第9話 いつもと違うふたり♠️

 ……あはは。どうも先輩、こんにちは。屋上へようこそー、なんちゃって……。

 見てください、屋上からだと夕日がこんなにキレイに見えるんですよ。知ってました?


 (コホン)

 スミマセンねー、二日続けて職員室から鍵を借りてきてもらっちゃって。おかげで助かりました。

 いやーまさか、昨日は理科室、今日は屋上に閉じ込められちゃうとは思いませんでした。こんなコト、あるんですね。

 さ、先輩。もう放課後ですし、お互い早く帰りましょうか。行きましょ?


 ……え? 今日もまた先生の不注意か、って? 

 さぁ? 誰がここの鍵を閉めちゃったのか、私にはなんとも……。

 ……二日続けて、君だけがこんな目に遭うのは、どう考えても不自然だ? 

 昔っから運が悪いんですよ、私。だから、これくらい慣れっこです。

 ……でも?

 ほんと、なんでもありませんったら。

 あはは、やだなぁ先輩、心配し過ぎ。もー、早く帰りましょ?

 

 

 ……。


 ……それ以上言わないでください。

 

 ……訊かないでったら。


 (……うるさいな)



 ……後輩に命令されて喜ぶ変態のくせに、ひとの心配ですか?

 わかってます? 私、先輩の弱みを握ってるんですよ? あのコト、今すぐ先生にチクったっていいんです。


 困るでしょ?  

 困りますよね? 

 だったらこれ以上、余計な詮索しないでください!

 

 私がクラスで浮いてたら、なんだっていうんですか? 

 女子のグループにうまく馴染めなくて、はじめはハブられてただけだったけど、そのうち物を隠されたり、SNSで悪口言われたり、こんな風にドアに鍵かけられたりするようになりましたけど、それがなにか?

 

 持ち物検査のときに先輩に見つかったゲーム機、クラスのひとたちから、あの日必ず学校に持ってこいって命令されてましたけど、

先輩には関係ないことじゃないですか。

 結局持っていけなかったから、あの日から本格的にクラスで孤立しちゃいましたけど、先輩は風紀委員として当たり前のことを、当たり前にしただけなんですもんね?

 あなたはいつも、痛くも痒くもない。いいですよね、相手に非があるって!

 どうしてそんなことしたのか、事情とか、気持ちとか、よく知らなくったって、正しさを理由に相手を責められますもんね?


 だから、先輩の方に非がある今は、私の方が強いんです! 偉いんです!

 先輩の気持ちなんか無視して、命令して、服従させて、いやな思い……、させて……、やろうって……、思ったのに……。


 先輩、後輩に命令されて喜ぶ変態なんだもん……。

 私のワガママに、ちっとも嫌な顔しないし……。

 それに、優しいし……。


 これじゃ、復讐にならないじゃないですかぁ……。


 ……。


 ……。


 ……え? 


 ……命令してくれ? 

 私を助けろって、僕に命令してくれっ、て……?

 ご主人様の命令なら、喜んで従う? 

 

 で、でも、風紀委員長の先輩が先生とかに働きかけたら、あのひとたちに逆恨みされて、私、余計にいじめられちゃう……。

 ……え? そんな正攻法しない? 悪いようにはしないから、まかせてくれ?


 ……。


 ……。


 ……はい、わかりました。

 私、先輩を信じます。

 先輩は、私を裏切らないって信じてるから。



 ……じゃあ命令です。

 私の忠実な、ドMのワンちゃん。


 どうか……、

 私を……、

 助けてください!


 


 

 


 

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