第3章 赤く高い壁 (柊木アイ編) 後編
数日後……
六郭星学園 校門前
明朝。決行の日。昨日、私は鹿崎先生に許可を取り、校門の近くにきた。
鹿崎先生は柊木さんを助けに行くと言うと……
応援をしてくれた。後押しをしてくれた。とても嬉しい……なんとかしてでも救わないと!
校門に行くと、人影が6つあった。
真瀬志奈
「みなさん……!?」
そこにいたのは莉緒や月川さんたちだった。
月川タクト
「助けるんだろ。それじゃあ行くっきゃないでしょ。」
夜坂ケント
「ああ、その通りだ。俺らだってあいつを救いたい。」
真瀬莉緒
「僕はアイのルームメイトだからね。アイがいないと寂しいよ……。」
来川ナナ
「柊木さんのことを聞くと……放っておけなくて……。」
星野シキア
「ミカがあんなに真剣な表情でお願いしてきたから……でも、許せないわね。」
古金ミカ
「シキアっちょは素直じゃないんだから……まあそれがシキアっちょらしいけどね。」
真瀬志奈
「古金さん……。」
古金ミカ
「助けに行くんでしょう?だったら協力者は必要よ?アイを助けるわよ!」
真瀬志奈
「ありがとうございます……!みなさん!行きましょう!」
私たちはすぐに柊木さんの家に向かった。
柊木アイの実家
私たちは柊木さんの家に着いた。
しかし……
月川タクト
「警備が厳重だね……」
来川ナナ
「何か通り抜ける作戦はあるんですか?」
真瀬志奈
「警備員さんに直接話します。」
夜坂ケント
「それだけでいいのか……?」
星野シキア
「……!?あそこ!窓に彼が……!」
真瀬志奈
「柊木さん……!」
最上階の窓から柊木さんが見えた。
夜坂ケント
「アイは……縛られていないか!?」
星野シキア
「本当ね。……酷い。」
来川ナナ
「全くです……。親のやることじゃないわ……。」
真瀬志奈
「そうですね……許せない……!」
真瀬莉緒
「ちょっと……姉さん!?」
私は無我夢中に警備員の前まで歩いていた……
警備員
「君は……?」
真瀬志奈
「通してください。柊木アイの恋人です。」
来川ナナ
「こ……恋人……?」
月川タクト
「……真瀬さん……。本気なんだな……。」
警備員
「恋人であろうと、柊木さまの許可をとってない場合はお通しできません。」
真瀬志奈
「縛られているのに放っておくんですか?」
警備員
「…………。」
真瀬志奈
「どうなんですか!?私は……アイは……!」
??
「邪魔よ。」
そこにきたのは柊木さんの母親らしき人だった。
柊木アイの母
「アイの自由は親の私が決めること。あなたに言われる筋合いはないわ。」
真瀬志奈
「命の危険があってもですか?」
柊木アイの母
「もちろん。」
真瀬志奈
「それが……親のやることですか?」
柊木アイの母
「ええ。そうよ。」
夜坂ケント
「こいつ……!本当に親なのか?」
来川ナナ
「腹が立ってきました……!許せない……!」
真瀬志奈
「…………。」
古金ミカ
「志奈っち……?」
真瀬莉緒
「やばい……!あれは姉さんが本気で怒ってる!姉さんは本気で怒ると手が出るんだ!」
星野シキア
「え……だとしたら止めないと!」
真瀬志奈
「……。」
私は柊木さんの母親の顔にめがけて殴りそうになったとき……。
東島
「もうやめましょう。」
柊木アイの母親
「東島……!」
東島
「もう警察を呼びました。あなたはもうすぐ逮捕されます。」
柊木アイの母親
「東島……お前……!」
東島
「親といえど限度があります。あなたは坊っちゃんに少ししか食べ物を与えず、友人とも遊べない……そんな状態でよく17年も我慢してこられました。」
柊木アイの母親
「黙れ!私は最低限のことはしてきた!それに文句を言われる筋合いはない!」
東島
(今です……真瀬さん、みなさん、坊っちゃんを……!)
