第34話 戦う意志
町の一番近くにある少し小さな山の頂上。
ライトとマンタは黒い修道服に身を包んでいた。
「ライトさん着心地はどうですか?素材は私のとあまり大差ないものを使ってるはずですが」
「動きやすくて軽いのに丈夫ですし、さっき言ってた通りなら組み込まれた魔法の機能がすごい」
「元々は私直属の部下たちにあげる予定だった新作です、この際、あなた達に貸す装備がなかったので仕方ないでしょう」
「うげ!?あの四天王様達の!?」
そんな2人の話をまったく聞かずにフードを被りブツブツと念仏のように「僕は戦う僕は戦える僕は戦う……」と言い続けているマンタにライトは何か言おうとしたが……
「ライトさん」
ウジーザスに止められる。
「はい……」
「私は少し席を外しますね」
そういってウジーザスはポケットから光る緑の瓶を取り出して地面に撒き始めた。
「……」
ライトはマンタを尻目にウジーザスの言った事を考える。
「(ネバーさんの出現条件はコイツが“戦う意志を持つ事”……くそ!わからねぇ!冒険者である以上戦うのが当たり前だろ!)」
今までライトは同じ趣向を持つものと接してきた。
いや、ほとんどの冒険者は同じだろう。
常日頃、命を賭けて仕事をしている者たちからすれば“戦う”と言う事はとっくに覚悟しているはずだ。
それをマンタは“異世界の勇者”を召喚した事で莫大な力を手に入れ「自分は命の危険がない」と心の奥底で思っていたのだ。
今回の相手はクリスタルドラゴン……死が確定してるが故に戦う意志などおきるはずがない。
「僕は戦う僕は戦う僕は戦う僕は戦う僕は戦う僕は戦う僕は戦う僕は戦う僕は戦う僕は戦う僕は戦う僕は」
マンタもウジーザスから聞いて戦う意志を駆り立てようと口に出しているが心は変わらない。
「(くそが!こうなったら何ヶ月でも何年でも戦ってやる!)」
ライトとマンタ……ここまで真逆の人物が惹かれあったのは運命か……
「魔王様」
「ほうひまひた?」
よほど手が足りないのだろう。
ウジーザスは両手の指の間に数個の小瓶、さらには口でも小瓶を咥えている。
「ここにクリスタルドラゴンが来るのですか?」
右手に持っていた瓶を使い切り、咥えていた小瓶を持ち口は動かせるようになる。
「えぇ……まぁ……」
ウジーザス達が来た山は街の東にある。
先程まで戦っていたのは街から北の遠く離れた所だが見る限りクリスタルドラゴンは真っ直ぐ“此方側”に来ていた。
「(やはり目当てはマンタティクスさんですか……)」
「と言うか」
「?」
「…………来ましたよ」
「!?」
ウジーザスが見るのは真上。
「引きますよ!ライトさん!マンタさんを!」
「はい!」
ライトはマンタの首根っこを掴み思いっきり地面を蹴り飛ぶと__
「うお!」
「うわぁぁあ!!」
通常ではあり得ない程の飛距離、山のてっぺんに居たが、その山がどんどん離れていく。
「す、すご__」
__そこまで言いかけた時、先程まで居た山が潰れた。
「ぐっ!?あ!!!」
「うわぁぁぁぁぁああぁぁぁぁ」
クリスタルドラゴンが空から山に着地した衝撃で空中でバランスを崩しクルクルと回ってしまい、掴んでいたマンタを離してしまった。
「くっそ!」
「あの子なら無事です!今は目の前の敵を!」
「はい!」
たった2人の無謀なクリスタルドラゴン討伐が始まる。
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