第2章 銀鼠の獣 (夜坂ケント編) 後編
あれから数週間後…………バーベキューの日がやってきた。
鹿崎咲也
「よーし!みんな楽しみにしていたか?これから始めるからな!」
笛花奏
「火の取り扱いには気をつけてね!」
先生方の一言が終わりバーベキューが始まった。
月川タクト
「よーし!久しぶりのバーベキューだ!今日は楽しむぞ!」
古金ミカ
「おう!そうですな!盛り上がっていきまっせ!」
星野シキア
「バーベキューの肉は学校側が用意してくれたのね。」
柊木アイ
「うん。柳原先生がたくさんのお肉を用意してくれたんだ。今日は来てないけれど今度お礼を言わなくちゃ。」
4人は楽しそうに会話をしている。
一方で夜坂さんとナナはあまり、楽しそうな様子は見られない。4人のところへ誘おうとすると、妙な話をしていた。
来川ナナ
「それで……大丈夫なの?」
夜坂ケント
「ああ……今のところ……だけどな。」
来川ナナ
「そう……でもやばい時はちゃんと言ってね。私だけではなんとかできないかもしれないけれど……。」
夜坂ケント
「……わかってる。」
私が話す隙がないまま2人が会話をしていると、見慣れない先生が2人を呼んだ。
??
「お〜。2人してどうしたの?せっかくのバーベキューなんだから楽しみなよ!」
夜坂ケント
「か……神谷先生……。」
思い出した。この人は神谷乙音(かみや おとね)先生だ。別クラスの担任だからあまり覚えていなかったんだ。
来川ナナ
「そ、そうですね。バーベキューを楽しみます!」
夜坂ケント
「わ……わかりました。」
神谷乙音
「よろしい!では楽しみましょう!」
鹿崎咲也
「乙音!今日はEクラスとKクラスのバーベキューなんだから、ほっといてやれよ!」
神谷乙音
「いいじゃない!私、今日は授業無いし!」
鹿崎咲也
「やれやれ……まぁ、教員の目は多い方が良いか……。乙音もみんなの様子見てやれよ。」
神谷乙音
「了解。」
こうして、ナナたちもバーベキューに合流をした。
柳原先生の調達した肉はかなりの絶品だ。一切れ口に入れるとすぐに口の中で肉がとろける。美味しいの一言しか出ない。
月川タクト
「美味しい!さすがは富豪の柳原先生だけあるね!」
古金ミカ
「でしょ!相当なお肉を用意してくれたわね!」
星野シキア
「…………?……アイはさっきからたくさん食べているわね?」
柊木アイ
「いや……まあ……美味しいからね。黙々と食べたいくらいだよ。」
柊木アイ
「……こんな料理は初めてだよ………………。」
真瀬莉緒
「……?なんか言いました?」
柊木アイ
「え?いやなんでもない。ごめんね。変な感じにしちゃって。」
真瀬莉緒
「いえ、大丈夫ですよ。」
バーベキューは大盛り上がりだ。
途中から合流した、ナナたちも……。
来川ナナ
「うん。美味しい。柳原先生様々ね!」
夜坂ケント
「ああ、美味い。」
2人も喜んでいる。けれど……あまり楽しそうとは思えない。
やっぱり夜坂さんのことで色々と考えているのかしら……?