真瀬志奈
「……!」
私たちは全力で柊木さんの母親を押し退けて館内に入り、柊木さんの部屋に向かった。
柊木アイの監禁部屋
柊木アイ
「……。」
真瀬志奈
「アイ!!」
柊木アイ
「……。」
返事がない……まさか……。
柊木アイ
「へへ……真瀬さん来たんだね。」
真瀬志奈
「アイ!大丈夫!?」
柊木アイ
「なんとかね……。」
真瀬莉緒
「今すぐロープを外すよ!」
私たちは慌ててロープを解いた。
柊木アイ
「……みんな、お母さんのところへ……。」
星野シキア
「えっ……どうして?」
柊木アイ
「けりをつけないと。お母さんと。」
夜坂ケント
「アイ……。」
真瀬志奈
「わかりました。行きましょう。」
私たちはアイを連れてアイの母親のところに向かった。
柊木アイの実家 庭
柊木アイ
「…………。」
柊木アイの母親
「……お前……。」
そこには警察によって取り押さえられたアイの母親がいた。
柊木アイ
「……名前……。」
柊木アイの母親
「えっ……?」
柊木アイ
「あなたは名前すら呼んでくれなかった。僕の名前を。あなたは僕の名前を知っていますか?」
柊木アイの母親
「………………。」
柊木アイ
「やっぱり知らないんだね……もういいよ連れて行って。」
柊木アイの母親
「離せ……貴様……!」
真瀬志奈
「アイ!」
アイの母親は警察の腕を振り払い、アイに向かってきた。
柊木アイ
「ふん……!」
柊木アイの母親
「ぐはぁ!」
アイは母親の顔面を思い切り殴った。
柊木アイの母親
「中井!警察でしょ!あいつを逮捕しなさい!!」
中井と呼ばれた警察の人は首を横に振った。
中井雄也
「あなたは母親失格だ……!」
柊木アイの母親
「貴様……!」
アイの母親はすぐに警察に連行された。
柊木アイ
「はぁ……。」
アイはそのまま座り込んだ。
柊木アイ
「はは……疲れたね……。」
真瀬志奈
「アイ……。」
来川ナナ
「念のため救急車呼びますね。」
真瀬志奈
「ええ、お願いします。」
柊木アイ
「ミカ……君の言う通りだったよ。」
古金ミカ
「……そうでしょう。」
柊木アイ
「じいちゃん。すぐに連絡して……研究のサポートをやめると……。」
東島
「はっ……了解いたしました。」
月川タクト
「で、どうするの?学校……。」
柊木アイ
「やめるわけないでしょ。こうして友達がいるのにやめる理由なんてないよ。」
真瀬志奈
「アイ……!」
柊木アイ
「へへ……真瀬さん。僕のこと下の名前で呼んでくれるんだね。」
真瀬志奈
「ええ、アイ……!おかえり……!」
柊木アイ
「……志奈さん。ただいま……!」
そこに救急車が来て、柊木さんは救急車に運ばれた。
私たちは研究のサポートについて説明を聞くため、大広間に移動した。
柊木アイの実家 大広間
東島
「なんといえばいいのか……本当にありがとうございました。」
真瀬志奈
「いえ……それよりも……柊木さんの親がやっていた研究のサポートとはなんなんですか?」
東島
「研究の内容は私にもわかりません。」
真瀬莉緒
「わからない……とは?」
東島
「研究の内容は坊っちゃんの母親しかわからないのです。私は聞いたことはありませんが、どうやら六郭七富豪と言われている他の皆さまもサポートをしているという噂が聞いたことがあります。」
古金ミカ
「やっぱり……。やっていたのね。」
星野シキア
「そうね……あなたも七富豪の娘だったわね。」
東島
「その研究は確か……研究員の名前が確か……誤見……と言った方でしたね……。」
月川タクト
「誤見……?俺の母親の旧姓だけど……なんか関係しているのかな……?」
東島
「もはや噂でしか話せないのですが……人間を別の物に変えるという研究とは聞いたことがあります。」
夜坂ケント
「…………。」
来川ナナ
「ケント?」
夜坂ケント
「いや……別に……大丈夫だ。」
東島
「私が話せるのはこれだけです……。お役に立てず申し訳ありません……。」
東島さんが申し訳なさそうに言う……それを見て私たちは何もいえなかった。
真瀬志奈
「……では東島さん。私たちはこれで失礼します。」
東島
「はい……。これからも坊っちゃんをよろしくお願いいたします。」
真瀬志奈
「もちろんです。」
そう言い、私たちは赤く高い壁で囲まれた柊木さんの家を離れた。
来川ナナ
「……良かったですね。柊木さん。」
真瀬志奈
「はい。とりあえずは安心しました。」
夜坂ケント
「そうだな。あとは精密検査を受けてから学園に戻れるかだな。」
月川タクト
「戻ってくるさ。アイは絶対に。」
真瀬志奈
「はい!戻れます!きっと……!」
六郭星学園 Eクラス教室
1週間後……アイが戻ってくることになった。
アイはまだ教室にはいない。
真瀬志奈
「……色々ありましたからね……。遅れることもあるわよね。」
そこへ古金さんがやってきた。
古金ミカ
「志奈っち〜。今日だね〜アイの復学。」
真瀬志奈
「ミカ……そうだね。もうすぐね。」
あれ以来、ミカと話す機会がたくさん増え、下の名前で呼べるようになった。
古金ミカ
「アイは……まだ来てないわね。」
真瀬志奈
「うん。……そうだ!せっかくだからトランプで勝負しない?アイ来るまでの間でいいから!」
古金ミカ
「お、いいね!それじゃババ抜きで勝負ね!」
私たちはババ抜きで勝負をすることになった。
ミカとの勝負……負けられない!
