第53話 何でも出来る、何も出来ない。


 「リュウトってほんとすごいな!初めての事でも何でもできるんだから!」


 「……」


 過去。

 元の世界の俺は何もできなくて、何でも出来る友達のリュウトに憧れを抱いていた。


 「同じ人間なのにこの差はなんだろうなぁ」


 もしもドラマがあるのなら主人公の立ち位置に絶対に居るような友達、さながら俺はメガネかけだサブ主人公にすらなれないダメ人間。


 だけどいつもリュウトは“つまらなそう”にしていた。


 

 ____あぁ、リュウト……お前がいつもその顔をしてるの……今になって解ったよ……


何でもできるって言うのは____


______



__





 「外は……雨だったんだな」



 崩れた瓦礫の中、雨が降りしきり、虚しい勝利を祝ってくれる。



 先程まで俺たちを攻撃していた大きな蛇の魔王は少女の中に封印されている。


 確かにこれならば殺してないから解決だ……



 「__武器召喚」


 試しに魔法を唱えてみるが盾は出ない。


 「条件が何かありそうだな……__!」


 何かが咄嗟に飛んで来るのを感じ、手を伸ばして掴むと、光り輝く矢だった。


 「次から次へと!」


 振り向けば、遠くの空で白い羽根が風になびく美しい天使が、その宝石のような瞳で輝く弓を手に、神秘的な美しさで空を舞っていた。


 「【ホーリーアロー】!」


再び矢がこちらに飛んで来る。


「邪魔だ!」


次は矢の勢いを逆手にとり、繊細な感覚で矢を捉え、軽やかにその勢いを利用して返す。


 「な!?」


 矢は狙った通り、白くて美しくて目立ってしつこい片方の翼を貫通し、白い翼を持つ魔物は、儚く舞い散って落ちて行った。




 「なんだったんだ?」




 倒れた2人を抱えネバーは瓦礫の上を歩きながら森の中へと消えていった。

 

 

 

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