そう思いながらも私たちはバーベキューを楽しんだ。
数時間後……
楽しいバーベキューも終わりに近づいてきた。
日も暮れ始めたため、みんなでバーベキューの道具を片付け始めた。
そしてひと通り片付け終わり、先生方から終わりの挨拶が行われた。
鹿崎咲也
「みんな!今日は楽しかったな。企画してくれた生徒たちに感謝だな。俺も楽しかったぞ!」
笛花奏
「このあとは各自で自由にお菓子パーティなどで楽しんで明後日からの授業に取り組んでね!」
生徒一同
「はーい!」
そう言ってみんなはそれぞれの仲良いグループに分かれて二次会に行った。
そして私たちも月川さんたちの部屋に行って、お菓子パーティを始めることにした。
六郭星学園寮 タクト・アイの部屋
お菓子パーティに参加するのは私と莉緒。月川さんに柊木さん、星野さんと古金さんだ。
部屋に入るやいなや古金さんたちはお菓子の袋を開け始める。
真瀬莉緒
「それじゃあ改めて始めましょう!」
古金ミカ
「おー!いいね!それじゃあ……カンパーイ!!」
古金さんが音頭を取ると、全員が乾杯をあげる。
月川タクト
「しかし、楽しかったな……バーベキュー。またこういうことをやってくれ、アイ。」
柊木アイ
「そうだね……。うん。考えておくよ!」
星野シキア
「……ナナも来たら良かったのに。」
古金ミカ
「そうね。でもどこ行ったんだろうねー。ケンケンとどこかに行ったもんねー。」
月川タクト
「け……ケンケン?」
古金ミカ
「ケンケンはケンケンだよ。ちなみにタクトくんはタックーだから。」
月川タクト
「タックー……!?あだ名で呼ばれるのは初めてだ……。」
古金ミカ
「まあまあ、そんなことよりお菓子食べようよ!」
柊木アイ
「ミカの言う通りだね。よし。いただきます!」
柊木さんはそう言うとお菓子を食べ始める。
それを見たみんなもお菓子を頬張る。
星野シキア
「うん。美味しい。みんなで食べるのもいいのかもね。」
古金ミカ
「そうですなー!私もみんなで食べるのがいっちばん美味しいもんですな!」
月川タクト
「ああ、ケントのやつも来ればよかったな。」
そう言いながら和気藹々とお菓子を頬張りながらみんなで雑談をしていた。
その時、ガチャリと部屋のドアが開く。そこにいたのは夜坂くんだった。
真瀬志奈
「よ……夜坂くん?」
月川タクト
「お、ケントもお菓子パーティに参加するのか?大歓迎だそ!」
夜坂ケント
「いや、パーティに参加するわけではない。真瀬……。練習するぞ、作曲の。」
真瀬志奈
「さ、作曲ですか!?今から……?」
夜坂ケント
「ああ、行くぞ。」
私を連れていこうとする夜坂くん。さすがに見かねたみんなは……
月川タクト
「ケント。いくらなんでもいきなり過ぎないか?」
柊木アイ
「そうだよ。期限までまだ半年以上はあるんだよ。」
夜坂ケント
「けれどな……時間がないんだ。」
星野シキア
「時間……?どういうことかしら?」
夜坂ケント
「それに関しては…………言えない。」
古金ミカ
「ケンケン……。それはダメだよ。時間がない理由を言わないのなら無理して志奈っちを巻き込むことはできないよ。」
夜坂ケント
「しかし……。時間が……!時間がないんだ!」
真瀬志奈
「あ、あの……私は構いませんけれど……。」
真瀬莉緒
「姉さん?良いの?僕たちは……なんというか、ケントの無理矢理に巻き込まれているだけにしか見えないんだけど……。」
真瀬志奈
「かまわないわ。夜坂くんが満足するなら……。」
夜坂ケント
「それじゃあ……早速……始めるか。」
そう言うと古金さんがとあることを言った。
古金ミカ
「ねえねえ、もしそれならさあ。ちょっとだけ作曲の成果を聞かせてよ!」
真瀬志奈
「さ、作曲ですか?そ……それは……。」
夜坂ケント
「……それは…………仕方ない。少しだけだぞ。」
真瀬志奈
「え、良いんですか?」
私は目を丸くしながらそう聞いた。
夜坂ケント
「仕方ないだろ……月川。ラジカセ貸してくれ。」
月川タクト
「あ、ああ……」
月川さんは慌てて、ラジカセを用意してくれた。
夜坂ケント
「それじゃあ、流すぞ……。」
夜坂さんは私の許可を得ずにデモ曲を流す。
デモ曲が終わり……みんなの反応を見ると……
月川タクト
「おお、良い曲じゃんか!」
柊木アイ
「うん。良い感じの曲だね!」
星野シキア
「これなら……きっと良い曲になるわね。」
古金ミカ
「パチパチパチー!お姉さん感動しちゃうよー!」
みんなの反応はとても良い感じだった。
夜坂くんも満足か、表情が少しだけ柔らかくなった。
夜坂ケント
「このぐらいの曲じゃないとな……俺もこの曲を歌う人も満足しないだろう。」
顔は柔らかい表情でも言うことは厳しめだった。
柊木アイ
「でもさ、この曲……もっと改善するんでしょ?」
夜坂ケント
「ああ、そのための練習だからな……早速……………………うっ!?」
真瀬志奈
「夜坂くん!?」
夜坂くんは急に倒れ込み唸り出した。
月川タクト
「だ……大丈夫か!?ケント!」
夜坂ケント
「うう……あ…………。」
星野シキア
「まずいわね……。救急車を呼ばないと……!」
??
