文字通り山のようにご飯が盛られていた。ぽろぽろと崩れそうだが、誠は器用に零さずに食べている。
唐揚げもゲットして私は美味しく完食できたけど、誠は苦しそうにしている。あの後2杯もおかわりしたんだから当たり前だよね~。
「調子乗りすぎた……苦しい」
「一応私は警告してたからね~」
呻きながら自転車を漕ぐ誠に自業自得だと返す。合計3杯食べた後まだ食べるか悩んでいた誠に『もうやめといたら』と警告は出したからね~。
「でも美味しかったよ。ちょっと遠いけどまた来たいな」
「だったら時々部活終わりに行く?」
「是非とも」
こうして夏休みは遠くに遊びに行くことはほとんど出来なかったけれど、部活終わりに誠とご飯を食べに行く習慣が出来た。
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