第29話 『災害』……こっちも緊急事態!?
「これは……珍しいな」
「はい……」
僕達パーティーはいつものように超高層魔王城ビルに来ていた……のだが
「こんなに働いている人が居たのか」
人、と言っても多種多様な魔族たちだが今日は忙しそうに走り回っている。
まるで火事でも起きたみたいだ。
「何が珍しいんだ?」
僕達とは裏腹にライトは珍しがる僕とマスターに疑問があるみたいだ。
「こんなに人が居るなんて思ってもなくて……」
マスターが答えるが
「?、何言ってんだ?ここは町の全ての情報が集まる場所だぞ?休みの日以外はこんなもんだろ?」
「それもそっか」
おぅふ……なんかファンタジーな世界なのに現実的なワード出てる。
休みっておま……
「すいません、どちら様ですか?」
まぁ当然と言えば当然なのだが、入り口に立ってたら近くにいた人から声をかけられた。
「あ、僕たちは魔王様の__」
「マスター」
「あ!」
危うく本当の事を言いそうになるマスターを止める。
一応僕達の関係は誰にも秘密にしてるからね……さて、それはそれで困ったな。
いつもなら人がいない時に呼んでくれてるみたいだけど今日はどうやら違うみたいだし……
「え、と……」
マスターも迷うよねぇ。
そんな時だった。
「____」
「!!!!!」
これは錯覚だろうか……
エレベーターが開いた瞬間、周りの温度が下がったかのように感じた。
「「「「「……」」」」」
「やはり魔王だな……」
それまで忙しそうにしていた人達もその場に止まり綺麗に礼をしている。
その姿はいつも気さくに話しかけてくれている魔王様ではなかった。
……ってあれ?マスター達も!?
僕もしないと……
「あなた達はいいですよ、そのまま私の部屋に来てください」
________
______
____
いつもの魔王室……だけど、今日はなんか魔王様に余裕がないように見える……あ、紅茶飲んでないからかな?
「大変なことになりましたね」
「???」
マスターは何のことか解ってないけど僕にはなんとなく理解できた。
はてさて……あの謎の女神様が言った事だ、何が起こるのやら……良い事じゃないのは確かだね。
「あら、ネバーさんからは聞いてないのですか?2人とも」
もちろんライトも知らない。
「え、えぇ……」
「私から言っても?」
どうぞどうぞ!むしろ頼みます!
「構わない」
「……………『クリスタルドラゴン』の姿を確認しました、真っ直ぐこの町へ飛んできます」
「!?!?!?え!?」
「クリスタルドラゴン!?」
なんか単純な名前だな?
でも2人の声からやばそうなのは感じる。
「現在、町全体に避難勧告が出されている頃でしょう、見つけるのが早かったので着く頃にはみんな避難がかんりょ__」
「逃げないと!」
魔王様が言い終わる前にマスターは顔色を悪くしてエレベーターまで走り、ボタンを連打しだした。
「逃げないと逃げないと逃げないと逃げないと逃げないと逃げないと逃げないと逃げないと逃げないと」
お前はシンジくんの逆バージョンか
でも先ほどよりもどんどん顔色が悪くなってかなり焦っているのは見て解る。
「おい!マン__」
「触らないで!」
「!?」
えぇ!?マスターがライトの手をはたいた!?あの大人しいマスターが!?
「……」
そのままマスターはライトに目で訴えながらエレベーターで行ってしまった。
「まぁいいでしょう、私が今回呼んだのはクリスタルドラゴンの討伐に参加するかどうかを聞くためです……答えは分かりましたけど」
「……」
正直、討伐が半分、逃げたいのが半分だったので何も言わなかった。
マスターが参加しないならしないで仕方な__
「ちょっと待っててください!俺、マンタと話してきます!」
ライトはそう言って追いかけて行った。
「……」
「……」
「アナタは追いかけなくていいんですか?」
「私は使役者だ、マスターに従うのが道理で有り理だ」
あれ?ちょっとかっこつけたけど、意味あってるよね?
「ごほん……それよりもマスターに命令をすれば聞くだろう?」
「『呪い』の事ですか?そうですね……やってほしいですか?」
「いや……確かにな」
よくよく考えればそう言う魔王らしく無い所を見せてくれてるからぼくは信じれてるんだと思う。
信用の作り方って奴か
「それより、本当に追いかけなくていいんですか?____それ」
「?……!?」
うお!?なんじゃこりゃあ!?身体が半透明に!?
これってこの前も!
「テイマーに召喚されたアナタはパートナーでありテイマーの戦う武器……戦う気が無いのなら消えるのは当たり前と思いませんか?」
「……フッ、た、確かにな」
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいてか消えるのはや!?止まらない!
「言っときますが消えた後、どこにいるのかどうなるかなんて私には分かりませんよ?」
「…………どうしよう」
心から出てしまった声を逃さない。
「あ!やっと本音で話してくれましたね?」
「え?」
「言ったじゃありませんか……私は良く視てるって、下手にカッコつけて周りは騙せても私は騙せませんよ?」
うそおおおおおお!?全部カッコつけてたのバレてた!?
「安心してください私とアナタだけの秘密ですから♪」
あ、かわ____
「………」
2人いたはずの魔王の部屋には1人しかいなくなってる。
「可愛い、ですか?ネバーさん」
その言葉に返事をする者はいない。
「魔王になって、久しくその言葉を聞いてませんでしたね……これはもう夫婦になるしかないのかしら?」
心で少しまんざらでも無い冗談を一人で言ってデスクに戻る。
「今回は準備万端で迎え撃てそうですね」
「『災害』」
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