真瀬志奈
「ふう。私の勝ち……!」
古金ミカ
「あちゃ〜。負けちゃったか……まあ仕方ないや!楽しかった!」
真瀬志奈
「こちらこそ!楽しかった!」
古金ミカ
「…………。」
真瀬志奈
「…………。」
互いに沈黙が進む……
真瀬志奈
「ミカの方は研究のサポートはまだやるの?」
私は思い切って聞いてみた。
古金ミカ
「まあね……私はもちろん反対している。親を説得させないとね。」
真瀬志奈
「そうね。こんな研究してはいけない気がする。」
古金ミカ
「ええ、そうね。私はね……こういう性格になったのも研究のことがきっかけなのよね。」
真瀬志奈
「そうだったの!?」
古金ミカ
「そこまで驚く?でもまあ、私は研究の後継ぎを任されるために育てられたけど、研究を理解したとき、私は絶対に嫌だった。せめてものの反抗で品行方正な性格からぐうたらな性格になったわけ。」
真瀬志奈
「ミカ……苦労人なのね。」
古金ミカ
「でも、こうなってからは楽しい!やること全部が楽しくて仕方ないの。だからこれからもこの性格は変えないわよ。」
真瀬志奈
「ふふ……ミカらしい。」
その時……ドアが開く。
柊木アイ
「……志奈さん!」
真瀬志奈
「あ、アイ!」
柊木アイ
「ごめんね……心配かけました。」
私はアイの目の前に立ちそのまま強く抱きついた。
真瀬志奈
「いいの。いいの。無事ならそれで……」
その言葉を聞いてアイも抱き返す。
古金ミカ
「あのー……お2人さん?やるなら……あの5人がいない時にやったら?」
真瀬志奈
「えっ……?」
柊木アイ
「あっ……!」
そこにはニヤニヤしながら、月川さんたちがいた。
月川タクト
「いよ!ナイスカップル!」
来川ナナ
「写真撮っておきましたよ!」
真瀬莉緒
「姉さん。おめでとう!」
星野シキア
「ふふ……やばい人に気づかれないようにね。」
夜坂ケント
「…………。」
夜坂さんは呆れた顔をしており、他の4人は囃し立てる。
柊木アイ
「ちょっと……皆んな!!」
アイは顔を赤らめながら、みんなを追いかけた。
月川タクト
「よし!逃げるぞ!」
夜坂さん以外の4人はすぐに逃げ出した。アイはそれを追いかけた。
柊木アイ
「まてー!もうー!」
赤らめながらも追いかけるアイ。ただその表情には少し楽しそうな雰囲気があった。
ああ……また、楽しい日常を過ごせるんだな……。
真瀬志奈
「それじゃあ、私たちも行きますか!」
古金ミカ
「おっ。鬼ごっこか……いいね!私たちも混ぜろ〜!」
その後、私たちは始業時間まで童心に帰ったかのように鬼ごっこを楽しんだ。
六郭星学園 音楽室
放課後……私たちは改めてベースの練習を行った。
課題を料理から作曲に変更をしたからだ。
柊木アイ
「…………。」
真剣な表情でベースを弾く。あれ以来時間は経っているが、ブランクは全くない。
アイの母親は逮捕され、3月に行うパーティーは中止となると思ったらそうじゃなかった。
真瀬志奈
「アイ……本当に引き継ぐの?」
柊木アイ
「うん。あんな親だけど、ここまで地位をあげたんだ。他の七富豪の人にも迷惑がかかるし、これまで交流のあった会社さんたちの信用を取り戻さないといけない。だから僕は進学しながら社長業務をやるよ。……まあ、やるのはじいちゃんだけど。」
真瀬志奈
「それで……パーティーは開くのね。」
柊木アイ
「予定通りね。声優さんの出演はできなくなったけど、僕はこの曲は最後まで完成させたいな。」
真瀬志奈
「そっか……じゃあ頑張りましょう!」
私たちは再び練習に取り掛かった。
六郭星学園 Eクラス教室
鹿崎咲也
「はい。今日の授業はここまで。お疲れ様でした!」
今日も一日が終わった。いつも通りに寮に戻ろうとした時……
月川タクト