「だったら来川医療センターに連れて行って!!」
柊木アイ
「えっ……!?」
そう声を上げたのはナナだった。
来川ナナ
「急いで!このままだとケントが……!」
月川タクト
「今呼んでる!急いで来るって!」
月川さんが救急車を呼んでくれた。一刻も早く、夜坂くんを病院へ運び出さないといけない。
夜坂くんがずっとうずくまっている中、私たちは励ましや、水を飲ませたりなど、できることは精一杯やった。
そうこう試行錯誤しているうちに救急車がやってきた。
夜坂くんの様子を見た救急隊員たちは急いで夜坂くんを運び出した。
とりあえずは一安心。私たちは一旦、床に座り、ナナに夜坂くんに何があったのか事情を聞くことにした。
真瀬志奈
「ナナ、夜坂くんに何か大病でもあるの?」
来川ナナ
「…………。」
月川タクト
「ゆっくりでいいよ。俺たちも理解をしようとするから。……ね。」
夜坂くんのことを聞こうとしようとした時、ふと周りを見ると古金さんと柊木さんの顔色があまりよろしくなかった。
真瀬莉緒
「古金さん?柊木さんもどうかしたの?」
古金ミカ
「いや……なんでも……いや……でも……ナナ様……もしかしてだけど……ケンケンって……。」
そう言った瞬間、さっききた救急隊員の悲鳴が聞こえた。
真瀬志奈
「えっ……。どうしたのかしら……?」
??
「ぐおおおおぉぉぉぉぉ!」
来川ナナ
「この悲鳴………………まさか…………!?」
真瀬志奈
「あっ、ちょっとナナ!?」
そう言うとナナは部屋から勢いよく出て行った。私たちもその後を追って行った。
ナナを追いかけた先にいたのは……。
??
「ぐおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!」
真瀬志奈
「こ、これは……!?」
目の前にいたのは狼とも言えない銀鼠色のモンスターらしき物がいた。
??
「ぐおおおおおおおぉぉぉぉぉ!」
来川ナナ
「ケント……!!」
月川タクト
「えっ!?」
星野シキア
「これが……ケント……!?」
真瀬志奈
「そんな……!?」
私たちは驚愕した。あの夜坂くんが……どうして……!?
??
「おい!なんの騒ぎだ!」
真瀬莉緒
「あ!中神さん!」
駆けつけてきたのは生徒会の会計の中神シンジ(なかがみ しんじ)さんだった。
中神シンジ
「これは……!?ええい!今すぐに倒してくれる!!」
来川ナナ
「あ!ダメです!」
中神さんはモンスターに襲いかかろうとした。それを来川さんは止めに入った。
中神シンジ
「放せ……!俺は生徒会だぞ!」
来川ナナ
「救急隊の方!早くケントを病院へ運んで!」
救急隊員
「は、はい!」
我を取り戻した救急隊員はモンスターの姿になったケントに麻酔を打ち、救急車で運ばれた。
運ばれる道中で、中神さんはモンスターに襲いかかろう何度もしたが、全員で止めにかかった。
中神シンジ
「くっ……逃したか……。貴様のせいだぞ!」
来川ナナ
「いえ、あの件は来川医療センターに任せると生徒会で決めたはずです。あなたはそれを無視した。それだけです。」
中神シンジ
「くっ…………うぅ…………。」
そう言うと中神さんはこの場から離れていった。
それにしても……夜坂くんにあんな姿があったなんて……。
古金ミカ
「やっぱりああなったのね……。」
真瀬志奈
「え?」
古金ミカ
「あ、ごめんねー!なんでもないよ。とりあえず先生に報告しに行こう。」
真瀬志奈
「はい…………。」
夜坂くん……。
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