2章:汝、死を拒むことなかれ
2章第0話 死よ、死よ、死よ
ざあざあ、と雨が降る。
その中にあってもなお消えない炎。
目の前で燃えるのは、かつて自分達兄弟が住んでいた家。
その中にいる親ごと燃やされたその巨大な薪を彼らはただただ呆然と見やっていた。
大規模な魔物の襲撃。
魔界では珍しくもないそんな災害だが、それでも自分達が被災したという事実には、ただただ呆然とするしかない。
起これば突然で。
終わるのまた突然。
そうして生き残ったのが親ではなく、自分達だという事実に兄弟は目の前の現実も受け入れられないまま固まっていた。
「兄ちゃん……」
ポツリと生じた弟の声。
それにビクリと兄は振り向いて、そこにあるぽっかりと穴が開いたような目を見る。
「兄ちゃん、これから僕達はどうしたらいいの?」
そんな弟の問いかけに、しかし兄は答えることができない。
「……ァ」
だが、その結果待っているのは弟の絶望したような表情だ。
その顔が、兄はとてつもなく恐ろしかった。
死人だ、と兄は思った。
目の前にいるのは弟の形をした死人だと。
それだけではない。
自分の周りには他にも多くの死んでいる死人、生きている死人。
大勢いる。
それがひどく怖かった。
怖いから、拒みたい。
拒みたいから、死にたくない。
死にたくないから、足掻きたい。
足掻きたいから、だからオレは──
【ケヒヒ】
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