「ねえ、真瀬さん。今からカラオケ行かない?」
カラオケか……ちょっと歌いたいという気持ちがあったので断る理由がなかった。
真瀬志奈
「いいですね!行きましょう!」
月川タクト
「ケント!お前もどうだ?」
夜坂ケント
「……仕方ない。ついていくか。」
まんざらでもない様子で夜坂さんは言う。
月川タクト
「アイは……どうかな?」
以前、断られた経験があるためか月川さんは少し躊躇がみられた。
柊木アイ
「もちろん!行こうよ!僕、カラオケ初めてなんだ!」
そう。もうアイを邪魔する人はいない。これからはアイは自由に行動ができる。カラオケに行くことも簡単にできる。
月川さんもそれを見て、笑みがこぼれる。
月川タクト
「そうか!じゃあせっかくだからシキアたちも誘って行こう!」
私たちはKクラスの莉緒たちも誘い、カラオケに行くことにした。
カラオケボックス
カラオケボックスに着いた。最初に誰が歌うかみんな譲り合いがあるが……
柊木アイ
「僕……最初に歌っていい?初めてだからすごい楽しみなんだ!」
月川タクト
「おお!いいよ!楽しみだ。アイが歌うところを見るの!」
柊木アイ
「それじゃあ……歌います!」
音楽が鳴り始める。みんなはそれにのってマラカスを振ったり、タンバリンを叩いたりする。
みんなが楽しく楽器を鳴らす。そして、アイはそれ以上にアイが楽しく歌う。
アイは今まで友達と遊ぶということがずっと出来なかった。だからその分、今の時間を楽しむんだという気持ちが溢れてきている。
柊木アイ
「みんな!カラオケって楽しいね!もっと歌うよ!」
とても楽しそう。こっちまでより楽しくなってしまう。アイ……本当に良かった。
柊木アイ
「よし、次はこの曲はどう?」
月川タクト
「お、いいね!じゃあ、ケントと3人で歌おう!」
夜坂ケント
「仕方ない……歌うか!」
3人が歌う……3人の歌声はとても綺麗に重なっている……
曲が終わり、ミカが何かを思い浮かべる。
古金ミカ
「ねえ、せっかくだからさ……志奈っちの曲……ここで聞かせてよ!この部屋、キーボードがあるみたいだし!」
真瀬志奈
「えっ……今!?」
唐突なことに少し戸惑ってしまう。
来川ナナ
「曲って、ミカ言っていた作曲のことですか?私も聞きたいです!」
星野シキア
「そうね。私も音楽には興味はあるから聞いてみたいわ。」
戸惑う私だけど、アイの方を見た。アイは笑顔で頷いていた。アイが言うなら……
真瀬志奈
「わかりました!それでは……」
私はみなさんの期待に応えてキーボードを弾く……
曲を弾き終えるとみなさんは拍手をする。
星野シキア
「すごい……。私よりも上手い……。」
来川ナナ
「素晴らしいです!私、感動しました!」
古金ミカ
「へへ、ここまで来ましたか!課題発表のときも楽しみにしてるよ!」
ミカたちからはすごく高評価をもらった。こうして褒めてもらえるのはとても嬉しい。
古金ミカ
「それじゃあ……私たちも歌いますか。シキアっちょ!ナナ様!歌うよ!」
星野シキア
「はいはい……あんなものを見せられたなら負けられないわね。」
来川ナナ
「私たちのハーモニーを聞いてください!」
Kクラスの女子たちの歌を聞く……圧巻な歌声だった……!その歌声を聞いた、アイたちは驚いていた。
月川タクト
「すごい……!綺麗なハーモニー……!」
夜坂ケント
「……俺らも負けられないな。」
柊木アイ
「よし!僕らももう一回歌うよ!」
こうして楽しいカラオケの時間を過ごした……。
もうすぐで卒業にはなるし、課題の前には期末テストがあるけれど……
残りの時間でたくさんの思い出を作ろう……!
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