第3話 クリスマス

 その日の放課後、部活動があったのだが、そこでまた驚いた。

 俺は当時からバレー部に所属していたのだが、なんとそこに咲季もマネージャーとして所属していた。その働きぶりはとても優秀で、バレー部の面々からも絶大な信頼と人気が見て取れた。


 そんな咲季に不甲斐ないプレーは見せたくなかったため、昔以上に真剣に練習に取り組んだ。

 そして意外なことに、高1当時よりもなぜか上手くなっている。大学まで続けていた経験値が今の自分に還元でもされたのだろうか。



「どうしたのさ~今日は。なんかいつもよりキレがあったよ。ディグは出来るしインナーにも打ち込んでたし」


 部活終わり、咲季と下校しているときそんなことを聞かれた。ディグとはスパイクレシーブのことだ。大学生より球速が遅いからまだ反応しやすかったな。スパイクのコースも昔散々練習したし。


「日頃の成果が出たんだろ」

「おお~! これはメータージャンパーになる日も近いね」

「それはまだ遠いかなー」


 技術力は上がっても体は高1だ。まだしばらくは最盛期のように高くは跳べないだろう。


「まあでもいつかなれるようにがんばるよ」

「応援してる」


 少し照れくさくて、ありがと、とそっけなく返し話題も逸らすことにした。


「今更かもしれんけど、なんでバレー部のマネさんなんだ? そんなにバレー好きだっけ?」


 記憶が確かなら、咲季はバレーよりもバスケの方が好きだったはず。

 テレビでバレーの国際大会を見たときは大盛り上がりしたが、やりたいとは言っていなかった気がする。

 だから単純に気になったので聞いてみた。


「え!? いや~それは、バレーが好きだからだよ?」


 なんだ、そうなのか。プレーするのではなくサポートとかならいいのか。

……若干早口なのは気のせいだったか?



「そー言えばもうすぐクリスマスだけど、当日どうする~?」


 今度は咲季の方から話題を変えてきた。 ……もうそんな時期か。

辺りを見回すと、店先や広場には華やかな装飾がされていた。中にはイルミネーションが設置されているところもある。

 今年のクリスマスは何をしようか、と一瞬考え、


 『いつも通りで良いんじゃないか』


 そう言おうとして慌てて口をつぐむ。咲季が怪訝そうにこちらを見てくるが、何でもないと誤魔化す。


 大学生の頃はよく色んな場所に行ったが、社会人になってからはどちらかの家でのんびり過ごすようになっていた。

 今年もそれで良いだろうと思ったが、今は高校1年生だということを思い出した。


「そうだな、行きたいところとかあるか?」

「う~ん、行ってみたいところは色々あるんだけど、どこも人多そうじゃない? いっそのこと家でまったりするのもありかも」

「そしたら延々とアニメ鑑賞になりそう」

「それいいかも。これを期にと○ドラ全部みたい」


 なんかこれ、家で過ごす流れになっていないか? 華の高校生なのにそれでいいのだろうか。


「ほんとに家でいいのか? せっかく高1のクリスマスなのに」

「まぁ確かにもったいない気はするけど、誠人混み嫌いでしょ?」

「あまり好きではないけど……」


 人混みで無ければいいのか。なら人が少ないところに行けば良い。

 

人が少ない場所か……どこか無いだろうか。

温泉などはゆっくり出来るだろうがもう予約がいっぱいだろう。うーんと頭を捻り、結局思い浮かばなくて咲季の家で過ごすことに決まった。


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